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映画『ヒトラーと戦った22日間』を観る

今日のキネ旬シアターはヒトラーと戦った22日間』でした。

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監督:コンスタンチン・ハベンスキー

主演:コンスタンチン・ハベンスキークリストファー・ランバート、ダイニュス・カズラウスカス

制作:2018年 ロシア

 

実話を基にしたナチスのソビボル強制収容所からの脱出劇です。脱出の先頭に立ったのはソ連ユダヤ系の軍人アレクサンドル・ペチェルスキー(通称サーシャ)でした。

 

完全ネタバレです。ご容赦願います。

 

ポーランドのソビボル収容所はポーランドにおける三大強制収容所の一つです。当然ユダヤ人の大量虐殺が目的の収容所です。

 

1943年9月。今日も収容所に多くのユダヤ人が移送されてきました。彼らは一部の職人を除いては虐殺される運命にあります。たとえ生き残ったとしても過酷な労働が待っています。そしてナチス将校の気分ひとつで殺されるのです。駅に到着すると「ようこそ、ソビボルへ。今日からここが住まいです」のアナウンスが流れます。一見平和な収容所のように見えますが、職人ではない一般のユダヤ人は早速ガス室送りです。

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そんな中でも収容所からの脱獄を計画している者たちがいました。リーダーはレオという男です。レオは反乱メンバーの中に軍隊をす経験した者ががいないことを危惧していました。しかし新たに入獄した中にソ連軍の中佐サーシャことアレクサンドル・ペチェルスキーがいることを知りました。レオはサーシャに接近し、メンバーに加わるように説得しますがサーシャはこれを断ります。

 

 ある日、農作業をしていた数名のユダヤ人が脱獄を決行しましたが失敗に終わり、全員射殺されました。さらに10人に1人のユダヤ人を射殺すると言い、10数えて10人目のユダヤ人を次々に射殺していきました。しかも楽しそうに。反乱メンバーやサーシャは黙って見守る以外術がありませんでした。

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この事件をきっかけに、ナチス親衛隊の曹長フィレンツェル以下、将校たちはさらに厳しい監視体制をとるようになりました。そしてフィレンツェルはサーシャが収容所にいることに気がつきました。サーシャはこれ以前にミンスクの収容所で脱走を図って失敗していたのです。フィレンツェルはサーシャを要注意人物として監視します。レオは何としてもサーシャにグループに加わってもらいたくて接触を図りますが、逆に監視隊にみつかり暴行を受けてしまいます。

 

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サーシャが収監されて12日目、列車が到着します。車両の中には大量の死体。そしてまだ生きているユダヤ人は次々に射殺されていきました。この光景を目の当たりにしたサーシャはとうとう脱獄を決断、レオ達のグループに参加します。

 

サーシャ収監21日目。サーシャたちは着々と計画を立てていました。目標はユダヤ人全員の脱出です。計画はナチス将校たちを一人ずつ連れだし、殺してゆくというものでした。その時、ユダヤ人に集合の合図が出されました。将校たちの宴会の余興に呼ばれたのでした。

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余興はユダヤ人たちを馬にして将校たちが乗った荷台を引かせるレースをするというものでした。いわゆる人間馬車です。レースに負けたユダヤ人や疲れて走れなくなったユダヤ人は射殺されます。その他にも火炙りや鞭打ちの刑が待っていました。この光景に耐えられなくなったサーシャはフィレンツェルを乗せ一晩中走り続けました。夜が明けてようやく宴会は終了。後には死体の山が転がっていました。

 

そして22日目。メンバーたちは計画通り、将校たちを次々に殺害、途中でフィレンツェルに感づかれ、サイレンを鳴らされててしまいますが、これを狙撃して、足止めしレオの合図でユダヤ人全員が脱出を始めます。レオは射殺されます。ナチス兵との銃撃戦で命を落としたものもありますが、生きのこったユダヤ人は全員脱出に成功しました。

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実際には400人が脱走を試み、およそ300人が成功したようです。しかしその後、ナチス親衛隊に捕らえられ無事に戦後を迎えられたのは50人ほどだったそうです。この収容所はこの事件の後解体されました。フィレンツェルは終身刑となりました。

 

ナチス・ドイツの収容所関連の映画は何本も観ていますが、この映画はロシア人のナチスに対する憎悪に満ちた映画です。ユダヤ人の収容者たちがナチスの将校を次々と殺害するシーンはそれまでに被った数々の虐待に対する果てしない憎悪がこれほど残酷な殺人を犯させるのだ、ということを端的に現しています。

 

この映画にはホッとさせられる場面が全くありません。緊張の連続です。虐待・虐殺が続きます。将校の気分を損ねたらお終いです。唯一、サーシャが収容所で知り合った女性ルカと心を通じ合う場面があるくらいです。しかしそのルカも脱走の途中で射殺されてしまいます。これは史実かどうかはわかりませんが。

 

同じ脱走劇を描いた大昔のアメリカ映画『大脱走』とはえらい違いです。これもお国柄でしょうか。それとも時代の差でしょうか。

 

いずれにしても、ナチス・ドイツが犯した罪を改めて認識させられました。アーリア人が最も優秀な民族だという認識から生まれたユダヤ人虐殺。これが世界大戦を生んでしまった。戦前の日本でも似たような民族差別は当たり前のように行われていました。そして現代世界でも一向に無くなる気配はありません。この民族問題には終わりはないのでしょうか。

 

この映画の原題は『ソビボル』ですが、邦題は『ヒトラーと戦った22日間』です。ここ何年かタイトルに『ヒトラー』がついた映画が目立ちます。意外と原題にはついていないものが多いのです。直接ヒトラーとは関係なくても、なぜか日本では『ヒトラー』をつけるのが好きなようです。その方が客を呼べるのでしょうか。この映画ももちろんヒトラーは出て来ません。タイトルに釣られて観に来た人は肩透かしでしょうね。もう少し邦題のつけ方に工夫が欲しいところです。

 

緊張感いっぱいの映画で、あっという間の2時間でした。

 

 


映画『ヒトラーと戦った22日間』予告編

 

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それでは今日はこの辺で。