Flying Skynyrdのブログ

映画や音楽、本についての雑文

『ブーベの恋人』 に再会

先日、CS放送の番組表を見ていたら『ブーベの恋人』の放映予定があることがわかりました。早速録画予約して観ました。約40数年ぶりの再会です。

監督:ルイジ・コメンチーニ

主演:クラウディア・カルディナーレ ジョージ・チャキリス

音楽:カルロ・ルスティケリ

1963年製作・公開(日本公開 1964年)

 

1963年というと、この年、カルディナーレはヴィスコンティの『山猫』、フェリーニの『8 1/2』に出演しています。まさに絶好調の時です。私の大好きな女優でした。

ジョージ・チャキリスはご存知『ウエストサイド物語』です。

音楽のカルロ・ルスティケリは『鉄度員』や『刑事』『誘惑されて棄てられて』など映画音楽の名曲が多く、この『ブーベの恋人』のメインテーマは哀愁漂う名曲です。この映画は知らなくても、この曲を聴けば知ってるという人は多いのではないでしょうか。日本でもザ・ピーナッツいしだあゆみがカバーしています。

 

話の方はというと、イタリア・パルチザンの兵士で戦死したマーラ(カルディナーレ)の兄のところへ、同志だったブーベ(チャキリス)が悔やみを伝えに来て、そこでマーラと知り合うというところから、マーラの現在からの回想が始まります。

マーラとブーベは愛し合うようになり、やがてブーベの故郷へと一緒に向かいます。ところがブーベはちょっとした諍いでファシストの准尉とその息子を殺害してしまっていたのです。追われる立場のブーベはマーラと隠れ家に身を隠しますが、仲間の手引きで国外へと逃亡することになりました。一人残されたマーラは故郷に戻りますが、そこも居づらく、家を出て働くことにしました。そこでマーラは友人の紹介でステファノという男と知り合います。ステファノは一目でマーラを気に入り、求婚します。しかしマーラは婚約者がいるから駄目だと断りますが、次第に彼のやさしさに惹かれ苦しみながらも、彼との結婚も考え始めます。そうした中、ブーベが逃亡先のユーゴスラヴィアを追われ、イタリア国内で逮捕されてしまいます。その報を聞いて、マーラはブーベに面会に行き、久しぶりの対面をします。そこでブーベに「君だけが頼りだ」と告げられ、マーラはブーベには自分しかいない、自分がブーベを支えるという強い決心をします。そして裁判が開かれ、予想外の14年の重刑が言い渡されます。

そして、場面は戻って、刑に服して7年目の現在、刑務所に2週間おきに向かう列車の中に戻ります。

途中駅でかつての恋人、ステファノに出会います。彼の指には結婚指輪がはめられていました。彼は挨拶もそこそこにその場を去りました。しかし、マーラはそんなことを気にするそぶりも見せず、「ブーベは7年経っても気力は衰えない。自分はまだ27歳、あと7年経っても、まだ子供が生める」と幸せそうに微笑み、映画は終わります。一人の女性の心の成長を見事に描いています。

 

この時代のイタリア映画は好きでよく見ました。戦中・戦後の貧困を映し出す映画はなぜか日本映画に通じるものがあって共感を呼びます。敗戦国という共通点があるせいかもしれませんが、アメリカ映画には無い暗さがあります。

ファシストと戦うパルチザンの姿も、当時のイタリア民衆の姿も垣間見え、カルディナーレの顔と、音楽くらいしか憶えていなかった映画が鮮やかに蘇りました。社会派恋愛映画というところでしょうか。

それにしてもカルディナーレは美しかった。1969年の『ウェスタン』、1970年の『赤いテント』以来見ていませんがどうしているでしょうか。

それでは今日はこの辺で。