Flying Skynyrdのブログ

映画や音楽、本についての雑文

映画『永遠のジャンゴ』を観る

昨日のキネ旬シアターは『永遠のジャンゴ』でした。

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監督:エチエンヌ・コマール

主演:レダ・カテブ、パヤ・ベア、セシル・ドゥ・フランス

制作:フランス 2017年公開

 

伝説的ジャズギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトの意外と知られていない戦時中の物語です。

ジャンゴは1910年にベルギーで生まれました。両親はロマ族(ジプシー)の旅芸人で小さい頃から家族と共にヨーロッパ各地を転々と渡り歩いていました。1920年ごろからはフランスのパリに住むようになり、10代前半から楽器を演奏するようになりました。当時はバンジョーを弾いていたようです。それからジャズに興味を持ちギターを弾くようになりましたが、その頃火事に遭い左手の薬指と小指に障害が残りました。それでも練習によってその障害を克服し独自の奏法を確立しました。

彼の奏法は左手の人差し指と中指で弾くという独特のものでした。映画でもそれは再現されています。

やがて彼はフランスのジャズ・バイオリニスト、ステファン・グラッペリとフランス・ホット・クラブ5重奏団を結成します。ロマ(ジプシー)ミュージックの哀愁を含んだメロディーとスイングジャズを融合させたジプシー・ジャズで、その類まれなるテクニックを伴って人気を博すようになりました。後年のロックミュージシャンやブルースマンにも多大な影響を与えました。

イギリスツアー中に第二次世界大戦が勃発。ジャンゴはフランスに帰国しましたが、グラッペリはイギリスに残り二人は終戦まで袂を別ちます。

そしてフランスがドイツに占領されるとナチスによってジャズを演奏するにもブルースはダメだなどと様々な制限がかかるようになりました。元々がアメリカ音楽ですから、当たり前と言えば当たり前ですが。それでもドイツ人はこのジャズを楽しんでいました。現に映画でもジャンゴに対してドイツ兵の前で演奏するように命じます。

この映画はあまり知られていないその頃のジャンゴとジャンゴの出自であるロマ族(ジプシー)に対するナチスの迫害を描いた映画です。

 映画の冒頭ではアルデンヌの森で生活するジプシーがナチスによって惨殺されるシーンから始まります。彼らの演奏するジプシーミュージックが本当に素晴らしいのです。

また、パリのコンサート会場で演奏するジャンゴのジャズギターがこれまた素晴らしい。二本指であれだけの速弾きが出来るなんて考えられません(もちろん演技ですが)。

そしてラストに虐殺されたジプシーの仲間のためにジャンゴが作曲したレクイエムの演奏シーンが流れます。この曲は戦後にたった一度だけ演奏されたもので、譜面も一部しか残っていないそうです(字幕から)。これがまた素晴らしい。

映画の内容はジャンゴがナチスによるロマ族への迫害を目の当たりにし、追跡を逃れスイスへ亡命し、終戦を迎えるまでを描いていますが、そのストーリーもさることながら音楽の素晴らしさに圧倒されました。早速サントラ盤が欲しくなりました。

 

ナチスによるユダヤ人の弾圧・虐殺は有名ですが、ロマ族(ジプシー)に対する迫害は意外とユダヤ人迫害程には知られていません。殺害された正確な人数は判りませんが50万人ともいわれています。

ジャンゴの43年の生涯の中のわずか3年、しかも戦時中を切り取って描くことによって、歴史的事実を明らかにしていく手法も心憎いものがあります。ここのところのナチス関連の映画の多さには驚くばかりです。何が起きているのでしょうか。

 

映画のなかでジャンゴがナチスプロパガンダニュースを茶化した映像を見て、ヒトラーの髭を「ダサい髭だ」と口走る場面や「ドイツ人のために演奏などできるか」と叫ぶシーンにナチスに対する憎しみが現れています。

 

これはジャンゴ・ラインハルトの実物です。

 Django Reinhardt (Gottlieb 07301).jpg

 

こちらはサウンドトラック盤です。

 


『永遠のジャンゴ』予告

 

それでは今日はこの辺で。