今日はブラジルの代表的なメタルバンド『アングラ』について書いてみようと思います。それまでブラジルのメタルバンドというと『ヴァイパー(Viper)』でしたが、そこのヴォーカリストであるアンドレ・マトス(Andre Matos)がヴァイパーを脱退し、ギタリストのラファエル・ビッテンコート (Rafael Bittencourt )ともう一人のギタリストであるキコ・ルーレイロ(Kiko Loureiro)、ベースのルイス・マリウッティ (Luis Mariutti)、ドラムのマルコ・アントゥネス (Marco Antunes)と共に1991年に結成されました。アングラとはブラジルの神話の”火の女神”から取られたといいます。
ファーストアルバムは1993年にリリースされます。『Angeles Cry』です。
クラシックとヘヴィメタルの融合、これがアングラのコンセプトなのでしょう。メロディック・スピードメタルあるいはシンフォニック・メタルなどと呼ばれました。まさにクラシカルなヘヴィメタルです。音楽的にはヴァイパーの延長線上ですが、アンドレ・マトスがさらにクラシカルなものへと発展させています。2曲目の「Carry On」の疾走感は圧巻です。レコーディングはガンマ・レイのカイ・ハンセンのスタジオで行われ、ガンマ・レイのメンバーもゲスト参加しています。プロデュースはヴァイパーを手掛けたチャーリー・バウアーファイン、そこにヘヴンズ・ゲイトのサシャ・ピートが手を貸したといいますからジャーマン・メタルの影響もそこかしこに見られます。
2作目はしばらく間が空いて1996年に『Holy Land』がリリースされます。
ドラマーがリカルド・コンフェッソーリ(Ricard Confessori)に替わります。
このアルバムではクラシックとの融合は変わりませんが、さらにブラジルの民族音楽が加わわって、壮大なアルバムに仕上がっています。ブラジルの歴史を描くコンセプトアルバムのような様相を呈しており、素晴らしいアルバムです。
3作目は1998年に出された『Fireworks』です。
このアルバムではジューダス・プリーストなどを手掛けたクリス・タンガリーディスをプロデューサーに迎え、ヘヴィメタルへの回帰を目指すということで製作されたようですが、クラシックとの融合はそれほどの替わり映えはありませんでしたし。どちらつかずの中途半端な結果になったような気がします。この方向転換の意図は前作の一部における不評があったということと、メンバー間の方向性の違いが表立ってきたことが挙げられます。このアルバムを最後にアンドレ・マトスはグループを去ります。それに伴い、ルイス・マリウッティとリカルド・コンフェッソーリも不安を感じ脱退します。
この3人は後に『シャーマン(Shaman)』を結成しますが、その前にアンドレ・マトスはヘヴンズ・ゲイトのサシャ・ピートと『VIRGO』というプロジェクトを結成しアルバムをリリースします。
残ったキコとラファエルはヴォーカルにエドゥ・ファラスキ (Eduardo Falaschi)を迎え、さらにベースにフェリペ・アンドレオーリ(Felipe Andreoli)、ドラムにアキレス・プリースター( Aquiles Priester)が加えバンドの立て直しを図ります。そして2001年に再起を図り、『Rebirth』を発表します。
誰もがアンドレが居なくなったアングラはもう駄目だろうと予想していました。しかし、このアルバムはまさに『再生』でした。ファースト、セカンドのクラシックとの融合を見事なまでに再生しています。心配したヴォーカルもアンドレに勝るとも劣らぬ歌唱力を披露しています。アングラは完全復活を成し遂げました。
そして2004年に5枚目のアルバム『Temple of Shadows』をリリースします。
これはコンセプトアルバムです。ラファエルの手による11世紀十字軍のストーリーから現代への警鐘というコンセプトです。ゲストにガンマ・レイのカイ・ハンセン、ブラインド・ガーディアンのハンズィ・キアシュなどが参加しています。もしかしてこれがアングラの最高傑作かもしれません。コンセプトアルバムだからと言って堅苦しいことはなく、メロディック・スピード、クラシック、フラメンコ、プログレなどが交じり合って素晴らしいアルバムになっています。
そして2006年に6枚目『Aurora Consurgens』が発表されます。
これは前作があまりにも素晴らしかったので、ちょっと期待を裏切る出来になってしまったような気がします。決して悪くはないのですが、どうしても前作と比較してしまうのと、クラシカルな要素が若干足りないためかアングラらしさが影を潜めているような印象を受けます。
そして2010年に4年ぶりとなるアルバム『Aqua]』をリリースします。
ここでドラマーが以前在籍していたリカルド・コンフェッソーリに替わります。
これはシェイクスピアの最後の作品「テンペスト」をモチーフにしたコンセプトアルバムです。再びクラシック要素が増えてきていますが、ヴォーカルのエドゥ・ファラスキ の勢いが無いような印象です。前々作のコンセプトアルバムに比べると明らかに物足りなさを感じます。
この後2014年に『Secret Garden』をリリースしますが、残念ながら未購入なのでコメントできません。申し訳ありません。
情報によると心配していたヴォーカルのエドゥ・ファラスキは脱退したようでゲストヴォーカルなどを迎えやりくりしているようです。
実はアルバム『Rebirth』の後にミニ・アルバム『Hunters and Prey』が発表されているのですが、これがいいのです。
ミニ・アルバムと言っても8曲入りで、『Rebirth』のプラスアルファ的でこの2枚を一緒に聴くとまた格別です。
アングラはアルバムのアートワークも素晴らしく(途中から同じデザイナー)でジャケットを見ていても飽きません。
アングラのメロスピ(メロディック・スピードメタル)を聴いていると、ハロウィーンやガンマ・レイ、ブラインド・ガーディアンとはまた違った南米の匂いのするメタルを堪能することができます。
ANGRA - "Carry On" (Official Video) HD
またまた、やっぱりメロハーはいい。
それでは今日はこの辺で。