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映画『沖縄スパイ戦史』を観る

今日のキネ旬シアターは沖縄スパイ戦史でした。

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監督:三上知恵 大矢英代

制作:日本 2018年公開

 

太平洋戦争末期の沖縄戦、民間人24万人が死亡しました。その沖縄戦の裏側で何が起こっていたのかを探るドキュメンタリーです。

監督は映画『標的の村』『戦場ぬ止み』『標的の島 風かたか』の三上知恵と学生時代から八重山諸島の戦争被害の取材を続けてきた大矢英代です。

三上知恵は毎日放送琉球朝日放送の元アナウンサーで、退職後は映像作家として沖縄と戦争についてのジャーナリズム活動やドキュメント映画の制作に携わっています。

大矢英代琉球朝日放送の報道記者を経てフリージャーナリストになったまだ31歳の若手です。

 

沖縄の北部でゲリラ戦やスパイ活動を担ったのは10代半ばの少年たちでした。彼らは「護郷隊」と呼ばれ、彼らを組織して指揮したのが陸軍の特務機関だった「陸軍中野学校」の青年将校たちでした。

1944年、42名の「陸軍中野学校」出身の兵士が沖縄に渡りました。

沖縄戦で組織された少年部隊は「護郷隊」だけではありませんでした。他にも多くの部隊が編成されていたのです。

この映画では「護郷隊」を描いています。「陸軍中野学校」の精鋭たちに組織された彼らの任務は主にゲリラ戦です。当時15~17歳の少年の生きのこった人たちが次々と証言します。現在は90歳近い人たちですが記憶は生々しいです。

 

もう一つ、あまり知られていない事実が明らかにされました。それは八重山諸島波照間島から住民をマラリア地獄の西表島への移住計画です。これを実行したのも「陸軍中野学校」の山下虎雄と呼ばれた表向き教師という工作員でした。住民は西表島へ移住させられマラリヤに罹り夥しい数の死者を出しました。海岸も死体でいっぱいでした。住民は今でも怒りを抑えられません。

 

さらにこの映画のタイトルになっている「スパイ」についての事実が紹介されます。スパイ行為はアメリカ軍に対してのものではなく、軍による住民の監視、さらには住民による住民の監視です。アメリカ軍への内通は軍が一番神経をとがらせていたことでした。軍は内通者と疑われるものを摘発し、殺害します。住民は殺されるよりはと住民を監視するスパイになっていく。その契機になったのが軍機保護法の改正にあったと、ある学者は説明します。

 

現在もスパイ行為をした人物を知る住民たちは、決してその名前を口にしません。あの状況ではやむを得なかったのだと証言します。

 

映画は戦争の悲惨さと同時に、軍の冷酷さを明らかにしていきます。そして軍は決して国民、住民を守ることはない。守るのは国であって、国体護持だと。本土決戦になったならば、沖縄と同じ現象が間違いなく起きたでしょうと識者は語ります。

 

そして自衛隊も戦時になれば国民を守りことはしない、守るのは基地であって、国なのだと自衛隊OBは語りました。最近の様々な法律の制定・改正は何のためでしょうか。再び真っ先に被害を被るのは沖縄なのでしょうか。

 

 


「沖縄スパイ戦史」予告編

 

 

それでは今日はこの辺で。