『モット・ザ・フープル(Mott The Hoople)』は1970年代前半を、まさに疾走したロック・バンドでした。
モット・ザ・フープルとしての結成は1969年で、デビューアルバム『Mott The Hoople』をアイランドからリリースしました。
この時のメンバーは
イアン・ハンター(Ian Hunter,vo,p)
ミック・ラルフス(Mick Ralphs,g,vo)
ヴァーデン・アレン(Varden Allen,key)
ピート・オヴァレンド・ワッツ(Overend Watts,b)
デイル・"バフィン"・グリフィン(Dale "Buffin" Griffin,ds)
でした。プロデュースはガイ・スティーヴンスです。
いきなりキンクスの「You Really God Me」のカバーで始まり、続いてダグ・ザムのカバーとカバー曲を3曲並べ、しかもイアン・ハンターの声も歌い方もボブ・ディランそっくりで、最初はありゃりゃと思いました。後半にオリジナルのロックンロールを持ってきて、そんなに悪いアルバムではありませんでしたが全く売れませんでした。
続いて1970年にセカンドアルバム『Mad Shadows』をリリースします。
このアルバムには彼らのライブの定番曲「Walkin' With A Mountain」を含みます。楽曲も全曲オリジナルでイアンハンターが全7曲中ラルフスとの共作を含めて5曲提供しています。イアン・ハンターの成長ぶりがうかがえますが、レコード売上の方は前作から比較すれば上々ですが、それでも期待ほどではありませんでした。
続いて1971年にサードアルバム『Wildlife』をリリースします。
このアルバムではミック・ラルフスの曲が4曲、イアン・ハンターが3曲、カバーが2曲とラルフスとハンターの曲が逆転しています。これは明らかにラルフスの音楽性が前面に出てきたと言えるでしょう。この二人の音楽志向には当初から違いがあったようです。ハンターのディランのフォークロック志向とラルフスのカントリーロック、ロックンロール志向。この頃は、まだ後に言われるグラムロックの代表選手ではなく、いわゆる普通のブリティッシュ・ロックの括りで語られていました。
同じ年に4枚目のアルバム『Brain Capers』がリリースされます。
驚くことにこのアルバムではラルフスの単独名義の曲は無くなりました。ハンターとの共作が1曲のもです。逆にハンターの曲は共作を含め全8曲中5曲を占めました。
カバー曲にはジェシ・コリン・ヤング率いるヤングブラッズの「Darkness,Darkness」が収録されており驚きました。ハンターのフォークロック志向は続いています。
しかしこのアルバムも全く売れず、会社は解散を迫ります。
ここで以前からモット・ザ・フープルに興味を持っていたデヴィッド・ボウイがプロデュースを名乗り出ます。そしてレコード会社をCBSに移して録音されたのが5作目の『All the Young Dudes(すべての若き野郎ども)』でした。1972年でした。
1曲目にヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「Sweet Jane」を持ってきているところなど、デヴィッド・ボウイらしいです。そしてボウイの「All the Young Dudes」は彼らの最大のヒット曲になりました。確かに名曲です。この頃から彼らはグラムロックと呼ばれるようになりました。グラムロックという定義は曖昧で音楽的な共通点などはあまり見られません。共通しているのは外見です。
ここにはミック・ラルフスの名曲「Ready For Love」が収録されています。ラルフスは後にこの曲をポール・ロジャースのような人に歌ってもらいたいと、バンドを脱退し、「フリー」を解散したポール・ロジャースと共にバッド・カンパニ―を結成し、ファーストアルバムでこの曲をポールが歌っています。さすがにポール・ロジャース。この曲が蘇りました。
ここでヴァーデン・アレンが自作曲があまり取り上げられないのを不服としてバンドを脱退します。4人になって6作目『Mott(革命)』をリリースします。
日本盤はこちらのジャケットが使われていました。
この中からは「All The Way From Memphis(メンフィスへの道)」がヒットします。このアルバムはセルフプロデュースでした。
このアルバムのリリース前にミック・ラルフスは先ほどのバッド・カンパニ―結成に駆け付けます。
ラルフスの後任にはスプーキー・トゥースのルーサー・グロヴナー(Luther Grosvenor,g)(クレジット名は契約の関係でアリエル・ベンダー)、そしてキーボードにモーガン・フィッシャー(Morgan Fisher,key)が加入します。
そして1974年『The Hoople(ロックンロール黄金時代)』がリリースされます。
この中から「Roll Away The Stone」が大ヒットします。グラムロックの代表的アルバムになりました。しかし、このあとルーサー・グロヴナーが脱退、代わりにデヴィッド・ボウイのバンドなどにいたミック・ロンソンが加入しますが、イアン・ハンター以外のメンバーとの折り合いが悪く、結局イアン・ハンターと共にバンドを脱退。ここにモット・ザ・フープルの解散が決まりました。このアルバムがモット・ザ・フープルのスタジオアルバムのラストを飾る作品となりました。
この後ライブ盤『Live(華麗なる煽動者)』が発売されますが、モット・ザ・フープル名義のアルバムはこれが最後となりました。
この後残ったメンバーはバンド名を『Mott』 と改めアルバム『Drive On』をリリースしますが鳴かず飛ばずで結局解散に至りました。
その後、イアン・ハンターはミック・ロンソンと行動を共にしソロアルバムを数多くリリースします。
最近では再びミック・ラルフスと組んで何やらやっているようです。若い時の紆余曲折も時が解決するのでしょうか。イアン・ハンター78歳、ミック・ラルフス69歳。
CD時代になってモット・ザ・フープルの未発表音源等がかなり発売されました。
有難いですが、金銭的には大変です。
それと余談ですが気に入っているジャケットがあります。大昔のジャケ買いです。いいですね。
Mott the Hoople - Darkness Darkness
Mott The Hoople - All The Young Dudes
Mott The Hoople - Ready For Love
Mott The Hoople - Roll Away The Stone (1974) HD 0815007
それでは今日はこの辺で。