Flying Skynyrdのブログ

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映画『女の一生』を観る

今日のキネ旬シアターは女の一生でした。

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監督:ステファヌ・ブリゼ

原作:モーパッサン

主演:ジュディット・シュムラ、ジャン=ピエール・ダルッサン、ヨランド・モロー

制作:フランス 2017年公開

 

原作は『脂肪の塊』や『雨傘』でおなじみ文豪モーパッサンの長編小説です。学生時代に読んだ記憶がありますが、内容はほとんど憶えていません。したがって新鮮でした。情けない。

久しぶりに重たい気分で映画館を後にしました。

 

1800年代の初めごろでしょうか、フランスはノルマンディの寄宿舎学校を卒業し両親とレ・プープルの屋敷で暮らすようになった17歳の少女ジャンヌは男爵である父親の農園を手伝いながら幸せな生活を送っています。

 

ある日父親が近くに越してきた青年ジュリアンを家に連れてきます。若い二人はすぐに仲良くなり、そして結婚することになりました。ジャンヌは幸せの絶頂期にありました。しかしここからが不幸の始まりでした。ジュリアンは次第に贅沢なジャンヌの生活ぶり不満を持つようになりました。

 

そしてジュリアンはお手伝いの乳姉妹のロザリに手を出して、妊娠させてしまいます。しかしジロザリの告白によると二人は結婚前から関係を持っていたのでした。絶望したジャンヌは実家に帰ると言いますが、神父がジュリアンは十分反省して許しを乞うているのだから許してあげなさいと告げます。母親も許してあげなさいと言い聞かせます。

ロザリに暇を出して、2人は再び一緒に暮らすようになりました。そしてジャンヌは妊娠します。ジャンヌはジュリアンの友人のフルヴィル伯爵の妻と親友のような関係になります。しかし、ジュリアンと伯爵夫人の不倫を目撃してしまいます。ジャンヌは別な神父に相談します。神父は伯爵に知らせるようにと強硬に薦めますが、ジャンヌは伯爵はこの事実に耐えられないだろうからそれは出来ないと言います。神父が伯爵に知らせたのか、伯爵は二人を殺し自殺してしまいます。

そして今度は母親が病死します。遺品を整理していると、母親が不倫をしていたことを示す手紙類が出て来ました。夫、乳姉妹、親友、母親に裏切られたジャンヌは生まれてきた息子ポールを溺愛します。

しかしポールは片親が原因なのか学校でいじめられ、登校拒否になり、その後は引きこもりになってしまいます。一時は父親の農園を手伝ったりしていましたが、突然女をつくりロンドンへ行ってしまいます。

その後は手紙で金の無心をしてくるだけになりました。会社を設立する、会社が倒産した、結婚して子供が出来て借金が増えた、また会社が倒産したなどなど、その都度金の無心をしてきます。それでもジャンヌは家の財産を処分し金の工面をしました。

一方家を出されて音信不通になっていたロザリが今までの恩返しに身の回りのお世話をしたいと言ってきました。そして二人で暮らすようになりましたが、家の方は借金まみれでとうとう家を出る羽目になりました。

ジャンヌはいつかポールが帰ってくる日を待ちながら、かつての屋敷の門の前で雨の日も風の日も待ち続けます。そんなジャンヌを見かねてロザリがポールのところに行って、連れて帰ってくると言います。おそらく手紙の内容は全部嘘だろうけどと言いながら出発しました。

 

ジャンヌがロザリの帰りを待っていると、馬車に乗ってロザリが帰ってきました。その腕の中にはジャンヌの孫が眠っていました。ロザリは「ポールは後日帰ってきますよ。人生、そんなに悪くはないですね」と微笑みかけました。

 

この映画、まず驚くのは今時、1:33:1のスタンダードの画面サイズになっています。昔のテレビ画面や大昔の映画のように正方形に近く狭い感じです。わざとこのような画面にしたのでしょうが、これによってジャンヌの世界の狭苦しさ、息苦しさを表現したかったのでしょうか。

それと、過去の幸せな時がフラッシュバックのように挿入されます。現在の暗い画面と重苦しさとは対照的にジュリアンとの抱擁シーンやポールの可愛かった時期、両親との生活風景などが明るい画面で描かれています。ジャンヌが過去の幸せな時期に縋りつきたい気持ちを表しているようです。そしてノルマンディー地方の自然の美しさと厳しさを兼ね備えた描写が素晴らしいです。

 

最後の最後でロザリの言葉で少しは救われましたが、何とも切ない物語でした。今のこの時代に監督がモーパッサンの「女の一生」を取り上げることで何を言いたかったのでしょうか。人生は不幸の連続だが、振り返ってみれば、まんざらでもない、というのは今も昔も変わらないという事でしょうか。

この作品はベネチア国際映画祭2016にて、国際批評家連盟賞を受賞しました。

 

モーパッサンと言えば『脂肪の塊』などの短編が有名です。社会風刺を込めた作品が多いのが特徴です。本人は梅毒を患い、最後は発狂して43歳の若さで亡くなりました。

女の一生」を読んでから、はや数十年、映画を観ても全く思い出せませんでした。映画は素晴らしかったですが、残念ながら原作を読み返す気力はなさそうです。

 

  


「女の一生」予告編

 

それでは今日はこの辺で。