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映画『ローズの秘密の頁(ページ)』を観る

今日のキネ旬シアターは『ローズの秘密の頁(ページ)』でした。

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監督・脚本:ジム・シェリダン

主演:ヴァネッサ・レッドグレイヴルーニー・マーラエリック・バナ

制作:アイルランド 2018年公開(日本)

 

完全ネタバレ

例によって、事前情報皆無で観に行きました。

ストーリーはというと、ローズ・マクナルティは精神病院に40年以上入院しています。その病院が取り壊されることになり、転院のための診察を任されたグリーン医師はローズが過去に我が子を殺している容疑があることを知らされます。

 

ローズは頑なに転院を拒みます。しかし病院側は強制的に荷物を片付け転院させようとします。ローズは聖書を返してくれと頼みます。グリーン医師が自分の責任で彼女を診察するからと病院側を説得し、荷物を取り返します。

 

その聖書の隙間には彼女の日記が綴られていました。グリーン医師はそれに興味を持ち、ローズを診察し始めます。やがてローズはグリーンと看護師に自分の過去を語り始めます。

 

1940年頃、ローズは空襲が激しくなってきた都会を離れ、アイルランドに住む叔母に引き取られます。アイルランドはローズの故郷でもあります。彼女は叔母が経営するホテルで働き始めます。

そして近所の家の酒屋の息子マイケル・マクナルティと知り合います。お互いに惹かれ合いますが、マクナルティはイギリス空軍のパイロットを志願して、戦地へ赴いてしまいます。

マクナルティ家はイギリス寄りだと近所からも疎んじられていました。

そんな彼女に神父のゴーントが近づきます。初めはローズもゴーントに興味を持ちますが、その執拗さに嫌気がさして避けるようになります。彼女は他の男たちにも人気があり、ゴーントはその男たちに喧嘩を売り、町の噂になってしまいます。叔母は怒ってローズを片田舎のあばら家に一人住まいをさせてしまいます。

そんな時、ローズの家の近くに飛行機が墜落します。パイロットは一命を取り留めますが、そのパイロットがなんとマイケルだったのです。ローズの手厚い看病でマイケルは回復し、軍に戻るという朝、ローズは「行かないで」と縋ります。マイケルも同じ気持ちでいました。そして二人は結ばれ、結婚します。しかし、その後アイルランドの若者たちに見つかり連行されてしまいます。

ゴーントはさらにしつこくローズに纏わりつきます。それでも受け入れないローズを「色情狂」のレッテルを貼り強制的に精神病院に収容させてしまいます。ローズはそこで完全に精神病患者としてひどい扱いを受けることになります。

ゴーントはマイケルは死んだとローズに告げますがローズは信じません。やがて自分の妊娠を知ります。しかしここでは生まれた子供は養子に出されてしまうことを知ります。

臨月になってローズは病院を抜け出します。そして泳いで小島にたどり着きそこで出産します。追ってきた警官やゴーント神父はローズが石で赤ん坊を撲殺するところを目撃したと証言します。ローズに子殺しの容疑がかかります。

しかしローズはそれを憶えていません。電気ショックを受けさせられ、記憶が亡くなってしまったのです。男の子だったいう事だけは憶えており、もちろん殺してなどいないと主張します。そしてローズは息子が迎えに来ることを頑なに信じています。

 

映画の最終局面でローズとグリーン医師とゴーントの関係が明らかになってきます。

ローズの診察をグリーン医師に依頼したのはゴーント神父だったのです。そして日記にあるローズが子供を産んだ日はグリーン医師の誕生日と同じだったのです。グリーン医師が亡くなった父親の書棚を調べると自分あての遺書が見つかりました。

ローズの子供をゴーント神父から養子として育てて欲しいと頼まれたことが書かれてありました。

グリーン医師は売却予定の父親の家の売却を止め、そしてローズを迎えに行きました。ローズはグリーン医師の父親の遺書を見てすべてを悟りました。

 

この映画は2008年のセバスチャン・バリーの人気小説『The Secret Scripture』の映画化です。アイルランドでは酷評されたようですが、なかなか面白い映画でした。

 

第2次世界大戦当時のイギリスとアイルランドの関係性が描かれています。イギリスがアメリカと手を組んだのに対し、アイルランドはあくまでも中立を貫きます。マクナルティは非国民扱いされますが、アイルランドの中にもこのような人間はいたのでしょう。現にアイルランドからもイギリス軍に加わった義勇軍がいましたから。

また、精神病院での患者の扱いの惨たらしさも驚きです。まるで人間扱いされていません。今、このようなことが明るみになったら一斉に叩かれるでしょう。とはいっても、少し前までの日本でも、そういった差別は日常茶飯事でしたし、病人や老人をベッドに縛り付ける施設などはよく耳にしましたし、当たり前に存在していました。今でもそれはあるのです。

プロテスタントカトリックのこともちょっと出て来ました。ローズは聖書命ですからプロテスタントです。ゴーント神父は神父というくらいですからカトリックです。アイルランドカトリック系が大半です。2人が結婚式を挙げた時に、マイケルが教会で神父様と言ったら私は牧師です、形式なんて関係ないんですと言った具合でざっくばらん。この違いがまたおもしろいです。ローズが妊娠しても中絶させられなかったのは宗教の違いだったのでしょう。

 

映画というのはその国の歴史や文化を映像で体現できるという楽しみがあって、やはり面白いのです。

 

ローズを演じた2人の女優。若かりし頃のローズはルーニー・マーラです。この人の映画は最近では『キャロル』を観ました。透明感のある不思議な魅力を持った女優です。この演技には引き込まれます。

老いたローズはなんとあのヴァネッサ・レッドグレイヴです。配役を見て初めて気が付きました。全然わかりませんでした。それもそのはず、私が感動した映画『欲望』を観てから、はや4十数年が経ちます。やっぱり年老いても魅力があります。81歳とのこと。

 

最後に『月光』の調べが哀しかったです。

 


『ローズの秘密の頁(ぺージ)』予告

 

それでは今日はこの辺で。