今まで音楽の記事をいろいろ書いてきましたが、気が付けば日本のミュージシャンについては5組しか書いていませんでした(懐メロは除いて)。加川良の訃報記事、岡林信康、山崎ハコ、シルクロード、それと遠藤賢司の訃報記事、これだけです。
もう少し日本のミュージシャンンも書いてみようかなと思い立ったところ、浅川マキの名前が浮かびました。
浅川マキのアルバムは数が多くどれにするか迷いましたが、比較的古くて地味なアルバムですがとても気に入っているアルバムを選びました。
1976年の通算7枚目のアルバム、『灯ともし頃』です。
Side A
1.夕凪のとき
2.あなたなしで Trying to live my life with-out you
3.それはスポットライトではない It's not the spotlight
4.夜
Side B
1.Just Another Honky
2.思いがけない夜に
3.センチメンタル・ジャーニー Sentimental Journey
4.何処へ行くの
参加ミュージシャン
萩原信義 アコースティック&エレクトリック・ギター
杉浦芳博 アコースティック・ギター
白井幹夫 ピアノ
吉田 建 エレクトリック・ベース
坂本龍一 オルガン
角田 順 エレクトリック・ギター
つのだひろ ドラムス
近藤俊則 トランペット
ライブハウスでの録音ですが、スタジオライブのような感覚です。この店は今でも健在です。
英語のタイトルが付いていない曲は浅川マキのオリジナルです。その他はカバー曲ですが訳詞はすべて浅川マキです。これが実にうまい。
A-3はバリー・ゴールドバーグの曲でボビー・ブルー・ブランドもカバーしていて、それを聴いて彼女も歌いたくなったらしいのですが、ちょうどロッド・スチュワートの新譜『Atlantic Crossing』が手に入り、聴いてみたらちょうどこの歌を歌っていてびっくりしたが、そのまま歌うことにした、と本人のライナーノーツで書いています。いかにも浅川マキらしい歌い方で、他の人とは比べられない魅力があります。ロッド・スチュワート・バージョンも好きですが。そういえば彼女は「ガソリンアレイ」もカバーしていましたね。
B-1もロッドのFaces時代のカバーです。よほどロッド・スチュワートが好きなんですね。
浅川マキの音楽はブルースでもなく、ジャズでもなく、フォークでもなく、ロックでもなく、ジャンル浅川マキという感じです。独特の世界を持っています。
私が初めて彼女の歌を聴いたのは、何かの映画の挿入歌だったような気がします。曲は「夜が明けたら」と「かもめ」だったと思います。それから北山修の「赤い橋」なども印象に残っていました。1973~4年の頃だったと思いますが、明大前の「キッドアイラックホール」(喜怒哀楽のもじり?)で初めてライブを見ました。凄い迫力というか存在感だったのを憶えています。
このアルバムには若かりし頃の坂本龍一も参加していますが、彼女も彼のことを「坂本龍一のオルガンは、いつも豊かなベースになっていた」とほめています。
それからドラムのつのだひろについても「つのだひろの大きなドラムの音は、こちらを決して疲れさせなかった」と言っています。
トランペットの近藤俊則には初対面だったらしいのですが電話で「センチメンタル・ジャーニー」を吹いてほしいと、いきなり頼んだらしいです。近藤俊則は当時フリー・ジャズの旗手だったのにオーソドックスな曲を依頼したが引き受けてくれたと書いています。
オリジナル曲はまさに浅川マキの世界です。ブルースかジャズかと言われれば、日本のブルースかな、という感じなのです。
「アケタの店」についてはそのライナーノーツで次のように書いています。
「「あけたの店」の中はすさまじいものだった。録音機械の一部は、すでに店内からはみ出して便所の前に据えられた。ドラムセット、ベースとギターのアンプ、オルガンやエレキピアノが並び、床には無数のコード線がはいずって、足の踏み場もない。異様な雰囲気のなかに一番に入ってきたのが、つのだひろだった。彼は大きなからだで、軋む階段を降りて、この地下へやってきたのである。彼にとって、ジャズ喫茶でプレイするのは久しぶりのことに違いない」・・・
当時の時代風景が頭に浮かぶようです。
浅川マキ自筆の歌詞カード。
浅川マキのライナーノーツ
参加メンバー。若かりし頃の坂本龍一、近藤俊則、つのだひろなどが写っています。
浅川マキが亡くなってはや7年ですか。彼女のような歌手はもう現れないかもしれません。
Maki Asakawa 浅川マキ 「 JUST ANOTHER HONKY(歌詞付) 」
Maki Asakawa 浅川マキ 「ふしあわせという名の猫 (歌詞付) 」
Maki Asakawa 浅川マキ 「 赤い橋(歌詞付) 」
動画を探していたらきりが無くなりました。いい曲が多すぎます。
これからも日本のミュージシャンを取り上げていきます。
それでは今日はこの辺で。