最近トリビュートアルバムの記事を書く機会が多くなっていて、様々書いてきましたが、他に誰か忘れていないかな、と思っていたら肝心な人を忘れていることに気がつきました。随分古い話ですが、1992年にボブ・ディラン(Bob Dylan)のデビュー30周年を記念したライブアルバムが発売されました。それをすっかり忘れていましたので、ここで取り上げて見たいと思います。
ボブ・ディランについてはこのブログでも何度出てきたかわからないほどですので、本人のことはさておき、出演者を中心に書きたいと思います。
この出演者の顔ぶれを見るとボブ・ディランの偉大さがわかります。興味は誰がどの曲を取り上げるかですね。
アルバムタイトルは
『The 30th Anniversary Concert Celebration』です。
1992年10月16日、ニューヨーク・マジソン・スクエア・ガーデンでのライヴ。
Disc 1
01. Like a Rolling Stone-John Mellencamp
02. Leopard-Skin Pill-Box Ha-John Mellencamp
03. Introduction-Kris Kristofferson
04. Blowin' in the Wind-Stevie Wonder
05. Foot of Pride-Lou Reed
06. Masters of War-Eddie Vedder and Mike McCready of Pearl Jam
07. The Times They Are A-Changin-Tracy Chapman
08. It Ain't Me Babe-June Carter Cash and Johnny Cash
09. What Was it You Wanted?-Willie Nelson
10. I'll Be Your Baby Tonight-Kris Kristofferson
11. Highway 61 Revisited-Johnny Winter
12. Seven Days- Ronnie Wood
13. Just Like a Woman-Richie Havens
14. When the Ship Comes In-The Clancy Brothers, Robbie O'Connell and Tommy Makem
15. You Ain't Going Nowhere-Mary Chapin Carpenter, Rosanne Cash and Shawn Colvin
Disc 2
01. Just Like Tom Thumb's Blues-Neil Young
02. All Along the Watchtower-Neil Young
03.-I Shall Be Released-Chrissie Hynde
04.-Don't Think Twice, It's All Right-Eric Clapton
05. Emotionally Yours-O'Jays
06. When I Paint My Masterpiece-The Band
07. Absolutely Sweet Marie-George Harrisons
08. License to Kill-Tom Petty & the Heartbreakers
09. Rainy Day Women#12 & 35-Tom Petty & the Heartbreakers
10. Mr. Tambourine Man-Roger McGuinn with Tom Petty & the Heartbreakers
11. It's Alright, Ma (I'm Only Bleeding)-Bob Dylan
12. My Back Pages-Bob Dylan, Roger McGuinn, Tom Petty, Neil Young, Eric Clapton and George Harrison
13. Knockin' on Heaven's Door-Everyone
14. Girl from the North Country-Bob Dylan
Disc 1-1と2はジョン・メレンキャンプです。昔のジョン・クーガーです。取り上げたのは「ライク・ア・ローリングストーン」と 「ヒョウ皮のふちなし帽」です。「ライク・ア・ローリングストーン」はいろいろな人が取り上げていますが、私個人としてはオリジナルを超えるカバーは無いと思っていますので、このカバー・バージョンもパワフルでオリジナルに忠実に歌っていていいのですがオリジナルには及びません。アル・クーパーがオルガンで特別参加しています。
アルバムのもう1曲の「ヒョウ皮のふちなし帽」はソウルフルでディランをまねたような歌い方で好演です。
