2014年になって、なんとレッド・ツェッペリンの「天国への階段(Stairway to Heaven)」が盗作だとして訴えられたというニュースがありました。訴えたのはランディ・カリフォルニアの遺産管財人です。
ランディ・カルフォルニアは元スピリット(Spirit)のメンバーです。
2016年のロサンゼルス連邦地裁は著作権侵害には当たらないとして、ツェッペリン側の勝訴としましたが、2018年9月28日、連邦高等裁判所は2016年の判決が裁判官の誤った陪審命令によるものとして再審を命じました。
裁判に出席したツェッペリンのジミー・ペイジは当初「そんな曲は知らない」と主張していましたが、実際にはツェッペリンとスピリットは競演しているし、ペイジはスピリットのファーストアルバムを所持していました。
高裁の結果がどう出るのかは分かりませんが、いずれにしても50年も前の曲の盗作問題が未だに片付いていないというのは驚きです。
それはさておき、今ではすっかり忘れ去られているであろう、このスピリットというバンドを少し紹介したいと思います。
元はランディ・カリフォルニア(Randy California,vo,g)とマーク・アンデス(Mark Andes,b)、ジェイ・ファーガソン(Jay Ferguson,vo,perc)が1965年にロサンゼルスで結成したバンド、レッド・ルースターズ(Red Roosters)が母体となっています。このバンドはランディ―がニューヨークへ引っ越した時に解散しました。
レッド・ルースターの解散後、ランディはジミ・ヘンドリックスと出会います。そして一緒にプレイし、ジミに一緒にイギリスへ行こうと誘われますが、その時彼はまだ15歳だったため断念しました。
再びロサンゼルスに戻ったランディはマーク・アンデスとジェイ・ファーガソンに再会し、そこにカリフォルニアの義理の父親エド・キャシディ(Ed Cassidy,ds)とジョン・ロック(John Locke,key)が加わって出来たスピリットが誕生しました。
エド・キャシディは以前ライ・クーダー(Ry Cooder)やタジ・マーハール(Taji Mahal)、ケヴィン・ケリー(Kevin Kelly,後にバーズ)達のバンド、ライジング・サンズ(Rising Sons)のメンバーでした。エドはランディの母親と再婚していました。
1967年、スピリットはプロデューサーのルー・アドラー(Lou Adler)に認められ彼自身のOdeレコードと契約しました。
そして1968年、ファーストアルバム『Spirit』がリリースされました。
このアルバムの4曲目に冒頭で紹介した盗作されたという曲「Taurus」が収められています。「天国への階段」のイントロ部分のアルペジオが似ているということです。こちらは2分半の小品ですが、確かに雰囲気は似ています。ジミー・ペイジがインスピレーションを得たというのも納得できる話ではありますが、どうでしょう。
アルバム自体はヒットします。全米の31位と健闘しました。
同年にセカンドアルバム『The Family That Plays Together』をリリースします。
このアルバムも全米で22位と大健闘でした。サイケデリックの要素とジャズの要素が混じりプログレ風になってきました。曲の多くはジェイ・ファーガソンによるものです。
そして1969年にサードアルバム『Clear』がリリースされます。
1968年にアルバム2作、さらにこのアルバムの前には映画『Model Shop』のサウンドトラック制作、と多忙を極めた後に制作されたアルバムです。アルバム制作に十分な時間が取れませんでした。結果アルバムの売行きも全米55位とそれまでの2作には及びませんでした。
1970年に4枚目のアルバム『Twelve Dreams of Dr. Sardonicus』がリリースされます。
このアルバム制作にはニール・ヤングの勧めでプロデュースにデヴィッド・ブリッグス(David Briggs)を起用、さらにランディの骨折などもあって時間がかかりました。アルバムの売行きも全米63位とあまり振るいませんでした。
そしてマーク・アンデスとジェイ・ファーガソンはジョ・ジョ・ガンを結成するためバンドを離れます。
スピリットは新しいメンバーを加え活動を継続しました。1972年にアルバム『Feedback』をリリースします。
このアルバムにはランディもソロアルバム制作のため参加していませんでした。 クリスチャン・スタエリー(Chris Staehely,g,vo)、アル・ステヘリー(Al Staehely,vo,b)が加入しています。アルバムチャートも前作同様63位でした。
そしてランディもジョン・ロックもバンドを去り、1973年に解散しました。
その後再結成と解散を繰り返して現在に至っています。
マーク・アンデスは一旦スピリットに戻りますが、リック・ロバーツ(Rick Roberts)らとファイアーフォール(Firefall)を結成します。
ジェイ・ファーガソンはソロに転向。
ランディ・カリフォルニアはソロで活動後、1997年45歳で死去。
エド・キャシディは2012年、89歳で死去。
ジョン・ロックは2006年、62歳で死去。
私が初めてスピリットのレコードを買ったのは1973年発売の変なレコードでした。ファーストとサードがカップリングされた2枚組です。タイトルは『Spirit』です。
Record 1 Spirit
Side A
1.Fresh-Garbage
2.Uncle Jack
3.Mechanical World
4.Taurus
5.Girl in Your Eye
6.Straight Arrow
Side B
1.Topanga Windows
2.Gramophone Man
3.Water Woman
4.The Great Canyon Fire in General
5.Elijah
Record 2 Clear
Side A
1.Dark Eyed Woman
2.Apple Orchard
3.So Little Time to Fly
4.Ground Hog
5.Cold Wind
6.Policeman's Ball
Side B clear
1.Ice
2.Give a Life, Take a Life
3.I'm Truckin
4.Clear
5.Caught
6.New Dope in Town
スピリット、なんともジャンル分けの難しいバンドでした。サイケデリック、ジャズロック、プログレッシヴ。
それでは今日はこの辺で。