Flying Skynyrdのブログ

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『ジェファーソン・エアプレイン(Jeffeson Airplane)』 ’60年代編

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デッドに引き続きジェファーソンでいってみたいと思います。

サイケデリック・ロック創始者としてグレイトフル・デッドと並び称されたのが、サンフランシスコの大物バンド『ジェファーソン・エアプレイン』です。

ヒッピー文化とベトナム反戦を叫ぶフラワー・ムーブメントが沸き起こり始めたサンフランシスコにぴったりマッチした音楽がロックミュージック、それもサイケデリック・ロックでした。LSDマリファナなどの麻薬による幻覚症状を音楽で表現するという試みがなされ、これに西海岸の若者が飛びつきました。こうして60年代後半は西海岸から全米、さらにはビートルズの「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」の発表などにより、サイケデリック文化は全世界へと波及しました。

こうした中で結成されたのが『ジェファーソン・エアプレイン』です。

バンドの創立者マーティ・バリン(Marty Balin,vo,g)はR&Bのシンガーで、フォーク系のシンガー、ポール・カントナー(Paul Kantner,vo,g) と知り合い、グループ結成を目論見ます。ギタリストのヨーマ・コウコネン(Jorma Kaukonen,g,vo)、を誘い、最初のベーシストが抜けたため、ヨーマ・コウコネンの友人ジャック・キャサディ(Jack Casady,b)を誘い、さらにシグニー・トリー・アンダーソン(Signe Toly Anderson,vo)、それにアレックス・スキップ・スペンス(Alex Skip Spence,ds)を加えて1965年に結成されます。バンドはRCAと契約します。

 

1966年、ファーストアルバム『Takes Off』がリリースされます。

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このアルバムは、それ以降のジェファーソンと違って、まだまだフォークロックの色彩が濃いアルバムになっています。まだマーティ・バリンが中心的存在だったことがよくわかります。カバー曲以外はほとんどマーティーの手によるものです。ヴォーカルもほぼマーティ―です。ポール・カントナーが1曲歌っています。なお、日本ではこのアルバムはセカンドアルバムの発売の後に発売されました。

 

続いて1967年に大ヒットアルバム『Surrealistic Pillow』がリリースされます。これが日本でのデビューアルバムになります。

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前作の後、ドラムのスキップ・スペンスは脱退します。元々彼はギタリストでドラムス担当という立場に不満を持っており、退団しモビー・グレイプ結成へと動きます。代わりのドラムスはスペンサー・ドライデン(Spencer Dryden)が加入します。彼も元々はギタリストです。そしてもう一人、女性ヴォーカルのシグニー・トリー・アンダーソンが脱退し、替わりにやはり女性のグレイス・スリック(Grace Slick)が加入します。彼女は元グレイト・ソサエティのメンバーでジェファーソンに引き抜かれた格好になりました。彼女の加入がその後のジェファーソンを決定づけます。このアルバムからは「Somebody To Love(あなただけを)」、「White Rabit」の大ヒット曲が生まれ、彼等のステージでの定番曲「Today」も含まれています。このアルバムの大ヒットによりジェファーソンの人気は不動のものとなります。

 

同年にサードアルバム『After Bathing at Baxter's』をリリースします。

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このアルバムでは、前作までのフォークロック的アプローチから元々ブルースロック志向だったヨーマ・コウコネンのリードギター、ジャズ志向だったジャック・キャサディ、スペンサー・ドライデンのリズムセクションとポール・カントナー、マーティ・バリンのフォークロック、サイケデリックロックが組み合わさったアルバムになっています。また、グレイス・スリックの存在感も大きくなっています。アルバムは5つの組曲からなっています。1曲目の「The Ballad of You & Me & Pooneil」はライブでもよく演奏されますが最高です。

 

続く1968年、4枚目のアルバム『Crown Of Creation』がリリースされます。

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このアルバムあたりから政治色の強いメッセージが曲の中に表現されるようになります。アルバムジャケットもヒロシマの原爆写真と思われます。観客の方も反体制的な象徴としてジェファーソン・エアプレインを祭り上げるようになっていきます。

それと注目したいのが元ザ・バーズのデヴィッド・クロスビーのゲスト参加です。楽曲を提供しギターで参加しています。ロサンゼルスの代表的バンドのザ・バーズとサンフランシスコの代表的バンドのジェファーソンが一緒にプレイすることでウェストコーストが一体になったというような気がしました。ポール・カントナーの「Crown Of Creation(創造の極致)」、ヨーマ・コウコネンの「Star Track」、グレイス・スリックの「Greacy Heart」、マーティ・バリンの「If You Feel」、スペンサー・ドライデンの短い前衛的な「Chusingura(忠臣蔵)」など各様の特徴が出ています。

 

翌1969年には初のライブアルバム『Bless Its Pointed Little Head』がリリースされます。

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このアルバムは、フィルモア・イーストフィルモア・ウェストでのライブです。この前年にフィルモア・ウェストが開設されました。といってももとはカルーセルというクラブでそれをビル・グラハムが買い取って、ニューヨークのフィルモア・イーストに対してウェストと名付けたものです。彼らはカルーセル時代から出演しており、演奏しやすい場所だったらしいです。この中では「Somebody To Love(あなただけを)」や「It's No Secret」などのヒットナンバーの他に、ヨーマ・コウコネンとジャック・キャサディが中心のブルースナンバー「Rock Me Baby」を演奏します。ヨーマとジャックはこの頃から別プロジェクトで『ホット・ツナ(Hot Tuna)』というグループを結成します。ジェファーソンの講演が終わると、ホット・ツナの演奏が始まるといった具合です。

 

同じ年6枚目のアルバム『Volunteersがリリースされます。

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このアルバムにはピアノのニッキー・ホプキンス、ハモンドオルガンでスティヴン・スティルス、ペダルスティールでジェリー・ガルシア、パーカッションで後にメンバーになるジョーイ・コビントン、それとデヴィッド・クロスビーが参加しています。

反体制的、政治的メッセージをふんだんに盛り込んだアルバムになりました。もはやジェファーソンはアメリカの反体制のカリスマ的存在になりました。1曲目のポール・カントナー作「We Can Be Together」がすべてを象徴しています。CS&Nのアルバムにも入っているポール・カントナーとデヴィッド・クロスビー、スティヴン・スティルスの共作になる「Wooden Ship」を取り上げています。

 

ここまでで1960年代のジェファーソン・エアプレインは終わります。

この1969年にはウッドストックがあり、ベトナム戦争は泥沼化し、ロックはますます社会性を帯びるようになっていきます。

そうした中、ジェファーソンは1970年に入りメンバー間に考えの違いが出てきます。マーティ・バリンは1971年にグループを脱退します。ヨーマ・コウコネンとジャック・キャサディは別プロジェクト『ホット・ツナ』に力を注ぐようになります。またポール・カントナーは『Paul Kantner Jefferson Starship』名義でのアルバムを発表します。それでも1971年には自主レーベル「GRUNT」レコードを設立しバンドを継続させます。そしてジェファーソン・エアプレイン名義でライブと未発表音源集を含む4枚のアルバムを出して、1974年『ジェファーソン・スターシップ(Jefferson Starship)』として飛び出します。

そのあたりの70年代についてはまたの機会にしましょう。


Jefferson Airplane -White Rabbit-

 


Jefferson Airplane - Somebody To Love, American Bandstand, 1967

 

それでは今日はこの辺で。