Flying Skynyrdのブログ

映画や音楽、本についての雑文

映画 『エディット・ピアフ~愛の賛歌~』を観る

今日の自宅シアターは『エディット・ピアフ~愛の賛歌~』です。

監督:オリヴィエ・ダアン

主演:マリオン・コティヤール

制作:2007年 フランス、イギリス、チェコ

 

エディット・ピアフに関してはそれほど詳しい知識を持ち合わせているわけではありませんが、壮絶なる人生だったということぐらいは知識としてありました。何故か我が家にもいつ買ったのかも憶えていないくらい前のレコードが1枚ありました。特別シャンソンに興味があったわけでもないのに不思議ですが、買ったことだけは憶えていて、探した結果出て来ました。懐かしいです。

f:id:lynyrdburitto:20171123085001j:plain

 

映画の方はというと、現在と過去を織り交ぜながら進行してゆきます。

エディット・ピアフ(本名はエディット・ジョヴァンナ・ガション)はパリの貧民街ベルヴィルで生まれ、幼少期を過ごします。母親は路上で歌って日銭を稼ぐ仕事、父親は大道芸人でこの時は軍隊に入隊していました。母親は今で言うネグレクトでほとんど子供はほったらかしです。見かねた父親が自分の母親に預けます。母親は娼館の経営者でピアフは娼婦たちに可愛がられて育ちます。途中で角膜炎により失明の危機に陥りますが、聖テレーズに祈りを捧げて視力が回復したことから、以後ピアフは聖テレーズを信仰するようになります。

やがて父親が除隊すると、再び大道芸を始めるといってピアフを無理やり連れていきます。この時の娼婦たちとの別れがとても辛かったようです。

父親の大道芸はあまり人気がなく、観衆からは娘に芸をさせろとヤジられます。父親は娘に何か芸をしろと催促します。ピアフは歌い始めます。それはなんと「フランス国歌」でした。観衆からは拍手喝采でした。

時は経ち、エディット15,6歳の頃から彼女は義姉妹のモモーヌと組んで路上で歌を歌い生活するようになっていました。母親を憎み、父親に反発し家を飛び出し自暴自棄の生活でした。

そして20歳の頃、名門ナイトクラブのオーナー、ルイ・ルプレーにその才能を見いだされ、クラブで歌うようになります。これが彼女の第1の転機になりました。ここでルプレーは後の芸名となる「小さなスズメ」(La Môme Piaf)というあだ名をつけます。ルプレーはその後殺害されますが、ピアフはその犯人だと疑われてしまします。疑惑は晴れますが、恩人を無くしたショックは大きいものが有りました。

そしてこのクラブで有名な作曲家レイモン・アッソと出会います。彼は厳しいレッスンを彼女に強います。途中で逃げ出したりもしますが、何とかやり遂げ、そして初めてコンサートという舞台に立ったのでした。

こうしてピアフはフランスのみならず世界でも有名なシャンソン歌手へと歩み始めます。

しかしその後の人生も波瀾万丈でした。アメリカ公演でピアフはプロボクサーのマルセル・セルダンと知り合い恋に落ちます。ピアフが16歳の時に恋に落ち産んだ子供もマルセルという名前でした。偶然の一致です。子供は2年後に無くなります。ただ彼は妻子持ちでした。逢いたくてもなかなか逢えない。そして逢いたくてたまらずに今からすぐに来てと電話で訴えます。彼の乗った飛行機が墜落し、彼は死んでしまいます。その気持ちを歌にしたのがあの「愛の賛歌」でした。それからの彼女は酒に溺れ、また数度の自動車事故の影響で痛みを抑えるためのモルヒネの多用で身体はボロボロになって行きます。

公演中にたびたび不調を訴えようになり、周りは止めますが、自分には歌う事しかないと訴えます。そして最後の舞台に上がり歌唱中に倒れます。最後は癌に侵されベッドの中で47歳の短い生涯を閉じます。子供の名前を呼びながら。それは恋人の名前だったのかも知れません。晩年の姿は、とても47歳には見えません。今で言うと80歳の老婆のようです。

途中、晩年のピアフに女性記者が海岸の砂浜でインタビューする場面があり、記者が「若い人にメッセ―ジはありますか」と訊ねられ、ピアフは「愛しなさい」と答えます。印象的なシーンです。

マレーネ・デートリッヒやジャン・コクトーなどとの親交もちらっと出てきて、嬉しくなります。イブ・モンタンなどの名前も出て来ました。

この映画のピアフの人生を見ていて、ふと美空ひばりの人生を思い浮かべました。もちろん境遇は違いますが、幼少からの歌手生活、天才的な歌唱力、生死をさまよう交通事故、客に硫酸をかけられる事件、暴力団との交際、兄弟との早い死別、病魔との闘い、それでも自分には歌う事しかないという信念。共通点がたくさん見出されます。日仏の天才歌姫同士でした。

 

それとなんといっても主演女優のマリオン・コティヤールでしょう。この映画でアカデミー賞主演女優賞を獲りましたが、当然という気がします。

ピアフは140センチそこそこの小さな女性です。マリオンは169センチの大柄な女性ですが、背中を丸めひょこひょこ歩く姿は、ちっとも違和感を感じさせません。それと表情と容姿の変化が見事です。同じ女優が演じているとは思えないほどの変化です。歌はほとんどが口パクらしいですが、まるで本人が歌っているようです。

 

「愛の賛歌」という歌は昔は結婚式の定番だったそうですが、それは岩谷時子の訳詞で越路吹雪が歌ったバージョンです。実際の「愛の賛歌」はもっと激しい内容の歌詞です。

元々の歌詞は次のようです。古いレコードで訳詞者が書いていません。

 

青空だって私達の上に落ちてくるかも知れない

地球だってひっくり返るかも知れない

大した事じゃない、あなたが愛してくれれば

世の中のことなんてどうでもいい

恋が私の毎朝を満たしてくれれば

私の体があなたの手の下でふるえる時には

重大問題なんてどうだっていいの

あなたが愛していてくれるんだから

 

世界の崖までも行きます

髪を金髪に染めてもいいです

あなたがそう言うのなら

お月様をとりにだって行きます

宝物を盗みにだって行きます

あなたがほしいと言うなら

自分の国を見捨ててもいい

友達を見捨ててもいい

あなたがそうしてほしければ

ひとが私のことを笑ったって平気

何だってしてのけます

あなたにそう言われれば

 

もしもいつか、人生があなたを奪っても

あなたが死んでも 私から遠くへ去っても

あなたが愛してくれれば平気

だって私も死ぬのだから

私たちは永遠の中に生き

広々とした青い空の中で

問題などない空の中で

恋人よ、愛し合っているのだから

神様が愛し合う二人をまた結びつけて下さるでしょう

 

エディット・ピアフの激しい気性が現れているようです。

いままであまり知らなかった彼女に人生の一端を見れて納得しました。

 


映画「エディット・ピアフ 愛の讃歌」日本版劇場予告

 

本物のピアフです。


愛の讃歌 エディット・ピアフ

 

それでは今日はこの辺で。