1941年、テネシー州メンフィス出身のドン・ニックス(Don Nix)はシンガー、プレイヤーとしてだけではなく作曲家、プロデューサーとしても名の知れた人物です。
彼は幼少の頃からR&Bに熱中し、ハイスクール時代には同じ趣味のドナルド・ダック・ダンやスティーヴ・クロッパーらとバンドを組んだりしていました。
学校を卒業すると軍隊に入隊したため、音楽活動は止めましたが、どうしても諦めきれず、再び彼らとマーキーズ(Mar-Keys)なるバンドを結成しサックス奏者として参加しました。元々はギタリストでしたが、サックスに興味を持ち始めました。
しかし、バンドで活動することに飽き足らず独立することにしました。残ったメンバーが後のブッカーT&MG’Sです。
独立した彼は知り合いだったレオン・ラッセルの手伝いながら、ソングライター、プロデューサーの仕事を始めました。
そして1970年にレオン・ラッセルの設立したシェルター・レコードと契約しソロデビューを果たすのです。デビューアルバム『In Got We Trust』は評判は良かったものの、さっぱり売れずシェルター・レコードを離れました。
ついでエレクトラと契約しセカンドアルバム『Living By The Days』をリリースします。このアルバムが日本のデビューアルバムとなりました。
1972年にはアラバマ・ステイト・トルパーズ(The Alabama State Troupers)なるバンドを結成し、ツアーを開始しました。その時の模様は2枚組のライブアルバム『The Alabama State Troupers Road Show』に収められました。
サザンロックのミュージシャンやブルースのファリー・ルイスが参加したツアーでしたが今一つ盛り上がりませんでした。
ところが、ドン・ニックスが以前フレディ・キングに書いた「Going Down」という曲をジェフ・ベックが取り上げ、ジェフ・ベックとの間に交流が生まれ、彼が当時結成したベック・ボガード&アピスのアルバムをプロデュースすることになりました。このアルバムではドン・ニックスの「Sweet Sweet Surrender」という名曲も取り上げています。
この「Going Down」という曲は今やブルースの古典となりつつあります。ジェフ・ベックの他にディープ・パープル、JJケール、チッキン・シャック、スティーヴィー・レイ・ヴォーン、ザ・フー、レッド・ツェッペリン、ジョー・ボナマッサなど多くのミュージシャンに取り上げられています。
これで注目を浴びたドン・ニックスは今度はスタックス・レコードと契約を結び1973年にアルバム『Hobos, Heroes and Street Corner Clowns』をリリースします。
マッスルショールズのミュージシャンを迎えてのスワンプロックです。「Sweet Sweet Surrender」が聴けます。
しかしこのアルバムもパットしませんでした。当然日本発売もありませんでした。
その後音沙汰がなく、1976年になってようやく新作が発表されるということで登場したのが『Gone To Long』でした。
Side A
1.Goin' Thru Another Chance
2.Feel a Whole Lot Better
3. Gone Too Long
4.Backstreet Girl
Side B
1.Rollin' in My Dreams
2.Yazoo City Jail
3.Harpoon Arkansas Turnaround
4.Forgotten Town
5.A Demain (Until Tomorrow)
このアルバムには詳しいクレジットはありません。ただジョージ・ハリソンがギターで参加しているというだけです。
レコーディング場所がフランス、イギリス、マッスルショールズとなっていますので前作と似たようなメンバーかと思われます。
A-2はバーズのジーン・クラークの曲。A-4はローリング・ストーンズの曲です。
全体にサザンロックの香りは残すものの、ストレートなロックが中心となっています。
再び長い沈黙の後、1979年にアルバム『Skyrider』をリリースしますが、その後は1994年まで、そしてさらに2002年にへと間隔は広がります。
2013年には来日しています。
色々なミュージシャンのレコードに名前が出てくるドン・ニックス。玄人好みのミュージシャンでした。77歳頑張っている事でしょう。
Don Nix - Rollin' In My Dreams
Don Nix - Forgotten town (1976)
それでは今日はこの辺で。