Flying Skynyrdのブログ

映画や音楽、本についての雑文

映画『月はどっちに出ている』を観る

今日のキネ旬シアターは『月はどっちに出ている』でした。

 監督:崔 洋一

主演:岸谷 五郎  ルビー・モレノ

原作:梁 石日

1993年公開

 

例によって何の予備知識もなく観に行きました。観るまえに解説で原作が梁石日だと知りました。原作は『タクシー狂躁曲』です。

タクシードライバー在日朝鮮人とフィリピン・パブの女性との不思議な恋愛を中心に中小タクシー会社に勤める風変わりな連中の日常を、面白おかしくそして切なく描いた映画です。

今から20数年前の映画なので当時の風俗とか服装とかが懐かしく見られました。今テレビで活躍している俳優もたくさん出演していて、みんな若いです。そういえば初め気が付かなかったのですが、途中で、あれ、内藤陳?と思ってよく見てみるとやはりそうでした。嬉しかったですね。まさかこんなところでお目にかかれるなんて思ってもみませんでしたから。放送禁止用語もポンポン飛び出して、やっぱり映画はいいななんて思ったりしました。

エンディング・テーマは憂歌団です。これがまた切なくていいんです。

実は10数年前に梁石日の小説にのめり込んだ時期があったのですが、残念ながら「タクシー・シリーズ」は1冊も読んでいませんでした。

梁の小説を最初に読んだのが『血と骨』でした。これは強烈でした。気持ちが悪くなるくらい面白かったです。途中で読むのを止めようかと思うくらい、父親の狂暴さ、強欲さが見事に表現されていて、まさに息をつかせぬとはこういうことだな、なんて感心したことを憶えています。そういうことで梁の小説に関しては、この『血と骨』系統の小説を探して読みました。『族譜の果て』『夜の河を渡れ』『断層海流』『夜を賭けて』『表と裏』『闇の子供たち』『睡魔』など、どちらかというとピカレスク風な小説ばかりでした。「タクシーシリーズ」はちょっと違うのかなと思い敬遠していました。

映画の初めに「この映画は実話に基づいたフィクションです。」と映し出されました。ということは、『血と骨』も伝記的小説という事だったので、『血と骨』に出てくる少年がこのタクシードライバーということになります。う~ん、何かイメージが違うな。もっと暗かったような記憶がありますが、もう10年以上前のことですからあてになりません。ましてや今の記憶力じゃ。

いずれにしてもこの主人公、在日だなんていうことを全く気にせず、明るく、力強く生きています。当時の在日朝鮮人やその他の在日外国人に対する日本人の考えや行動が垣間見えて、今でもそんなに変わってないな、なんて思ったりしました。

なお、崔洋一はこの映画は日本アカデミー賞最優秀監督賞を受賞しています。その他多くの賞を獲得しています。

同じく崔洋一監督で『血と骨』も映画化されましたが。観に行きませんでした。主演を誰が演じても小説以上の人物表現は難しいだろうと思ったからです。小説のイメージを壊したくなかったのです。実際はビートたけし主演でした。