Flying Skynyrdのブログ

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映画『12か月の未来図』を観る

今日のキネ旬シアターは『12か月の未来図』でした。

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監督:オリヴィエ・アヤシュ=ヴィダル

主演:ドゥニ・ポダリデス、レア・ドリュッケール、アブドゥライエ・ディアロ

制作:2017年 フランス 2019年日本公開

 

フランス・パリ郊外の中学校に派遣されたベテラン教師と生徒たちとの交流を描いた映画でした。

 

フランスの名門アンリ4世高校で国語を教えるベテラン教師フランソワ・フーコーは父が国民的作家、妹は彫金作家として活躍するブルジョア一家で育ちました。彼の授業風景は貶す時は徹底的に貶し、褒める時はそれなりに褒めるというものでした。それは名門校であるが故に通用する指導方法でもありました。

 

ある日、フランソワは父のサイン会で教育論を語り、「教育格差をなくすには問題のある学校にベテラン教師を派遣すればよい」という旨の発言をします。そのサイン会にある美女が出席していてその話を聞きました。彼女は国民教育省で教育の専門家でした。彼女はその話を聞き、後日フランソワにパリ郊外にあるバルバラ中学へ1年間の派遣を依頼します。官房長まで同席し断るに断れず引き受けてしまいます。

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フランソワが現地を訪れると、なにやら不気味な光景が広がります。そして赴任先の中学校へ行ってみると、教師などお構いなくおしゃべりを続け、若手教師たちは問題児はさっさと退学させるべき、という考えが多くを占めていました。

「映画12か月の未来図」の画像検索結果初めての授業では、試しに書き取りのテストをしましたが結果はひどいものでした。初日から想像以上の出来事にフランソワはそれまでの価値観が覆させられる思いでした。それまでフランス人しか相手にしてこなかったのに、ここでは様々なルーツを持つ移民たちがいっぱいです。名前を読み上げるのにも一苦労です。しかし、フランソワはベテラン教師の意地を見せ、一晩で生徒たちの名前と顔を一致させようと頑張るのでした。

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クラスには問題児が多く、中でもセドゥという男の子は反抗的でした。トラブルを繰り返すセドゥは退学候補者の一人でした。しかし、彼は愛する母親が病気がちで精神が不安定なのでした。ここで退学になったら二度と這い上がってこれないかもしれません。フランソワは使命感で彼を見守りました。

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移民、貧困、教育格差などパリの学校と全く違う環境では、これまでのパリでの教育は通用しないと感じたフランソワは彼らの意識改革を実行します。そして彼らに自分の能力を信じさせようとしました。勉強なんて意味がないと無気力に陥っていた彼らもフランソワの熱意によって次第に知的好奇心を取り戻し、自分の能力を信じられるようになってきました。そして『レ・ミゼラブル』を読みこなせるまでに成長しました。他の教科でも成績が上がり、生徒の心が掴めずに悩んでいた教師クロエはフランソワを好意以上の眼差しでみるようになりました。しかし、彼女には同じ教師仲間の婚約者がいました。

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そんなある日、遠足で訪れたベルサイユ宮殿でセドゥがトラブルを起こしてしまいます。指導協議会で猶予無しの退学を命じられてしまいます。フランソワは大切な教え子の未来を守るために校長に直談判しますが受け入れられません。フランソワは法律を徹底的に研究し、今回の退学処分には瑕疵があることを突き止め、再び好調に談判します。校長は渋々退学を撤回します。

f:id:lynyrdburitto:20190619133019p:plainしかしセドゥは登校しません。フランソワが探しに行くと、セドゥは悪い仲間たちと一緒でした。フランソワが学校へ行こうと誘っても仲間たちと共に行ってしまいます。その後、授業中に学年主任が「新入生を連れてきました」と言って一人の生徒を連れてきました。それはセドゥでした。

 

そして終業式の日、卒業生たちは合唱し、父兄たちも大喜びでした。フランソワにも別れの日が来ました。淡い恋心を抱いたクロエも婚約者とカナダに旅立ちます。辛い別れでした。そしてセドゥも1年生の時から好きだったマヤに振られてしまいました。

 

その二人がベンチに腰掛け、セドゥが「やっぱり高校に戻るの?」と尋ねます。「どうして?」とフランソワが聞くとセドゥは「言いたくないけど言っちゃうね。寂しくなる」と応えます。フランソワは微笑み「来年は全教科とも頑張るんだぞ。よし、みんなと遊んで来い」と言って送り出します。

 

移民なのでまともにフランス語も出来ない子がいる中で、それまで優等生しか扱ってこなかった先生と学力が相当落ちる生徒たちの交流がユーモアを交えながら描かれていて心温まる映画でした。フランソワのお茶目な面や恋に身悶えするエリート先生の人間性も現れていて楽しめました。

 

フランスの貧困問題も深刻なようです。特に移民が多いフランスでは大きな問題となっているようです。貧困が学歴格差を生み、さらに貧困を生むという悪循環が繰り返されます。フランス以上に貧困率が高い日本でも深刻な問題です。なかでも子供の貧困率は「7人に1人」と言われるほどです。早急な対策を施さないと日本社会は崩壊に至るのではないでしょうか。最近話題になっている老後の不足資金問題ももっともっと議論を進めなければいけません。近年の日本政府はどこを見て政治を行っているのかよくわかりません。

100年以上前に予見された資本主義の行き着く先はこれだったのでしょうか。

  

ラストでは何故かメリー・ホプキン「悲しき天使(Those Were The Days)」が流れます。これも私にとっては思い出の1曲です。メリー・ホプキン素晴らしい!

 


【映画 予告編】 12か月の未来図


悲しき天使/メリー・ホプキン Those Were The Days/Mary Hopkin

 

 

それでは今日はこの辺で。