今日のキネ旬シアターは『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』でした。
監督:前田 哲
原作:渡辺一史
制作:2018年 日本
難病・筋ジストロフィーを患った男と、彼を助けるボランティアの姿を描いた実話です。原作は渡辺一史で大宅壮一ノンフィクション賞と講談社ノンフィクション賞を受賞した作品です。
1994年、札幌。
安堂美咲(高畑充希)は大病院のおぼっちゃま医大生・田中久(三浦春馬)と交際中ですが、田中はボランティアに忙しくなかなか会えません。そこで美咲はボランティアの現場に行ってみます。そこには多くのボランティアに囲まれた鹿野靖明がいました。鹿野は幼いころから筋肉が徐々に落ちていく難病の筋ジストロフィーを患い、動かせるのは手と首だけでした。それでも鹿野は自由奔放に生きていました。我が儘いっぱいで何でも人に頼みます。それをモットーにしています。
勘違いされて夜のボランティアをすることになった美咲に、鹿野は突然夜中に「バナナが食べたいと」言い出します。その後も成り行きでボランティアを続けますが、美咲は鹿野のわがままぶりに怒り心頭です。とうとう鹿野に「何様のつもり!」と言って出ていきます。鹿野も「もう来るな!」と怒鳴り返します。しかし、美咲を追い出したものの鹿野はその姿に一目惚れをしてしまいます。鹿野は田中に美咲へのラブレターの代筆を頼まれます。田中は美咲との関係を言い出せませんでした。
田中は人はいいのですが要領が悪く、いつも鹿野に怒られています。田中は鹿野に頼まれたデートの申し込みのラブレターを美咲に渡します。美咲は田中から頼まれ、鹿野とのジンギスカンデートに赴きます。鹿野はご機嫌で、自分の夢(英検2級をとってアメリカに行く)を話します。鹿野は調子に乗り、肉を食べすぎて下痢をおこしてしまいます。美咲が急いでトイレに連れていきますが間に合いませんでした。美咲は鹿野を慰めます。
田中と美咲は鹿野に2人の関係を言い出せませんでした。美咲は田中の家に挨拶に行くことになりましたが、自分は教育大学生ではなくフリーターであることを告白します。田中は美咲の嘘に怒って喧嘩をしてしまいます。美咲は落ち込んで、鹿野に相談します。もちろん田中のことは内緒です。鹿野は美咲を励まします。美咲は鹿野の優しさに心を開き、自分も教師になるために大学受験の勉強を始める決心をします。
そんな中、鹿野の症状は次第に悪化していきます。医師からは人工呼吸器の使用を薦められます。しかし、人工呼吸器を付ければ言葉を失います。田中はなんとか人工呼吸器をつけないですむ機器を父親に頼み込んで装備しますが、英検受験の前に鹿野は倒れてしまい結局人工呼吸器になってしまいました。
これでもう話が出来なくなると思っていたところ、美咲が人工呼吸器をつけても話が出来る方法を見つけてきました。鹿野は特訓を始めました。その甲斐あって声が出せるようになりました。鹿野は主治医に退院する、と言います。主治医は痰の吸引は医療行為で家族以外は医療従事者しかできないから無理だと言います。鹿野は「ボランティアは俺の家族だ」と言って、主治医を説得し退院します。
田中は医者としても美咲とのことについても中途半端で自信を無くし、ボランティアを辞めると言い、大学も退学を考えます。鹿野は説得しますが田中は去って行きました。
鹿野は退院記念に開かれたパーティーの席でみんなの前で美咲にプロポーズします。美咲は感激しますが、好きな人がいて、まだ決着がついていないので、と断ります。鹿野は相手が田中だと察します。ボランティアたちはパーティーの後、主治医から「今のうち好きなことをさせてあげなさい」と言われ、死期が迫っていることを知ります。
ボランティアたちは鹿野を旅行に誘います。旅行には美咲も田中も来ませんでした。旅行中、突然鹿野が倒れてしまいます。連絡を受けた田中と美咲は慌てて駆け付けます。しかし、これは鹿野が二人を引き合わせるための企みだったのです。これで二人は仲直りをしました。
7年後、鹿野は42歳で亡くなりました。ボランティアの数は延べ500人を数えました。20歳までは起きられないだろうとの予想に反して、鹿野は明るく頑張りました。
田中は医者として活躍しています。美咲は小学校の教師になりました。そして二人はめでたく結婚しました。
途中、母親が差し入れを持って訪ねてきますが、鹿野はけんもほろろに追い返します。鹿野は自分の病気せいで、母親が自分の人生を変えてしまうことに耐えられなかったのです。母親はこんな体に産んでしまったことを詫びて、一緒に自殺することまで考えていたのです。鹿野はそれを知っていました。
最後に鹿野は遺書として母親の冷たく当たったことを詫びました。母親には自分の人生を歩んで欲しかったのだと。
障害のための家族を犠牲にしたくない。そのために当初は自力でボランティアを集めたのでした。
コメディ・タッチで描かれた映画ですが、中身は感動的です。笑いと涙が交互にやってきます。途中から涙が止まらずに困りました。
この主人公の役はおそらく大泉洋にしかできなかったのではないでしょうか。このキャラクターは持って生まれたものなのか、役柄なのかわかりませんが素晴らしい演技でした。
それにしてもこのわがまま人間を支えたボランティアの人たちのやさしさには頭が下がります。それもこの鹿野靖明という人物の人間性から来るものなのでしょう。
鹿野の言葉「人間の出来ることなんて、出来ないことに比べたらほんの少ししかない。人の助けは借りなければいけない。」
原作本は読んでいませんが、 現実はもっともっと厳しいものだったのでしょう。
こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち (文春文庫 わ)
- 作者: 渡辺一史
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2013/07/10
- メディア: 文庫
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それでは今日はこの辺で。