ニューオリンズ・ミュージックを世界に知らしめた男、ドクター・ジョンことマック・レベナック(Mac Rebennack)が1972年に発表したアルバムが『Gumbo』です。
彼の経歴は古く、1950年代からギタリストとして活躍していましたが、指を怪我してピアニストに転向します。
1967年に衝撃的なアルバム『Gris,Gris(グリ,グリ)』でソロデビューします。それまではニューオリンズのスタジオミュージシャンとして、ニューオリンズの一流ミュージシャンとの交流の機会を得ています。ブードゥー祈祷師の仮面をかぶり、怪しげな雰囲気でブードゥー教文化を背景にした音楽で、世間を驚かせましたが、当時の評価は芳しくありませんでした。
しかし、後になってイギリスのミュージシャン連中の間で評判となり1971年にはエリック・クラプトン、ミック・ジャガー、グラハム・ボンド、ボビー・ウィットロック、ボビー・キース、ジム・ゴードン、ウォルター・デイヴィス、ジム・プライス等々の錚々たるメンバーが参加しての豪華なアルバム『 Sun, Moon & Herbs』を発表します。
しかし、このアルバムもあまり芳しい評価ではありませんでした。
そして1972年に今日取り上げた『Gumbo』が発表されます。
Side A
1.Iko Iko (James "Sugarboy" Crawford)
2.Blow Wind Blow (Huey Smith & Izzy Cougarden)
3.Big Chief (E. Gaines)
4.Somebody Changed The Lock (Mac Rebennack)
5.Mess Around (Ahmet Ertegun)
6.Let The Good Times Roll (E. Johnson)
Side B
1.Junko Partner (Bob Shad)
2.Stack-A-Lee (Traditional)
3.Tipitina (Roy Byrd)
4.Those Lonely Lonely Nights (Earl King & Johnny Vincent)
5.Huey Smith Medley
1.High Blood Pressure (Huey Smith & Johnny Vincent)
2.Don't You Just Know It (Huey Smith & Johnny Vincent)
3.Well I'll Be John Brown (Huey Smith & Johnny Vincent)
6.Little Liza Jane (Huey Smith & Johnny Vincent)
A-1はジェイムス・クロフォードというニューオリンズの歌手によって書かれた曲。
A-2はスパイダースのジュニア・イズィクー・ゴードンの曲。ニューオリンズでの大 ヒット曲。
A-3はプロフェッサー・ロングヘア―によってヒットした曲でアール・キングが彼のために書いた曲。
A-4はドクター・ジョンの唯一のオリジナル。1960年頃に書いた曲。
A-5はアーメット・アーティガンがレイ・チャールズのために書いた曲。
A-6はニューオリンズの有名な曲で、たくさんの人がカバーしている。ジミ・ヘンもその一人。ドクター・ジョンが珍しくギターを弾いています。
B-2はアーチボールドでヒットした有名な曲。
B-3はプロフェッサー・ロングヘア―で有名な曲。
B-4はアール・キングの曲。ジョニー・ギター・ワトソンもヒットさせています。
B-5はヒューイ・スミスのヒットメドレー。
B-6もヒューイ・スミスの曲。
このように、すべてニューオリンズの古い曲を取り上げて、現代に復活させています。
本人が語っているようにニューオリンズ・ブルースとストンプ・ミュージックを基に、デキシーランド・ジャズを少し、スパニッシュ・ルンバ・ブルースがいくらかあって、ブードゥーはない。デキシーランド、ロックンロール、ファンクが交じり合って出来上がったアルバムです。
ドクター・ジョンのだみ声と跳ねるようなピアノ、初めは違和感がありますが、聴いているうちに病みつきになります。
ニューオリンズ・ミュージックがこの後ロック界に与えた影響は大きいものが有りました。
ドクター。ジョンはマック・レベナックの名前でも数多くのミュージシャンのレコーディングに参加しています。
1973年にはジョン・ハモンドとマイク・ブルームフィールドとの『三頭政治』を発表しています。
また1976年にはザ・バンドの映画『ラストワルツ』にも出演しており、その雄姿を見ることが出来ました。
2013年にはアルバム『Locked Down 』で最優秀ブルース・アルバム賞を受賞、6度目のグラミー賞受賞を果たしています。
現在76歳、化け物のような人です。まだまだいけるでしょう、頑張ってください。
Dr. John - Let The Good Times Roll (Studio)
それでは今日はこの辺で。