Flying Skynyrdのブログ

映画や音楽、本についての雑文

『セッション』を観る

今日は久しぶりにキネ旬シアターに行ってきました。

映画は『セッション』です。

監督・脚本:デミアン・チャゼル

出演   :マイルズ・テラー、J・K・シモンズ

 

いやー、凄い映画でした。ジャズ・ドラマーを目指す青年とその教師の物語です。が、内容はそんな甘い世界ではありませんでした。

トーリーはジャズ・ドラマーを目指しアメリカで最高の音楽学校に入学し勉強に励む19歳の青年・ニーマン(マイルズ・テラー)はある日、学校で最高の教師・フレッチャー(J・K・シモンズ)と知り合います。フレッチャーはニーマンの練習風景をみて自分のバンドに誘います。そのバンドの練習に参加したニーマンはフレッチャーの指導に厳しさに驚きます。まるで人格を無視したような罵詈雑言の連続、わずかな音程のズレを指摘され退場させられる者、練習の場は緊張感であふれていました。ニーマンも練習の最中にテンポのズレを指摘され散々悪態をつかれ、椅子を投げつけられ、ビンタをされ自信を無くしてしまいます。しかし、彼は必死に練習に励みます。指から血が出るほどの練習を重ねていきます。それでも補欠のドラマーの地位は変わりません。あるコンサートの時、正ドラマーが譜面をなくしてしまい、自分は暗譜をしていないのでステージには立てないと言い出し、フレッチャーは「自分は暗譜をしている」と申し出たニーマンをステージに立たせることにしました。演奏は上出来で、以降フレッチャーはニーマンを正ドラマーとして起用するようになりました。ニーマンは有頂天になり、それまで映画館の受付をしている女性に今まで心に秘めていた気持ちを打ち明け、付き合うようになりました。ところがある日、フレッチャーは新しいドラマーの候補を連れてきました。それはかつてニーマンと同じバンドにいた同級生でした。そしてフレッチャーはかつての正ドラマーと3人に正ドラマーの座を競わせました。ニーマンはますます練習に没頭せざるを得ず、恋人と付き合っている暇もないということで彼女とも別れてしまいます。そんなある日、フレッチャーはかつての優秀な教え子が交通事故で亡くなったとメンバーの前で話しながら涙を流しました。フレッチャーの意外な一面を見てニーマンは驚きましたが、その後の練習は壮絶を極めました。3人の争いは最終的にニーマンが勝ち取り、コンテストへの正ドラマーとして参加することが認められました。ところが当日、事故でバスが遅れ、会場に間に合わない事態が起き、到着した時には、ドラマーは同級生が務めると決定してしまっていました。激怒したニーマンはフレッチャーに食って掛かりましたが、スティックを忘れたことを指摘され、すぐに取ってくるから待ってほしいとなんとか説得してスティックを取りにレンタカーで戻りました。しかしスティックを持って戻る途中で交通事故にあってしまいます。それでも彼は血だらけになりながらも、なんとか会場に到着しドラム席に着き、そして演奏が開始されました。しかし怪我をした彼の腕は言う事を利かず、演奏は中断されます。そしてフレッチャーに無能呼ばわりされ、思わず飛び掛かってしまいます。それがもとで彼は退学処分となり学校を去り、別な大学へと移ります。

フレッチャーのかつての教え子が亡くなった件で弁護士がニーマンに接触してきます。教え子は交通事故ではなく自殺だったのです。フレッチャーの指導の行き過ぎで精神を病んで自殺した、だからニーマンにも訴えを起こしてほしいという事でした。ニーマンは迷った挙句、匿名でという条件で応じました。

ある日、街を歩いているとジャズ・ライブにフレッチャーが特別出演しているのを見かけ、店に入り彼のピアノ演奏を聴きます。フレッチャーと目が合って、帰ろうとしたとき呼び止められ、ニーマンはフレッチャーと話しあうことになりました。フレッチャーから誰かの訴えで学校を辞めざるを得なくなったと聞かされました。そして今はジャズバンドの指揮をやっている、よかったら正ドラマーとして参加して、近々行われるフェスティバルに出てくれないかと頼まれます。ニーマンは再びスティックを握ることを決意します。そしてかつての恋人にフェスティバルに来てほしいと頼みますが、彼女には既に新しい恋人がいて、断られてしまいます。

そしていよいよフェスティバル当日、ドラム席に着いて演奏が始まる寸前、フレッチャーが寄ってきて、「密告したのはお前だろう、俺をなめるなよ」と言い放します。そして紹介された演奏曲目はニーマンが知らされていたものとは全く別な曲でした。ニーマンには譜面もありません。フレッチャーは復讐をしたのです。全く演奏になりませんでした。これでニーマンのジャズマンとしての生命は終わり、失意のもとに舞台から降りました。父親に迎えられよく頑張ったと慰められましたが、彼は再び舞台に上がりました。そしてドラム席に着くと、指揮者フレッチャーを無視してドラムをたたき始めました。『キャラバン』です。やがて他のメンバーもドラムに併せて演奏を始めました。フレッチャーは止めろと言いますが、ニーマンは止めません。演奏はどんどん白熱していき、そして長いドラムソロに入ります。やがてフレッチャーもそのドラムソロに魅入られ、そして今度は逆に彼を励まし、最後のエンディングへと向かいます。途中まで救われない映画だと思っていましたが、最後の最後に救われました。

監督のデミアン・チャゼルは昨年『ラ・ラ・ランド』で史上最年少のアカデミー賞の最優秀監督賞を受賞した人です。この『セッション』もアカデミー賞の3部門を受賞したようです。本人もジャズドラマー志望だった時期もあり、交通事故の経験もありと、この映画製作には事故の体験が大いに役立っていたそうです。

また、ニーマンが尊敬するドラマーがバディ・リッチだったり、チャーリー・パーカーの逸話が入ったりとなかなか興味深かったです。ニーマン役のマイルズ・テラーはドラムの猛特訓をし全て本人が演奏していたようです。フレッチャー役のJ・K・シモンズの演技は迫力ありました。この映画でアカデミー賞助演男優賞をもらったそうです。

とにかく息もつかせぬ映画でした。

私はビッグバンドジャズはあまり聴かないので、バディ・リッチもレコードで2枚ほどしか持っていませんが、プロのドラマーが目指す先にいる存在なんだろうなということは理解できました。それとチャーリー・パーカー(アルト・サックス)がフィリー・ジョー・ジョーンズに演奏が下手だとシンバルを投げつけられ、その悔しさをバネにして「モダン・ジャズの父」と呼ばれるまでになったという話は、本当かどうかはわかりませんがいい話でした。