『死んだ男の残したものは』
作曲:武満 徹
作詞:谷川 俊太郎
死んだ男の残したものは
ひとりの妻とひとりの子ども
他には何も残さなかった
墓石ひとつ残さなかった
死んだ女の残したものは
しおれた花とひとりの子ども
他には何も残さなかった
着もの一枚残さなかった
死んだ子どもの残したものは
ねじれた脚と乾いた涙
他には何も残さなかった
思い出ひとつ残さなかった
死んだ兵士の残したものは
こわれた銃とゆがんだ地球
他には何も残せなかった
平和ひとつ残せなかった
死んだかれらの残したものは
生きてるわたし生きてるあなた
他には誰も残っていない
他には誰も残っていない
死んだ歴史の残したものは
輝く今日とまた来るあした
他には何も残っていない
他には何も残っていない
この曲は、1965年、まさにベトナム戦争真只中に創られた日本の反戦歌です。
最初に歌ったのは声楽家の友竹正則だったようですが、私が初めてこの曲を聴いたのは以前にも紹介した高石 友也先生でした。アルバム『想い出の赤いヤッケ 高石友也フォーク・アルバム』に収録されていた曲です。
初めて聴いたのはおそらく1967~8年頃だったと思います。まだよく意味も分からず聴いていたのでしょう。その後、高校生になってから、学生運動にも興味が出た頃によく聴いていました。1969年の加山雄三の映画『弾痕』の挿入歌にもなりました。高石友也でもバージョンがいくつかあります。ここにあげたのはギター1本のシンプルなバージョンです。高石バージョンはなぜか最後の詩は歌われません。
想い出の赤いヤッケ 高石友也 フォーク・アルバム第1集(+4)
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次に聴いたのが、森山 良子バージョンです。当時フォークの女王などと呼ばれていた彼女の当時のベストアルバムに収録されていました。なぜこのLPが我が家にあるのかは謎です。ちょっときれい過ぎますか。いかにもフォークソングです。
次は以前に紹介したカルメン・マキです。彼女の1970年の3枚目のアルバムで、フォーク時代の最後のアルバム『想い出にサヨナラ “カルメン・マキ'70" 』に収録されました。フォーク時代の彼女もいいですね。声が美しい。この後は以前にも紹介したカルメン・マキ&OZで活躍します。
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次は、これも以前紹介した大好きな石川 セリです。1995年のアルバム『翼 武満徹ポップ・ソングス 』に収録されました。何でこの時代に、この曲をカバーしたのでしょう。武満徹へのトリビュートということで取り上げたのでしょうか。ボサノヴァ調でいい感じです。詩の重みとは別に曲調を楽しめるアレンジです。
そして倍賞 千恵子です。昔から彼女の歌唱力には一目置いていました。女優としても素晴らしいですが、歌手としても超一流だとと思っています。その彼女が2枚組のベストアルバム『GOLDEN☆BEST/倍賞千恵子 まるで映画のひとこまのように・・・ 』の中で歌っています。このアルバムはその他の楽曲も素晴らしく、大のお気に入りです。
大変残念ながら映像がありません。
最近になって小室 等が歌っています。大昔にリリースした『プロテストソング』の続編『プロテストソング2』を2017年にリリースしました。その中に収められました。彼自身も当時のフォークソングブームの立役者として、現代社会に対する危機感を感じ取っているのだと思います。
この『死んだ男の残したものは』は詩にある通り直接的な反戦歌です。このような歌が大手を振って受け入れられた時代でした。再びこのような時代が来ることが無いようにと願いを込めて作られた歌だったはずでしたが、またしても同じことが繰り返される危険性が感じられるここ最近です。
それでは今日はこの辺で。