ブリティッシュロックの正統派、『スプーキー・トゥース(Spooky Tooth)』について書いてみます。
スプーキー・トゥースはその前身をThe V.I.P.sといい、メンバーはマイク・ハリソン(Mike Harrison,vo,key)、ルーサー・グロヴナー(Luther Grosvenor,g)、グレッグ・リドレー(Gregg Ridley,b)、マイク・ケリー(Mike Kellie,ds)の4人でした。そこにアメリカからドイツに留学していたゲイリー・ライト(Gary Wright,key,vo)と知り合い「ジ・アート」というバンド名で1967年にデビューしました。
その後、バンド名をスプーキー・トゥースに変え、1968年にファーストアルバム『It's All About』をリリースします。
彼らはアイランド・レコードの社長クリス・ブラックウェルに気に入られたらしく、ジミー・ミラーにプロデューサーを任されました。アイランド・レコードはフリーやトラフィックなど多くのミュージシャンを抱えた名門レーベルです。ジミー・ミラーはトラフィックやローリング・ストーンズなどを手掛けた敏腕プロデューサーです。このファーストアルバムは当時のアメリカのサイケデリック・ロックを意識してサイケな色彩が強く出ています。ボブ・ディランやジャニス・イアンの曲などをカバーしています。
1969年にセカンドアルバム『Spooky Two』をリリースします。
Side A
1.Waitin' for the Wind
2.Feelin' Bad
3.I've Got Enough Heartaches
4.Evil Woman
Side B
1.Lost in My Dream
2.That Was Only Yesterday
3.Better by You, Better than Me
4.Hangman Hang My Shell on a Tree
プロデュースは前作に引き続きジミー・ミラーです。
A-4を除き全曲ゲイリー・ライト並びにゲイリーと他メンバの共作です。
A-1はドラムのイントロで始まるヘヴィーな曲。ルーサー・グロヴナー、マイク・ハリソン、ゲイリー・ライトの共作です。当時フリーと並んでヘヴィーロックと称されたのが頷けるナンバーです。
A-2はアコースティック・ギターで始まるちょっと暗めなナンバー。マイク・ケリーとゲイリーの共作。
A-3はコーラスを交えた重々しいナンバー。これも前曲同様、ケリーとゲイリーの共作。
A-4はLarry Weissという人のカバー。キャンド・ヒートもカバーしていました。ヘヴィーロックです。
B-1は不気味なイントロで始まる不思議ま曲。ゲイリー作。
B-2はアメリカ南部を思わせる軽めなナンバー。ゲイリー作。
B-3はフリーにも通ずるブルースを基調とするリフで重厚なサウンドが聴けます。ゲイリー作。
B-4はコーラスがきれいないかにもイギリス的なナンバー。ゲイリー作。
スプーキー・トゥースの特徴はブルースを基本としながらも、ヘヴィなサウンドを作り出していることです。マイク・ハリソンのヴォーカルはポール・ロジャースにも引けを取らない素晴らしさですし、ゲイリーのオルガンも重厚でイギリスを感じさせます。見逃してならないのはルーサー・グロヴナーのギターワークです。それほど目立ちませんがいい味を出しています。
このアルバムリリース後、グレッグ・リドレーがスティーヴ・マリオットのハンブル・パイ結成のため、脱退してしまいます。代わりにアンディ・レイ(Andy Leigh,b)が加入します。
そして、1969年に『Ceremony』というフランスの現代音楽家を招いたアルバムをリリースしました。
これが評判が悪く、ゲイリー・ライトは責任を感じバンドを脱退してしまいます。さらにアンディ・レイもフェアポート・コンベンションを辞めたイアン・マシューズのマシューズ・サザン・コンフォーに参加するために脱退してしまいます。
残った3人、マイク・ハリソン、ルーサー・グロヴナー、マイク・ケリーはジョー・コッカーのバック・バンドであるザ・グリース・バンドのヘンリー・マックロー(Henry McCullough,g)、アラン・スペンサー(Alan Spenner,b)、クリス・ステイントン(Chris Stainton,key)という凄いメンバーを加入させました。
そして、1970年に『Last Puff』をリリースします。
このアルバム名義は「Featuring Mike Harrison」になっています。ソングライターのゲイリー・ライトがいなくなったため、カバー曲が増え、ビートルズやエルトン・ジョンをカバーしています。このアルバムをスプーキーの最高作だとする人もいるくらいにいい出来に仕上がっています。しかし、これで一旦解散ということになります。
マイク・ハリソンとゲイリー・ライトはそれぞれソロ活動、ルーサー・グロヴナーはモット・ザ・フープルに参加します。マイク・ケリーはピーター・フランプトンのフランプトンズ・キャメルに参加します。
ところが1972年にマイク・ハリソンとゲイリー・ライトがスプーキー・トゥースの再編を話し合い、マイク・ケリーは話を聞くや、フランプトンズ・キャメルを辞め駆け付けました。ギタリストに後にフォーリナーのギタリストになるミック・ジョーンズ(Mick Jones,g)を加え、ベースにクリス・スチュワート(ChrisStewart,b)、ドラムにブライソン・グラハム(Bryson Graham,ds)を加え再スタートを切りました。
1973年に『You Broke My Heart』をリリース。そして同年に『Witness』をリリースし、その後マイク・ハリソンは脱退します。『Witness』ではドラムがマイク・ケリーに代わっています。
この2作は再びゲイリーのオリジナルがほとんどを占めミック・ジョーンズのギターが冴え、ゲイリーのオルガン、マイク・ハリソンの力強いヴォーカルと全盛期を彷彿とさせる出来になりました。
マイク・ハリソンの後任にマイク・パトゥ(Mike Patto,vo)、ベースのクリス・スチュワートも抜けたため、バル・バーク(Val Burke,b)を加入させ『The Mirror』をリリースします。結局これがラストアルバムになりました。
その後、マイク・ハリソンは再びソロへ。ゲイリー・ライトもソロ活動で大活躍します。ゲイリーのアルバム『The Dream Weaver(夢織り人)』は大ヒットしました。
1998年にはゲイリーを除くオリジナルメンバーで再結成しアルバム『Cross Purpose』をリリースしました。
スプーキー・トゥースにはジャケ違いのアルバムがあったりして面白いのですが、私の持っている『Witness』などもジャケ違いです。
アイランド・レコードには私の好きなミュージシャンがたくさんいましたね。
Spooky Tooth - That was only yesterday 1969
ザ・バンドのカバー「ザ・ウェイト」
Spooky Tooth - The Weight 1968
スプーキーの名曲
Spooky Tooth - Wings on my heart - Witness
それでは今日はこの辺で。