エリック・クラプトン、ジミー・ペイジと並んでイギリスの三大ギタリストと呼ばれたジェフ・ベックです。
ベックの経歴を大雑把に分けると、ヤードバーズ時代、第1期ジェフ・ベック・グループ時代、第2期ジェフ・ベック・グループ時代、ベック・ボガード&アピス(BB&A)時代、ソロ時代となるでしょう。
今日のアルバム『Truth』は第1期ジェフ・ベック・グループ時代の1枚目です。
ジェフ・ベックはクラプトンがヤードバーズを抜けた後釜で加入しました。当初はベースがジミー・ペイジでした。ヤードバーズ時代には映画『欲望』の中でヤードバーズがライヴハウスで演奏し、ベックがギターを壊すシーンがありました。当時は、今のようにYouTubeで簡単にアーティストの映像が見られるなんてことはなかったので、それはそれは興奮しました。
そして、メンバーとの不和と音楽の方向性の違いからヤードバーズを脱退し、ソロ活動に入ります。シングル「Hi Ho Silver Lining / Beck's Bolero」を1枚リリースして、これがヒットしました。が、ベックはこれが気に入らず、バンドを作る準備をします。集められたメンバーがショットガン・エクスプレスにいたロッド・スチュワート、それにベースのロン・ウッド、ドラムのエインズレー・ダンバーです。このメンバーでシングル「Tallyman / Rock My Plimsoul」を録音します。直後にエインズレーは路線が違うと脱退します。替わりに、ミッキー・ウォーラーが加入し、このメンバーでツアーを行います。そしてファーストアルバムの録音が始まります。2回のセッションで計4日間で完成します。驚きです。1968年リリースされます。
正式メンバー
ロッド・スチュワート(Rod Stewart,vo)
ロン・ウッド(Ron Wood,b)
ミッキー・ウォーラー(Mickey Waller,ds)
ゲストミュージシャンとしてピアノのニッキー・ホプキンス(Nicky Hopkins)がクレジットされており、彼はセカンドの『BECK-OLA』から正式メンバーになります。
ただし、ジェフ・ベックグループとはどこにも書かれてありません。正式にジェフ・ベック・グループと書かれるのは第2期からです。第1期はあくまでもベックのソロアルバムという位置づけのようです。日本では第1期からジェフ・ベック・グループと呼んでいましたが。
Side A
A-1はいきなりヤードバーズ時代の曲です。ヤードバーズのポップな感じと違い、ロッドのしゃがれ声がいい感じのハードロックになっています。
A-2はブルースナンバー。
A-3もブルースのスタンダード。
A-4もブルースナンバー。マディー・ウォーターズでおなじみです。面白いのはライバルのジミー・ペイジがレッド・ツェッぺリンのファーストでもこの曲を取り上げていることです。
B-1はおなじみの「グリーンスリーブス」。アコースティックギター1本。なかなか 聴かせます。
B-2はシングルのB面。ブルースナンバーです。
B-3はジミー・ペイジがアレンジして、ベックに提供したとされているボレロです。 ジミとレッド・ツェッぺリンのジョン・ポール・ジョーンズが参加しています。好きです。
B-4はスローブルースナンバー。ニッキー・ホプキンスのピアノがいいです。
B-5もハウリン・ウルフで有名なブルースナンバー。
以上のように全体としてブルース色の濃いハードロックです。まさに60年代後半から70年初頭にかけてのイギリスのサウンドです。ロッドのしゃがれ声とベックの強烈なギターの絡み合いが存分に聴ける傑作です。
この後、ベックはこのメンバーでのセカンドアルバム『BECK-OLA』をリリースします。
このアルバムでは前作と違い、カバーは2曲のみ(「監獄ロック」「All Shook Up」)で、あとはオリジナルになっています。ファーストの後、ロン・ウッドが解雇され、この直前に再び戻ってきます。しかし、リリース直前、ニッキー・ホプキンスが脱退、リリース後ロン・ウッドがフェイセスに加入するために脱退、ロッド・スチュワートもロン・ウッドと行動を共にし、結局はこのバンドは消滅します。
このころベックは「ヴァニラ・ファッジ」のティム・ボガートとカーマイン・アピスと新しいグループを作る計画を立てていました。しかしベックが交通事故で重傷を負い、入院したため計画は白紙になります。
そして再起後、メンバーを集め第2期ジェフ・ベック・グループを結成します。メンバーはマックス・ミドルトン(key)、クライヴ・チャーマン(b)、コージー・パウエル(ds)、ボブ・テンチ(vo)です。
そして2枚のアルバムを発表します。
しかしこれも2枚で終息します。ベックはどうしてもティム・ボガートとカーマイン・アピスとのバンド編成にこだわったようです。突然以前のメンバーを解雇し2人を加入させます。ヴォーカルには「フリー」のポールロジャースを起用しようと考えましたが実現しませんでした。当時2人は「ヴァニラ・ファッジ」を辞めて「カクタス」のメンバーでした。
そして、グルプ名を『ベック・ボガード&アピス(BB&A)』として、スタートします。
1973年に『Beck,Bogert & Appice』をリリースします。さらに日本でのライブを収めた2枚組アルバムを発表します。
しかし、再びティム・ボガートとベックの間がしっくりせず、解散となってしまいます。結局このバンドもアルバム2枚で終わります。
この後ベックはソロになり、当時流行っていたフュージョンへと向かいます。そして最高のインストアルバム『Blow By Blow』と『Wired』をリリースします。
ジェフ・ベック自身もやはりソロがいいのでしょうか。
その後も、現在まで活躍中で、ほぼ毎年のように来日し、テレビ出演などもしています。それでも私はブルースロック時代のベックが好きです。
三大ギタリスト、いずれも健在で喜ばしい限りです。
「この1枚」のはずでしたが、筆が止まらなくなりました。いい加減にして止めます。
I Ain't Superstitious , Jeff Beck , 1968 Vinyl
BECK'S BOLERO (1967) by the Jeff Beck Group - with backwards guitar ending
なお、ロッド・スチュワートについては別途書くつもりでいます。
それでは今日はこの辺で。