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映画『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』を観る

今日のキネ旬シアターはペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』でした。

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監督:スティーヴン・スピルバーグ

主演:メリル・ストリープトム・ハンクス

制作:アメリカ合衆国 2018年公開

原題:The Post

 

この映画はアメリカのベトナム戦争に関する分析を記録した国家の最高機密文書、通称「ペンタゴンペーパーズ」を暴露した新聞社(ワシントン・ポスト)の社主と記者たちの実話です。

 

トルーマンアイゼンハワーケネディ、ジョンソンと歴代大統領がベトナムに関する政策決定の内容を約7000ページにわたり記録した文書が「ペンタゴンペーパーズ」と呼ばれる文書です。

 

ベトナム戦争の現地視察を終えたマクナマラ国防長官は、それまで自分も進んで推し進めてきたベトナム戦争の遂行に懐疑的になってきていました。現地を視察したダニエル・エルズバーグに戦況を尋ねると、芳しくない答えが返ってきました。マクナマラは記者団には順調に進んでいると報告しながらも、陰でベトナム戦争に関する詳細な記録を後々のために作成するよう命じます。これがいわゆる「ペンタゴンペーパーズ」の始まりです。ランド研究所のエルズバーグも執筆者の一人でした。しかしその間国防長官も変わり、文書は未完で終わりました。

文書には勝てる見込みのないベトナム戦争に多くの兵士を送り込んだことが赤裸々に描かれてありました。政府は国民に嘘をつき通していたのです。

 

エルズバーグの正義感は収まらず、この文書を持ち出しコピーを取りました。そしてニューヨーク・タイムズのニール・シーハンに渡しました。ニューヨーク・タイムズは3カ月の後、スクープとして掲載しました。

 

ニクソン大統領は即座に国家機密の情報漏洩にあたるとして連邦地方裁判所に記事の差し止め命令を求める訴訟を起こし、記事は差し止められました。

 

一方ワシントン・ポストは夫が謎の自殺をして、その後を受け継いだ夫人のキャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)が社主となっていました。編集主幹はベン・ブラッドリー(トム・ハンクス)です。

 

キャサリンは女性ということもあって、周りからも頼りなく思われ、自分も夫のようにはなれないと自信なさげな態度をとっています。しかし、会社の資金繰りを考え、株式の公開に踏み切ります。

 

そんな矢先にニューヨーク・タイムスのスクープ記事が掲載されます。焦ったベンはなんとかワシントン・ポストでもその文書を手に入れろと命じます。

記者のバグディキアンはかつてランド社で一緒に働いていたエルズバーグの仕業と見込んで連絡を取ります。すると案の定、彼からの漏洩でした。バグディキアンは必ず掲載すると約束し、約5000ページの文書を持ち帰ります。

 

ベンは早速記者たちに命じ、2日後の新聞に載せろと命じます。しかしここで経営陣との対立が起こります。経営陣は裁判所からの差し止めが命令が出れば、致命的で上場は取り消され、会社の存続も危ういと反対します。顧問弁護士たちも反対です。

 

キャサリンは決断を求められます。キャサリンマクナマラの親友だということもあって悩んだ末、掲載を決断します。喜んだベンはすかさず、記者たちに続行を命じます。

 

しかしここで再び問題が持ち上がります。入手先がニューヨーク・タイムズと同じエルズバーグだということが分かってしまいます。すると共謀罪が成立し、社主以下は逮捕・投獄され恐れが出て来ました。さすがにベンもこれには観念せざるを得ないかと、キャサリンに相談を持ち掛けますが、キャサリンは役員たちの前で「新聞社としてやらねばならないことをやるだけです」毅然と掲載を主張します。

 

そしてとうとう新聞は発行されました。すると各地方紙もワシントンポストに追随し、世論の動きは一気に戦争反対へ動き出しました。そして連邦最高裁判所の判決は新聞社側の勝訴でした。

 

ニクソン大統領は今後二度とワシントン・ポストを記者会見に出席させるなとの命令を出します。

 

しかしこの後、あのウォーターゲート事件が発覚しニクソンは失脚します。

この続きは大統領の陰謀で、という事でしょうか。

 

この映画はスピルバーグトランプ大統領の登場によって、報道の自由が侵されることを危惧して急遽作ったのではないでしょうか。というのもスピルバーグはトランプ政権が誕生してわずか45日後に制作の発表をしていることからも想像できます。

 

それでもさすがにアメリカです。報道機関も頑張りますが、最高裁も独立していることを見せつけました。森友の大阪地検とは違います。そして何より世論の力でしょう。

 

この事件は1971年のことですが、国が国民を欺くという事例は今でも変わりありません。今の日本のA・A政権などその典型でしょう。モリ・カケから始まって、自衛隊日報問題、厚労省の残業時間問題。見え見えの嘘をつき通し、何事もなかったように時が経つのを待つ。政治家も官僚も。そして国民もいつの間にか忘れてしまう。

 

このところ世界中の民主主義が危ぶまれています。報道の自由もわが国でも侵され始めています。独裁的国家が増えてきているように感じてなりません。(今日、放送法4条の撤廃は見送られたようですが)

スピルバーグはそのような現状に警笛を鳴らしたかったのではないでしょうか。

 

余談ですが、この頃はアメリカでも新聞は活版印刷だったんですね。

 

 


【映画 予告編】 ペンタゴン・ペーパーズ/​最高機密文書(予告A)

 

 

それでは今日はこの辺で。