何やら訳の分からないバンド名『ローニン(Ronin)』は1970年代の中ごろからは引っ張りだこになったギタリストのワディ・ワクテル(Waddy Wachtel,g,vo)とこれまた人気セッションミュージシャンのダン・ダグモア(Dan Dugmore,g,steel)、それに同じくセッションミュージシャンのリック・マロッタ(Rick Marota,ds)、それにピーター・フランプトンと一緒にプレイしていたスタンレー・シェルドン(Stanley Sheldon,b)が1979年に結成したバンドです。
ワディとダンとリックの3人はリンダ・ロンシュタッドのアルバムレコーディングで一緒にプレイしていました。
1979年のリンダの来日公演でもこの3人は来ているはずです。そういう関係で、このメンバーがバンドを結成し、アルバムを出したというので早速購入したという経緯があります。
それが『Ronin』でした。邦題は『浪人』でした。来日して日本”浪人”という名称を知ってつけたのでしょうか。ジャケットにも”浪人”の文字が見られます。
Side A
1.Loves Coming Into My Life Again
2. Home At Last
3.It Touches Everyone
4.Here Come The Runner
Side B
1.America The Beautiful
2.Hey Nadine
3.All I Can
4.Desilu
5.Feels Right
プロデュースはピーター・アッシャー(Peter Asher)です。
サウンド的にはちょうどウェストコーストロックとAORの中間のような感じです。この頃のリンダ・ロンシュタッドが歌ってもおかしくないような、ノリのいい曲もあります。
ヴォーカルを執っているワディ・ワクテルの声は聴きようによってはドン・ヘンリーを思わせ、イーグルスを聴いているような錯覚にとらわれたりします。
ワディ・ワクテルとダン・ダグモア、この二人は70年代のレコードに数多くクレジットされています。
ワディは1960年代からバンド活動を開始していましたが、今一つパットしませんでした。1970年にはそれまでのバンドを辞め、セッションミュージシャンで生きていくことを決意します。1972年にウォーレン・ジヴォンに誘われエヴァリー・ブラザースのレコーディングに参加、それからはエルトン・ジョンをはじめバッキンガム・ニックス、フリートウッド・マック、ウォーレン・ジヴォン、ジェイムス・テイラー、キャロル・キング、マリア・マルダー、アーロ・ガスリー、カーラ・ボノフ、アンドリュー・ゴールド、J.Dサウザーなど数え切れないくらいのセッションをこなしてきました。
一昨年観た映画『JIMI:栄光への軌跡』ではジミヘン役の影武者をやっていました。
一方のダン・ダグモアも負けていません。彼はバーズ、フライング・バリット・ブラザース、ポコなどのカントリー・ロックに憧れ、スヌーキー・ピートにスティール・ギターを学びました。1974年にジョン・スチュワートのレコーディングを皮切りに、リンダ、ジェイムス・テイラー、アンドリュー・ゴールド、パブロ・クルーズ、カーラ・ボノフ、エリック・カズ、J.Dサウザー等々、ウェストコーストロックでは欠かせない存在になっています。
というか、この辺の人たちはみんな仲間なのでしょう。この人たちのレコードのクレジットを見るとやたら同じ名前が出て来ます。
ただし、彼等の信条はあくまでもセッションミュージシャンです。このバンド『Ronin』も長く続くとは思っていませんでしたが、この1枚だけであっさりと解散しました。
その後も皆さん活躍しています。
"Love's Coming Into My Life Again" - RONIN
それでは今日はこの辺で。