Flying Skynyrdのブログ

映画や音楽、本についての雑文

映画『斬(ざん)、』を観る

今日のキネ旬シアターは『斬(ざん)、』でした。

ポスター画像

 

監督:塚本晋也

主演:池松壮亮、蒼井 優、塚本晋也

制作:日本 2018年公開

 

監督の塚本晋也は俳優としても活躍していますが、監督としても多くの作品を残しています。

私も一昨年『野火』を観ました。なかなかの力作でした。今回は初の時代劇ということで期待しました。

 

以下、ネタバレです。

 

時は江戸時代末期、所は江戸近郊の農村。若き浪人・都筑杢之進(池松壮亮)が主人公です。世の中は鎖国か開国かで揺れていました。

杢之進は藩から離れ、浪人として農家の離れで手伝いをしながら暮らしています。その農家の息子・市助に剣術の稽古をつけています。市助の姉・ゆう(蒼井優)ともお互いに惹かれ合うものが有りました。

 

ある日、杢之進と市助は浪人・澤村次郎左衛門(塚本晋也)の果し合いを目撃し、その腕前に目を見張りました。それに触発されてか、二人はますますけいこに励みました。その稽古姿を見た澤村次郎左衛門は杢之進の腕前に感心し、二人に対し自分の組織に入り、京都へ行かないかと誘います。

『斬、』(C)SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER

 

二人はその誘いに乗ります。市助は大乗り気ですが、杢之進は剣術はやってはいるが人を斬ったことが無い自分が、人を斬ることになるかもしれないことに、人を斬る意味を考えます。ゆうは弟を心配すると同時に杢之進との別れに心を痛めます。

 

そんな中、無頼派集団が村に流れ着きます。農民たちは彼らを恐れ、杢之進に助けを求めます。しかし、杢之進はあくまで平和裏に解決しようと、彼らに近づき親しくなります。

 

そしていよいよ出発という日に杢之進が高熱を出し倒れてしまいます。澤村は止む無く、出発を一日伸ばします。市助は勇んだ気持ちをどうしようもなく、村をほっつき歩くうちに無頼派集団に出くわします。彼らから「この百姓が」といわれ、頭にきた市助は喧嘩を売りますが逆にボコボコにされてしまいます。

 

それを聞いた澤村は、自分の部下になるであろう人間がこんな扱いをされて黙っているわけにはいかないと言い、敵討ちに向かいます。そして一人は取り逃がしたものの、他のものは全員斬ってしまいました。これでもう大丈夫ということになったのですが。

 

その夜、ゆうの自宅が襲われ、ゆうの両親と市助、それに駆け付けた村人が残虐にも殺害されました。杢之進も異変に気付き駆け付けましたが、既に遅かったのです。

 

ゆうは杢之進に仇をとってくれと懇願しますが、杢之進は躊躇います。澤村は敵討ちに向かおうとしますが、ゆうはあくまでも杢之進に頼みます。市助をその気にさせた責任があると言います。杢之進はやればまたやり返してくる、その繰り返しが続く、と言い澤村にもやめてくれと頼みます。

 

しかし、澤村は出かけます。やむなく杢之進もついていきます。そして彼らのアジトに着くと、彼らはいませんでした。しばらくすると集団が帰ってきました。澤村はお前の実力を見せてくれと言い真剣を残し、その場を去ってしまいます。そこにゆうが連中に連れて来られます。そして侵されそうになり、ようやく杢之進は戦う決心をし、あくまでも真剣ではなく木の棒を使って応戦します。

 

十数人との争いです。さすがの杢之進も絶体絶命。ゆうは侵されます。そこに澤村が現れ、連中を皆殺しにします。しかし、自らも傷を負ってしまいます。

 

澤村は杢之進に明日の朝出発するから準備しておくようにと言います。杢之進は「人を斬れるようになりますように」という言葉を繰り返し、繰り返し、狂ったようになります。

 

翌朝、澤村が訪ねると、杢之進はいなくなっていました。澤村は後を追います。ゆうもまたその後を追います。澤村は江戸に行くのは止めた。その代わり彼を斬ると、ゆうに言います。そして俺に勝ったら代わりに京都へ行ってくれと言います。

 

3人は山の中を歩き回ります。澤村も傷で身体の自由が利かなくなってきました。そしてとうとう倒れている杢之進を発見します。刀を抜いて近づき、「杢之進!」と声をかけます。そして斬りかかります。眼を覚ました杢之進との斬り合いが始まります。

 

最初の一太刀で杢之進は傷を負います。そしてとどめの一撃をと澤村が斬りかかった瞬間、杢之進の剣が澤村を捉えます。杢之進は初めて人を斬ったのです。そしてそれを目撃したゆうの絶叫が続きます。杢之進は森の中をゆらゆらと歩き続けるのでした。

 

凄い映画でした。殺陣のシーンは物凄い迫力で息をのみました。主役の池松壮亮の運動能力の高さを感じました。

もう一つはカメラワークです。揺れ動くカメラ。眼が疲れますが、迫力は十分です。殺陣のシーンを追いかけるカメラは鬼気迫ります。

 

どうしても人を斬ることが出来ない侍。そんな侍が幕末の京都に行って、公儀の役に立てるというのか。それならば何のために江戸へ、そして京都へ行くのか。悩み続ける杢之進。市助に剣術を指導し、百姓が剣を持つことに希望を持たせてしまった責任。なんとか思いとどまらせようともしましたが、市助の決心は固い。そんな市助が殺害された。それも自分の責任。それでも真剣では相手と相対峙出来ない。

 

人を斬る意味に悩み続ける杢之進。そしてとうとう人を斬ってしまった杢之進。狂ったように彷徨い歩きます。

 

これまでの時代劇とは一線を画す、映像も音も迫力ある映画でした。PG12です。

 

映画『野火』でも戦中での人肉を食べるか否かで、生きる意味を描いたように、この作品でも生死に関する重いテーマが投げかけられました。

 

 


池松壮亮×蒼井優!塚本晋也監督作『斬、』予告編

 

 

それでは今日はこの辺で。