イギリスのフォーク界でもひときわ異彩を放っていたのが『ペンタングル(Pentangle)』です。
ペンタングルは二人のギタリスト、バート・ヤンシュ(Bert Jansch,g,vo)とジョン・レンボーン(John Renbourn,g,vo)が中心になって結成されたバンドです。元々は二人のギター・デュオという形で始まりました。
バート・ヤンシュは1943年のグラスゴー生まれで、16歳の頃からギターで才覚を表し、1965年に発表したファーストソロアルバムがイギリスで最も影響力を与えたギター・アルバムだとの評価を得ました。
一方1944年にキングストンで生まれたジョン・レンボーンも同じく1965年にソロアルバムを発表しています。そしてジョンはバートと出会いバートのソロアルバム『Jack Orion』にも参加します。
そして1966年には『Bert & John』なるアルバムを発表します。
この二人にジャズやブルース界で売れていたダニー・トンプソン(Danny Thompson,b)とテリー・コックス(Terry Cox,ds)が加わり、さらにフォーク、ブルースを歌っていたジャッキー・マクシー(Jacqui McShee,vo)が加入して、ここにペンタングルが誕生しました。1967年でした。
このようにフォーク、ジャズ、ブルースなど多様な音楽を得意とする面々が顔を揃え、始まったペンタングルは、その音楽性も多様さを極めました。
そして1968年にデビューアルバム『The Pentangle』がリリースされました。
Side A
1.Let No Man Steal Your Thyme
2.Bells
3.Hear My Call
4.Pentangling
Side B
1.Mirage
2.Way Behind The Sun
3.Bruton Town
4.Waltz
プロデュースはあのシェル・タルミー(Shel Talmy)です。
ほとんどの曲はメンバーの共作です。
一言でいうと、アコースティック・ジャズ・ギター・フォークアルバムです。なんかよくわかりませんね。
とにかくフォークとジャズと中世音楽の融合です。ジャズのインプロビゼーションをフォークの世界に取り入れたという感じです。
ジャッキー・カーシーのヴォ―カルはどこまでも透き通っていて、アコースティック・ギターのデュエットは緊張感をもたらします。
ペンタングルの名は一気に高まりました。
この後も1972年までに通算6枚のアルバムを発表しました。しかし1973年にバート・ヤンシュが脱退を表明、バンドもあえなく解散となりました。
1981年にバンドは再結成しますが、ジョン・レンボーンが早々に脱退、代わりにマイク・ピゴット(Mike Piggott,g,violin)が加入、1985年に久しぶりにアルバムを発表します。その後もメンバーチェンジをしながらアルバムを発表し続けました。
しかし、1994年にはバート・ヤンシュが脱退、ペンタングルは正式に解散となります。
残ったジャッキー・マクシーが『ジャッキー・マクシーズ・ペンタングル』として活動を再開し、現在に至っています。
その間、2011年にバート・ヤンシュが、2015年にはジョン・レンボーンがそれぞれ亡くなり、実質上のペンタングルは消滅しました。
1960年代後半から70年代にかけてのブリティッシュ・フォーク界のバンドとは一味も二味も変わっていたバンドでした。アコギファンにはたまらない1枚でしょう。
Pentangle - Let No Man Steal Your Thyme (1968)
Pentangle - Belles - (Live Norwegian TV '68)
Once I had a sweetheart - The Pentangle - 1969
それでは今日はこの辺で。