Disc 1-4は「風に吹かれて」をスティーヴィー・ワンダーです。まさに熱唱です。素晴らしい演奏です。スティーヴィー・ワンダーもこの歌をかつてレコーディングしています。バックはブッカーT&The MG'sです。
Disc 1-5はルー・リードで「フット・オブ・プライド」です。この曲はもともとあるアバム『インフィデルズ(Infidels)』のためにレコーディングされましたが、結局未収録になりました。その後『ブートレグシリーズ1~3』で紹介されました。ルー・リードらしい歌い方で、まさに熱唱です。バックはブッカーT&The MG'sとジム・ケルトナーです。
Disc 1-6は「戦争の親玉」をパール・ジャムのエディ・ヴェダーとマイク・マクレディが歌います。アコースティック・ギターの演奏です。マンドリンでG・E・スミスが参加しています。
Disc 1-7は「時代は変る」をトレイシー・チャップマンです。アフリカ系の女性シンガー・ソングライターです。ここもアコギ1本の演奏です。トレイシーはディランともコンサートを共にしたりしていました。
Disc 1-8はジューン・カーター・キャッシュとジョニー・キャッシュです。ジューンはジョニー・キャッシュの2番目の奥さんです。歌うは「悲しきベイブ」です。カントリーになるのは当然ですが、ここまでのアレンジには驚きました。そういえばジョニー・キャッシュはアルバム『ナッシュビル・スカイライン』でも「北国の少女」をディランとデュエットしていました。
Disc 1-9はウィリー・ネルソンです。歌うは「ホワット・ワズ・イット・ユー・ウォンテッド」です。アルバム『オー・マーシー』からですが、ウィリーもこの曲を自身のアルバムにレコーディングしています。いかにもディランらしい曲です。ベースはドン・ウォズ、ドラムがジム・ケルトナー、ギターがレジー・ヤング、オルガンがベンモント・テンチです。
Disc 1-10はクリス・クリストファーソンです。曲はアルバム『ジョン・ウェズリー・ハーディング』から「アイル・ビー・ユア・ベビー・トゥナイト」です。メンバーがそのまま残っての演奏です。カントリータッチでご機嫌に歌っています。
Disc 1-11はジョニー・ウィンターです。曲は「追憶のハイウェイ61」です。かつてウィンターはこの曲を録音していました。ステージにはMG'sのスティーヴ・クロッパーとG・E・スミスとのトリプルギターです。その他ブッカーT&The MG'sのメンバー参加。
Disc 1-12はロン・ウッドです。この「セヴン・デイズ」はディラン自身はレコーディングしませんでしたが、ロン・ウッドが自身の1979年のアルバム『ギミ・サム・ネック』に収録しました。実にカッコいい曲です。ブッカーT&The MG'sとジム・ケルトナー参加。
Disc 1-13は「女の如く」をリッチー・ヘヴンスが演じます。これもリッチーがかつてレコーディングした曲です。リッチー・ヘヴンスと言えばウッドストック・コンサートで一躍有名になったフォークシンガーです。ここでもアコギ1本で頑張っています。
Disc 1-14はアイリッシュ・フォークのクランシー・ブラザーズです。曲は「船が入ってくるとき」です。トミー・メイケムとロビー・オコンネルが特別参加しています。いかにもアイリッシュ・フォークらしいアレンジです。
Disc 1-15はロザンヌ・キャッシュ、メアリー・チェイピン・カーペンター、ショーン・コルヴィンの3人の組合せです。ロザンヌはジョニー・キャッシュの娘です。メアリーについては以前記事にしています。ショーンについてもどこかで書いたと思います。曲は「どこにも行けない」です。この曲はザ・バーズのアルバム『ロデオの恋人』に収録されていました。ディラン自身もアルバム『地下室』に収録しています。
Disc 2-1と2にはニール・ヤング登場。曲は「親指トムのブルース」と「見張塔からずっと」です。バックはブッカーT&The MG'sとドラムにジム・ケルトナーです。「見張塔からずっと」はジミ・ヘンドリックスやデイヴ・メイソンの他多くのミュージシャンにカバーされた曲です。ニールのギターが唸ります。ニール・ヤングも以前どこかのライヴで取り上げていたような気がします。
Disc 2-3はプリテンダーズのクリッシー・ハインドです。キーボードでブルース・ブラザースのポール・シェイファーが参加。曲は「アイ・シャル・ビー・リリースト」。ザ・バンドでも有名な曲。バックはブッカーT&The MG'sとジム・ケルトナー、さらにバックヴォーカルでシェリル・クロウも加わっています。
Disc 2-4はエリック・クラプトン登場。曲は「くよくよするなよ」です。このアレンジには驚かされます。スローブルースに仕上がりました。お互いにコンサートではよく顔を合わせていて、クラプトンのアルバムにもディランが参加していました。バックはブッカーT&The MG'sとジム・ケルトナーです。
