ザ・バーズよりも早くフォークロックをヒットさせたと言われた、ボー・ブラメルズ(The Beau Brummels)です。たしかに彼らのファースト・シングルで大ヒットした「Laugh, Laugh」は1964年のリリースで、バーズの「ミスター・タンブリンマン」より早かったのです。しかしこの曲は私のように、後追い世代が聴くと、ブリティッシュ・ビートとしか聴こえません。もしかししてイギリスのバンド?と当時思った人もいるのではないでしょうか。
ボー・ブラメルズの結成は1964年です。メンバーはサル・ヴァレンティノ(SalValentino,vo)と幼馴染のロン・エリオット(Ron Elliott,g,vo)が中心になり、ロン・ミーファー(Ron Meagher,b)、デクラン・マリガン(Declan Mulligan,g)、ジョン・ピーターセン(John Petersen,ds)が参加して始まりました。
彼らはオータム・レコードと契約し、早速シングル「Laugh, Laugh」をレコ―ディングしました。プロデュすーがなんと後のスライ&ザ・ファミリー・ストーンのスライ・スチュワート(Sly Stewart)でした。これが大ヒットしたわけです。
1965年にはファーストアルバム『Introducing the Beau Brummels』をリリースします。
このアルバムは全米でも24位を記録します。この中からもう1枚のシングル「Just A Little」が8位となる、これまた大ヒットとなりました。
そしてすかさず、セカンドアルバム『The Beau Brummels, Vol. 2 』をリリースします。
このアルバムの録音前にはデクラン・マリガンがバンドを去りました。このアルバムはチャート入りを果たせませんでした。プロモーション不足が祟ったものと思われます。
この後オータム・レコードが倒産し、ワーナー・ブラザースに移籍しました。
1966年にはサードアルバム『Beau Brummels '66』がリリースされます。
ワーナー移籍後初のアルバムです。このアルバムは全曲カバーでした。ビートルズやディラン、サイモン&ガーファンクル、ローリング・ストーンズなどです。オータム・レコードには多くの未発表曲がありましたが、ワーナーは権利を持っておらず、やむを得ずカバーソング集にしたのです。
一時的にバンドに加わっていたドン・アーヴィング(Don Irving,g,vo)は徴兵でバンドを去り、ジョン・ピーターセンはハーパーズ・ビザールに参加するためバンドを離れました。
3人になったバンドは1967年、4枚目のアルバム『Triangle』をリリースします。
3人になったメンバーは多くのスタジオミュージシャンと共にサイケデリックなサウンドを作り上げました。ヴァン・ダイク・パークスやジム・ゴードン、ジェイムス・バートンなども参加しました。このアルバムはビルボードの197位とさして振るいませんでしたが、評価は高いものを得ました。
そして今度はロン・ミーファーが徴兵のため退団します。結局二人になってしまったロン・エリオットとサル・ヴァレンティノはデュオでバンドを継続させます。
そして1968年に5枚目のアルバム『Bradley's Barn』をリリースします。これが実質上のラストアルバムになりました。
Side A
1.Turn Around
2.An Added Attraction
3.Deep Water
4.Long Walking Down to Misery
5.Little Bird
6.Cherokee Girl
Side B
1.I'm a Sleeper
2.Loneliest Man in Town
3.Love Can Fall a Long Way Down
4.Jessica
5.Bless You California
プロデュースはレニー・ワロンカー(Lenny Waronker)です。
その他のミュージシャンとして
ノバート・プットナム(Norbert Putnum,b)
ケニー・バトレー(Kenny Butterey,ds)
ジェリー・リード(Jerry Reed,g)
デヴィッド・ブリッグス(David Briggs,key)
ハロルド・ブラッドリー(Harold Bradrey,g)
ウェイン・モス(Wayne Moss,g)
このアルバムは前作同様サイケデリックな音に加え、カントリーロックの要素も含んだ、アメリカンロックにとって貴重なアルバムとなりました。このアルバムのリリースが1968年の10月、バーズの「ロデオの恋人」が9月です。この2枚によってカントリーロックはスタートしたと言ってもよいでしょう。しかし、このアルバムは完全に「ロデオの恋人」の陰に隠れてしまいました。
ボー・ブラメルズはアメリカン・ロックにとって重要なバンドでしたが、フォークロックにしても、サイケデリックロックにしても、カントリーロックにしてもなぜか過小評価されてきました。ちょっとづつ早かったのかもしれません。
このアルバムリリース後、バンドは遂に解散します。その後サル・バレンティのはストーングラウンド(Stoneground)を結成します。そのあたりは以前書いていますので参考にしてください。
ロン・エリオットはソロに転向します。その後1973年に『Pan』というバンドを結成、同名のアルバムを1枚発表します。これはフォークロックの隠れた名盤です。
1974年にバンドはオリジナルメンバーで再結成しアルバム『The Beau Brummels』を発表しました。
このアルバムではレニー・ワロンカーとテッド・テンプルマン(Ted Templeman)がプロデュースしました。ニック・デカロやマーク・ジョーダン、ロニー・モントローズまで参加しました。
しかし、アルバム発表後に再び解散しました。
サル・ヴァレンティノのヴォーカルは好き嫌いがあるでしょうが、このバンドはもっともっと評価されてもおかしくないバンドでした。
The Beau Brummels - Laugh Laugh (1965)
The Beau Brummels - 01 - Turn Around (by EarpJohn)
The Beau Brummels - 10 - Jessica (by EarpJohn)
それでは今日はこの辺で。