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映画『ビリーブ 未来への大逆転』を観る

今日のキネ旬シアターは『ビリーブ 未来への大逆転』でした。

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監督:ミミ・レダ

主演:フェリシティ・ジョーンズアーミー・ハマージャスティン・セロー

制作:2018年 アメリカ 2019年 日本公開

 

86歳になった現在もアメリカ合衆国最高裁判事を務めるルース・ベイダー・ギンズバーグの伝記的映画です。性差別と闘った裁判の実話です。

 

例によってネタバレです。

 

1956年、ルースはハーバード大学法科大学院に入学しました。彼女は弁護士を目指していましたが、500人の学生のうち女性はたった9人です。女子トイレもありません。授業での発言も無視されます。女子だけを招いた教授のパーティでは女性が男子を押しのけて法科大学院に入学した理由を聞かれ、教授からは悉く貶されます。それでも彼女は我慢しました。

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彼女は既に結婚しており、同じ大学で学ぶ夫のマーティンとの間に娘も生まれ、忙しい毎日を送っています。そんな時、夫に癌が見つかり、夫の看病と自分の勉強と彼の授業のノート取り、そして娘の世話とを一手に引き受け益々多忙になりました。彼女の献身もあって、やがてマーティンの癌は寛解し、ニューヨークの法律事務所に就職が決まりました。

 

ルースも当然付いていくために、コロンビア大学へ移籍しました。コロンビア大学では首席で卒業し、論文も評価されました。にも拘わらず、希望する法律事務所には採用されませんでした。理由は母親がユダヤ人であることと、彼女が女性だからでした。止む無くラトガース大学での教職の道を選びました。大学では性差別についての講義をします。

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1970年代になると、世の中はベトナム戦争反対運動が盛んになり、娘も社会問題に興味を持ち始め、反抗期になり上手くいきません。マーティンと出席したパーティーではマーティンの上司から侮辱されたと、マーティンと言い争いになります。自分は弁護士になりたかったのだと、本音を吐きます。 

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そんなルースの思いを知ったマーティンはある案件を持ち出しました。それはある男性が親の介護費用の所得控除が未婚の男性であるという理由で認められなかったというものです。ルースはここに潜む性差別の問題に興味を持ち、控訴することを決めます。これが性差別を変えるきっかけになるのではと考えたのです。

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ルースはアメリカ人権協会の知人メル・ウルフに協力を依頼しますが、あっさり断られます。ルースは尊敬する女性弁護士で女性権利獲得の活動家ドロシー・ケニヨンに会いに行き、弁護を依頼しますが、彼女もまた興味は持ってくれたものの、社会がまだ受け入れない、時期尚早だと首を縦には振りませんでした。

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帰りがけ、一緒に行った娘がある男から暴言を吐かれたのに対し、娘は怒鳴り返したのでした。それを見たルースは時代が変わったことを確信したのです。ルースは再び決意し趣意書を作成し、ケニヨンに送ります。ケニヨンはメルに協力するよう依頼し、メルも協力することになりました。

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メルは裁判経験のないルースに対し模擬裁判を開くことを提案します。しかしルースの弁論は上手くいきません。メルはマーティンとの共同弁論を提案します。相手側の弁護士からは膨大なる趣意書が送られてきました。そしてたった1ドルで和解を提案してきたのです。ルースは原告と話し合い、賠償金全額の支払い及び判決は男女差別であることを認めるという和解案を提案しますがそれは却下され、メルの説得も断り、いよいよ裁判へ。

 

そして裁判当日。ルースの弁論は上手くいきません。心配したマーティンは代わりに自分が弁論をしようとしますが、ルースがそれを抑え、反論を開始します。これまで100年間の性差別の判例を示し、これらがいかに誤った判例だったかを問います。100年前だったら、自分はここに立っていられなかった。100年前と明らかに時代は変わったのだということを示します。時代の変化に合わせ、法律も変えるべきだと主張します。法律が進化していく社会を止めてはいけないと訴えます。

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結果は、100%負けると思われていた裁判でしたが勝訴したのです。

 

ルースはこれ以降も男女差別解消のために弁護士として活躍し、現在はアメリ最高裁判事として活躍しています。長女はコロンビア大学法科大学院の教授、息子は音楽プロデューサーとして活躍しています。夫は2010年に亡くなりました。ラストでは現在のルース・ギンズバーグ本人が登場して終わります。

 

1970年代、アメリカでは男性が働き、女性は家事・育児が当然だったようです。よって、親の介護は女性の仕事。男性が介護しても、その費用は税額控除には当たりません。今考えれば理不尽な法律です。しかし、当時は全然違和感が無かったのでしょう。

ちょっと前までの日本でも男性は外で仕事、女性は家事という棲み分けが社会的に出来上がっていました。最近では女性の社会進出が当然となって、男性も家事・育児を担う傾向が増えてきています。それでもまだまだ男女間の古い風習は依然として根強く残っているような気がします。

社会が変化していくのには長い年月が必要です。しかし、ここにきて急速にその意識が変わりつつあるような気がします。その社会意識の変化に社会のシステムが追い付いていないというのが現状のようです。女性活躍社会と旗を振っても、女性の管理職、政治家は未だに少ない。大学医学部試験の男女差別、待機児童の問題、育児休暇の取得率の差、その他などなど。

 

この映画のルースのようなフロントランナーの出現がアメリカでの性差別の問題の解消につながった一因であると思います。日本でも1970年代にウーマンリブ運動という女性解放闘争が一時期盛んになりました。これは当時の若者の政治活動を背景に出現したものでした。これによって女性への性差別は見直された面もありましたが、その後は学生運動の消滅とともに政治の季節は終わり、ウーマンリブ運動も下火になってしまいました。

あれから4~50年が経ち、未だに性差別の問題は色濃く残っています。それだけ社会システムが変わっていくのには膨大な時間が必要なのでしょう。そろそろ日本でも女性リーダーが登場してもよい時代なのではないでしょうか。

 


映画『ビリーブ 未来への大逆転』予告編

 

 

それでは今日はこの辺で。