1976年、イーグルスが『ホテル・カリフォルニア』を、ドゥービー・ブラザースが『ドゥービー・ストリート』をそれぞれリリースした年、ウェストコーストロックは全盛期を迎えたようで実は既に衰退の時期に入っていたのではないでしょうか。
ザ・バーズは既に無く、フライング・バリット(FBB)もグラム・パーソンズが抜け、CSN&Yも無く、イーグルスもドゥービーも先のアルバムリリースの後、煮詰まってしまいます。ニール・ヤングもスティヴン・スティルスとのスティルス・ヤングバンドの結成などで話題を取ろうともがいていました。
そんな中、現れたのが『ファイアーフォール』です。このバンドはそれまでのウェストコースト、特にロス系のバンドの特徴である泥臭いカントリー・ロックやフォーク・ロックとは違って、どちらかというとそれ以降流行するAORに近い都会的センスを兼ね備えたバンドでした。
とはいっても、構成メンバーはグラム・パーソンズの後任としてFBBに在席していたリック・ロバーツ(Rick Roberts,vo,g)とジョック・バートリー(Jock Bartley,g,vo)がバンドを作る相談を始め、ジョ・ジョ・ガンにいたマーク・アンデス(Mark Andes,b,vo)とラリー・バーネット(Larry Burnett,g,vo)に連絡を取り、最後にザ・バーズとFBBにいたマイケル・クラーク(Michael Clarke、ds)に話を持ち掛け、1974年に正式に結成されたバンドで、まさにウェストコーストロックの申し子たちのバンドでした。
ジョック・バートリーはグラム・パーソンズの『The Fallen Angels』のメンバーで、その時リックロ・バーツと知り合ったようです。ラリー・バーネットはワシントンDCのSSWでギタリストです。
そして1976年に年にファーストアルバム『Firefall』がリリースされます。
Side A
1.It Doesn't Matter
2.Love Isn't All
3.Livin' Ain't Livin'
4.No Way Out
5.Dolphin's Lullaby
Side B
1.Cinderella
2.Sad Ol' Love Song
3.You Are the Woman
4.Mexico
5.Do What You Want
A-1 スティヴン・スティルスの『マナサス』に入っていた曲。スティルスとクリス・ヒルマンの共作。後にクリス・ヒルマンも自身のソロアルバムで取り上げています。叙情的な名曲です。
A-2 ラリー・バーネットの曲。バンドというよりはSSWのような雰囲気。静かです。
A-3 リック・ロバーツの曲。リックの高音ヴォーカルが耳に残ります。カントリーでもなく、フォークでもなく、ポップスに近い。
A-4 ラリー・バーネットの曲。ファンキーなロック。都会的です。
A-5 リック・ロバーツの曲。メロディアスで叙情的なリックの名曲。
B-1 ラリー・バーネットの曲。ハープを導入したブルース・ベースの曲。
B-2 ラリー・バーネットの曲。これも静かなSSW調の曲。
B-3 リック・ロバーツの曲。爽やかなフォークロック。
B-4 リック・ロバーツの曲。A-1と並んでこのアルバムの目玉曲です。ドゥービーを思わせます。
B-5 ラリー・バーネットの曲。ファンキーなロックンロールナンバー。
こうしてみると、ラリー・バーネットが半分の曲を作っています。ラリー・バーネットはワシントンDC出身であることから、ウェストコーストロックに刺激を与えているのかもしれません。
ウェストコーストロックもこの頃はロスアンゼルスからコロラドの方にその中心が移りつつありました。ロスで活躍していた連中が続々とコロラドに移り住むようになりました。リック・ロバーツもコロラドの出身で、FBBのサードアルバムでは「コロラド」という大名曲を送り出しています。
この後、ファイアーフォールは1977年にセカンドアルバム『Luna Sea』をリリースします。
このアルバムではますますAOR的なサウンドになっていきます。そして人気の方もうなぎ上りになって、アルバムは全米27位まで上昇し。シングルの「 Just Remember I Love You 」は全米ACの1位を獲得します。
その後はメンバーチェンジを繰り返し、マイケル・クラークとマーク・アンデスは1980年に、リック・ロバーツとラリー・バーネットは1981年にそれぞれ退団します。オリジナルメンバーではジョック・バートリー一人がバンドを率いてきました。
リック・ロバーツは一時期戻りましたが、再び退団。マーク・アンデスは現在復帰しています。
ファイアーフォールとしては現在も活動中のようです。デビューしたころは、どうせまたすぐ解散するのだろうな、などと思っていましたが、なんのなんのまだまだ頑張っています。お見それ致しました。
それでは今日はこの辺で。