Flying Skynyrdのブログ

映画や音楽、本についての雑文

映画『未来を乗り換えた男』を観る

今日のキネ旬シアターは『未来を乗り換えた男』でした。

f:id:lynyrdburitto:20190211095201p:plain

 

監督:クリスティアン・ペツォールト

原作:アンナ・ゼ―ガース「トランジット」

主演:フランツ・ロゴフスキ、パウラ・ベーア、ゴーデハート・ギーズ

制作:2018年 ドイツ・フランス

 

ドイツの作家アンナ・セーガースが亡命中に執筆した小説「トランジット」をそのまま時代背景を現代に置き換えて映画化したものです。

現在のドイツにファシズムが甦り、ドイツを占領。そこから逃れフランスにやってきた元レジスタンスの青年ゲオルクが主人公。

 

ネタバレです。

 

パリのカフェ。ゲオルクは同志と話をしています。市内のホテルにいる作家ヴァイデルへ妻からの手紙を渡して欲しいと頼まれます。しかし、ホテルに行ってみるとヴァイデルは自殺していました。ゲオルクはヴァイデルのカバンを遺品として預かりました。

f:id:lynyrdburitto:20190213124414p:plain

パリは移民に対する取り調べが厳しくなっており、ゲオルクは危機感を感じ知人に亡命を依頼します。知人は大怪我をしている男ハインツを連れていくことを条件としました。ハインツと共に貨物列車に乗り、遺品のカバンの中身を確かめると、メキシコ領事館からの招待状とヴァルディの妻マリーからの手紙がありました。内容は先に預かった別れを告げるものとは逆にヴァルディを探しているという、一見矛盾するものでした。

 

マルセイユに到着すると、検問が始まり逃げようとしますがハインツは既に亡くなっていました。ゲオルクはハインツの死体を貨物列車に残したまま逃亡し、ハインツの死を知らせるために家族を訪ねます。妻はろうあ者で息子のドリスは喘息を患っていました。ハインツの死を告げると、妻は悲嘆にくれました。この母子は難民でした。

 

翌日、メキシコ領事館にヴァイデルの遺品を届けに行くと、領事はゲオルクをヴァイデルと勘違いし、小切手と出航のチケットを渡されました。ゲオルクは人違いであることを説明しようとしますが、結局受け取ってしまいます。

 

小切手を換金してドリスにサッカーボールをプレゼントしたりごちそうしたりすると、父親を亡くしたばかりのドリスはゲオルクを慕うようになりました。しかし、ゲオルクがこの町を去ろうとしていることを知ると、ドリスはゲオルクを避けるようになりました。

f:id:lynyrdburitto:20190213124525p:plain

 

ある日ドリスに喘息の発作が起き、母親がゲオルクに助けを求めてきました。不法滞在の母子は病院には行けません。ゲオルクはマルセイユに1人だけいるドイツ人の医者リヒャルトを探し当てます。そこには街で何度か見かけた不審な女性がいました。その女性こそがマリーだったのです。

f:id:lynyrdburitto:20190213124328p:plain

マリーはマルセイユで夫を探していたのでした。一時はリヒャルトとメキシコへ亡命する決心をして船に乗りますが、やはりヴァイデルに対する思いを断ち切れずすぐに下船してしまいます。一度は夫に別れの手紙を送ったが、やはり夫を探しているとの手紙を送っていたのでした。これが謎の2通の手紙でした。ゲオルクは真相を話すことが出来ません。そしてマリーに惹かれていくのでした。

 

リヒャルトもメキシコへの亡命を希望しているが、マリーとの別れがつらくて決心できないでいました。しかし、とうとう決心して徒歩で山越えをしてマルセイユを脱出する計画を立てました。しかしその無謀な計画に対し、ゲオルクは乗船券を入手し3人で亡命しようと提案します。

 

ゲオルクはヴァルディの名前で乗船券を手に入れ、出国許可を手に入れました。そのことはマリーも知りません。そして予定通り、まずリヒャルトが一人で乗船します。しかし、出航後マリーは自分はメキシコへは行かない、ヴァルディを探すと言い出します。メキシコ行きを断られたゲオルクは自分もメキシコへ行くことを悩みはじめました。するとメキシコへ向かったはずのリヒャルトが戻ってきました。船がフランスの将校たちで一杯になり無理矢理降ろされたというのです。

f:id:lynyrdburitto:20190213124808p:plain

リヒャルトはがっくり、マリーは変わらずヴァイデル探し。ゲオルクがカフェで時間を潰しているとマリーがやはり船に乗ると言ってやってきました。二人はタクシーに乗りこみ熱い抱擁を交わしました。マリーはヴァイデルも船に乗ると領事に聞いていたのでした。ゲオルクは慌てて、タクシーを止めホテルに戻り寝ているリヒャルトを起こし、マリーと2人で船に乗るように説得しました。ゲオルクはドリス親子を訪ねますが、既にいませんでした。

f:id:lynyrdburitto:20190213124626p:plain

 

二人を送り出したゲオルクはカフェでコーヒーを飲んでいます。カフェのオーナーにヴァイデルの小説の原稿を渡し預かってほしいと頼みます。その時、窓の外をマリーが歩いていきます。驚いて後を追うとして外に出ますがマリーはいません。不審に思って乗船所で確認すると、マリーたちが乗った船は機雷に接触し沈没、全委員死亡したことを知らされます。

 

カフェで放心状態になっているゲオルクはマリーの足音を聞き振り返り、そして笑顔をみせます。終わり。

関連画像

 

この映画の主題は何だったのでしょうか。ファシズムの台頭。それとも移民問題。はたまた不倫の果ての失恋ドラマ。

 

ドイツのファシストがフランスを占領し始め、ドイツ人は難民扱いで、次々に捕らえられます。時代はどうやら現代ですから、この時点であれれ、という感じ。第二次世界大戦時のフランスを現代に置き換えたのでしょうか。それにしてはスマホもPCもありません。ファシズムの恐怖もそこまで描かれていません。難民問題も正面切ってで取り上げられている感じでもありません。

 

マリーは夫を捨て、医者と不倫。しかし夫を諦めきれず、死んだとも知らず探し回る。その最中に今度はゲオルクと危ない関係に。このマリーという女は根っからの浮気者ですね。それに惑わされる3人の男。夫は別れを切り出され自殺。不倫相手の医者は、一緒にメキシコに避難するはずが裏切られ、3人目のゲオルクはやっと自分のものになったかと思ったら、マリーは夫に会えるのが理由で一緒にメキシコへ行くという。自分の素性を明かせないゲオルクはあえなく失恋。そして結末はマリーと医者が乗った船が沈没。

 

結局、他人に成りすました男の悲恋映画というのが私の結論でした。もっとも観ている方では主人公の悲しみはそれほど感じませんでしたが。

 

エンドロールでトーキング・ヘッズの「Road to Nowhere」が流れます。

 


映画『未来を乗り換えた男』予告編

 


Talking Heads - Road to Nowhere (Official Video)

 

それでは今日はこの辺で。