Disc 2-5はオージェイズです。曲は「エモーショナリー・ユアーズ」です。アルバム『エンパイア・バーレスク』からの曲ですが、彼らもこの曲でヒットにつながりました。まったくのソウルナンバーになっています。バックはブッカーT&The MG'sとジム・ケルトナーです。
Disc 2-6はいよいよザ・バンドです。但し、ロビー・ロバートソンとリチャード・マニュエルはいません。曲は「マスターピース」です。ザ・バンドも彼らのアルバムでカバーしています。ディランの『グレーテスト・ヒット 2』に収められています。この日のザ・バンドはドラムにジム・ケルトナー、ベースにMG'sからドナルド”ダック”ダン、ギターにG・E・スミスが加わっています。
Disc 2-7はジョージ・ハリソン登場です。2人の付合いは長いです。「バングラディッシュのコンサート」でもディランが参加していますし、トラヴェリング・ウィルベリーズでは同じバンドメンバーでした。曲は「アブソリュートリー・スイート・マリー」です。名盤『ブロンド・オン・ブロンド』から。ジョージは既に亡くなっています。
Disc 2-8と9はトム・ペティ&ハートブレイカーズです。トム・ペティもトラヴェリング・ウィルベリーズのメンバーです。曲は「ライセンス・トゥ・キル」と「雨の日の女」です。残念ながらトム・ペティもこの世を去りました。最高の演奏を聴かせてくれました。ベースにMG'sからドナルド”ダック”ダン、ドラムにジム・ケルトナー参加。
Disc 2-10は満を持してロジャー・マッギン登場です。曲は当然ながら「ミスター・タンブリン・マン」です。この曲でザ・バーズは一躍スターになりました。そしてディランのフォークロックが世に認められました。記念すべき曲です。バックはトム・ペティ&ハートブレイカーズです。ザ・バーズ時代を彷彿とさせます。
Disc 2-11はいよいよボブ・ディラン本人の登場です。歌うは「イッツ・オールライト・マ」です。アコギ1本の演奏です。
続いてはディラン、マッギン、トム・ペティ、ニール・ヤング、クラプトン、ジョージ・ハリソンが次々に「マイ・バック・ペイジス」を歌います。実はこの曲が初期のザ・バーズの最高傑作だと勝手に思っています。オルガンでアル・クーパー、ベースでドナルド”ダック”ダン、ギターでG・E・スミスが参加。
Disc 2-13は全員による「天国への扉」です。ボブ・ディランのソロから始まり、全員で合唱します。最高の盛り上がりです。
アンコールは「北国の少女」です。アコギ1本で歌い上げます。
2014年にこの時の模様がDVDになりました。またボーナストラック2曲を付けたCDも発売されました。
30th Anniversary Concert Celebration/ [DVD]
- アーティスト: Bob Dylan,Highway 61
- 出版社/メーカー: 株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント
- 発売日: 2014/03/04
- メディア: DVD
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この日、実際には39曲が演奏されたそうです。ジョージ・サラグッドやナンシー・グリフィス、ソフィー・ホーキンス、ジョン・ハモンドJr.も出演していましたがカットされています。さらにクラプトンやジョージの楽曲もカットされています。残念です。その内完全盤が出るのではないかと思っています。
その他、ディランの伝記映画『I'm Not There』というサウンドトラック盤が出ています。こちらも30人ほどが参加したトリビュートアルバムになっています。もちろんDVDも出ています。
I'm Not There (Music From The Motion Picture)
- アーティスト: オリジナル・サウンドトラック
- 出版社/メーカー: Columbia/Sony Music Soundtrax
- 発売日: 2010/04/01
- メディア: MP3 ダウンロード
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あれから時が経ち、ディランもノーベル賞などもらってしまいました。デビュー60周年もありそうです。恐ろしいことです。
6000文字を超えてしまいました。
The 30th Anniversary Concert Celebration - Don't Think twice it's all right with E. Clapton
Neil Young with Booker T And The M G 's All Along The Watchtower
George Harrison Absolutely Sweet Marie Dylan Anniversary
それでは今日はこの辺で。