今日も懐かしいところで『マウンテン(Mountain)』です。
マウンテンは1968年の結成です。大デブのレスリー・ウェスト(Leslie West,g,vo)と「クリーム」のプロデューサー、フェリックス・パパラルディ(Felix Pappalardi,b,vo)がN.D.スマート (N.D. Smart,ds)とスティーヴ・ナイト (Steve Knight,key)を加えてスタートしました。
ファーストアルバムは『Mountain』というタイトルですがレスリー・ウェストのソロアルバムです。ボブ・ディランとザ・バンドの「火の車」をカバーしています。
1970年に実質上のファーストアルバム『Climbing!(勝利への登攀)』をリリースします。この中から、アメリカンニューシネマの『バニシング・ポイント』に挿入歌として使用された「ミシシッピー・クイン」がヒットし、『マウンテン』の名を知らしめました。この他にも「Theme For an Imaginary Western (想像されたウエスタンのテーマ)」はクリームのジャック・ブルースの曲で名曲です。このアルバムからドラムスがコーキー・レイング (Corky Laing,ds)に代わっています。
そして1971年に『Nantucket Sleighride(ナンタケット・スレイライド)』が発表されます。
Side A
1.Don't Look Around
2.Taunta (Sammy's Tune)
3.Nantucket Sleighride (For Owen Coffin)
4.You Can't Get Away
5.Tired Angels (For J.M.H.)
Side B
1.The Animal Trainer and the Toad
2.My Lady
3.Travellin' in the Dark (For E.M.P.)
4.The Great Train Robbery
プロデュースはフェリックス・パパラルディです。
ハードなロックナンバーのA-1で始まり、静かな短いインストナンバーのA-2に続いて登場するのがタイトル曲。ドラマチック仕立ての名曲中の名曲です。この1曲だけでもこのアルバムを聴く価値があります。実際に沈没した捕鯨船を題材にした内容で、船員を助けるために自分を犠牲にした少年船員Owen Coffinに捧げる詩になっています。
アルバム全体を通して言えますがコーキー・レイングのドラミングが凄いです。パパラルディはこのドラミングが気に入ったのでしょう。
A-4は「ミシシッピ・クイン」にも通じるハードなナンバー。
A-5はちょっとクラシック風なナンバーでレスリーのギターが冴えます。
B-1のロックンロールナンバー。
B-3はもう一つの目玉曲「暗黒への旅路」が始まります。憶えやすいテーマが頭から離れなくなります。
このアルバムは商業的にも大成功を収めました。ビルボードでも自己最高の16位を記録しました。
全体的にはフェリックス・パパラルディ色が前面に出ているように思えます。一聴すると「クリーム」かと錯覚するほどです。フェリックスが「クリーム」でやり残したことを、レスリー・ウェストを使ってやっているのではないかと思えるくらいでした。レスリー・ウェストは当時売れなくてひどい生活をしていたらしく、それをフェリックス・パパラルディに拾ってもらったようなもので、フェリックスにしてみればレスリーはクラプトンのように文句を言わないだろうと思ったのではないでしょうか。
同年に『Flowers of Evil(悪の華)』をリリースします。これはスタジオとライブの組合せ。さらに翌年ライブ盤『(Live - The Road Goes Ever On(暗黒への挑戦)』とライブ盤が続きます。このライブ盤では「Nantucket Sleighride」を17分にわたって演奏します。さらに日本でのライブを収めた『Twin Peaks(異邦の薫り)』では31分です。ちょっと長すぎます。それほどこの曲の人気は凄いものでした。
1972年にフェリックスとレスリーの間に溝が生まれ解散します。原因はハードロック志向のレスリー・ウェストとプログレ志向のフェリックス・パパラルディの目指す音楽性の違いでした。
レスリーはコーキー・レイングと共に元クリームのジャック・ブルースとウェスト・ブルース・アンド・レイング(West, Bruce & Laing、WB&L)を結成します。
1973年には日本公演が予定されましたがジャック・ブルースが脱退。急遽フェリックス・パパラルディを呼び、メンバーを入れ替え「マウンテン」の再結成となり、日本公演が実現しました。その時の模様が先の『Twin Peaks(異邦の薫り)』です。
それから再びコーキー・レイングを加えてアルバムを1枚作成しますが、結局は解散してしまいます。
レスリー・ウェストはその後ソロ活動やコーキー・レイングと『マウンテン』を断続的に再結成して活動しています。あの巨漢でしたからやはり糖尿病を患い片足切断までしたようです。それでも元気に頑張っています。72歳です。
一方のフェリックス・パパラルディは日本のミュージシャン、ジョー山中(フラワートラベリング・バンド)やブルース・クリエーションなどとも活動しましたが、1983年妻のゲイル・コリンズに銃で撃たれ死亡しました。43歳でした。何とも悲惨な死でした。この人のプロデュース力は大したもので「クリーム」をはじめヤングブラッズやジェシ・コリン・ヤング、さらにはホット・ツナにまで及びます。
このアルバムの変わったデザインはその妻のデザインです。曲作りも二人で作った曲が多数ありました。フェリックスに愛人がいたらしく、それが原因かと思われましたが、本人は殺意を否定、事故だと主張し認められ懲役4年の判決でした。
芸術家の人生は一筋縄ではいきませんな。
このアルバムには付録も多く付いていました。当時「マウンテン」を大々的に売り出そうとするレコード会社の思惑が見えます。
なんとブロマイド付きです。
それ以後のアルバムです。
Mountain - Nantucket Sleighride (To Owen Coffin)
Mountain - Travelling in The Dark
それでは今日はこの辺で。