もうとっくに忘れ去られていると思いますが1970年代の中ごろに、知る人ぞ知るメンバーたちが集まってバンドを結成しました。その名を『アメリカン・フライヤー』といいました。
それではメンバーを紹介しましょう。
エリック・カズ(Eric Kaz)
シンガー・ソングライターでグループ結成までにソロアルバム2枚を発表しています。さらにその前は、『ブルース・マグース(Blues Magoos)』に在席していました。すぐれたソングライターでリンダ・ロンシュタッドやボニー・レイット、トレイシー・ネルソン、リタ・クーリッジなど数多くのアーティストが彼の作品を取り上げています。特にリンダのカバーした「Love Has No Pride」はアメリカでもかなりヒットし、アメリカン・フライヤーも取り上げています。またマリア・マルダーなどとの『マッド・エイカーズ』にも参加したりしています。
スティーヴ・カッツ(Steve Katz)
スティーヴ・カッツはアル・クーパー、ダニー・カルブなどと共に元ブルース・プロジェクトのメンバーで、1967年にアル・クーパーと共にブルース・プロジェクトを脱退し。ブラッド・スウェット&ティアーズを結成します。ホーンを大胆に取り入れたブラスロックで、シカゴと並んで人気を博しました。
ダグ・ユール(Doug Yule)
ダグ・ユールは伝説のバンド、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのメンバーでした。ジョン・ケイルの後釜です。彼はマルチプレイヤーで楽器は何でもこなします。さらにソングライティングの才能もあり、ヴェルヴェッツの後期の作品はほとんど彼が書いていました。
クレイグ・フラー(Craig Fuller)
クレイグ・フラーはピュア・プレイリー・リーグ(PPL)のオリジナルメンバーです。PPLはカントリーロック・バンドでそれまでに4枚のアルバムを出していました。彼はソングライター、ヴォーカル、ギターで活躍していました。
バンド結成の経緯はヴェルヴェッツのルー・リードの元マネージャーがダグとスティーヴとクレイグを引き合わせ、セッションを始めたところ、たまたまエリックが訪ねてきて意気投合しバンドの結成に至ったということです。
そして生まれたのが『アメリカン・フライヤー』というアルバムです。1976年です。
このアルバムにはポコのラスティ・ヤングやフライング・バリットのバイロン・バーライン、それにジョー・サンプル、ラリー・カールトン、リランド・スクラ―なども参加しており、なんといってもプロデュースがあのビートルズのジョージ・マーティンです。
楽曲はクレイグとエリックの共作が2曲、エリックの曲が3曲、スティーヴの曲が2曲、ダグの曲が2曲、クレイグの曲が2曲、それとエリックとジョージの共作が1曲と、実にバランスが取れています。
出身は東部海岸ですが、サウンドは完全にウェストコーストです。実に爽やかで、ポップに仕上がっています。聴いていて心地よい気分に浸れます。
翌年、セカンドアルバム『Spirit Of A Woman』をリリースします。
このアルバムではエリックとクレイグの共作が2曲、エリックの曲が4曲、スティーヴの曲が2曲、ダグの曲が1曲、という構成になりました。プロデュースもセルフプロデュースに替わりました。サウンドの方もファーストに比べ都会的になってきました。それでもエリックの「My Love Comes Alive」などはしっとり聴かせる名曲です。
メンバー間に何かあったのか、このあとバンドはあっさりと解散します。
その後、エリックとクレイグはデュオアルバム『Craig fuller&Eric Kaz』を発表します。
このアルバム、バックはラス・カンケル、リランド・スクラ―、クレイグ・ダージ、ダン・ダグモア、スティーヴ・ルカサー、マイケル・マクドナルド、J.Dサウザー、レオ・セイヤ―など錚々たるメンバーが務めました。後にリンダ・ロンシュタッドがカヴァーした曲なども含まれた好アルバムになっています。しかしこのデュオもこの1枚で終わりました。
その後はそれぞれに音楽活動を続けているようです。スーパーグループというのは大体においてアルバム1~2枚で終わります。
American Flyer Track 1 - Light Of Your Love
American Flyer Track 8 - Love Has No Pride
それでは今日はこの辺で。