Flying Skynyrdのブログ

映画や音楽、本についての雑文

サントラ盤『欲望』&『砂丘』

今日の「ロックが詰まったサントラ盤」はミケランジェロ・アントニオーニの2作品です。

ミケランジェロ・アントニオーニといえば私を難解(私にとって)な映画に引きずり込んだ監督です。そしてその監督の作品の中で最初に見た作品が今日の1本目、『欲望』です。そして続いて観たのが『砂丘』です。

 

まずは『欲望(Blow Up)』です。

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Side A

1.Main Title

2.Verushka (Part 1)

3.Verushka (Part 2)

4.The Naked Camera

5.Bring Down the Birds

6.Jane's Theme

 

Side B

1.Stroll On - The Yardbirds

2.The Thief

3.The Kiss

4.Curiosity

5.Thomas Studies Photos

6.The Bed

7.End Title

 

映画は

監督:ミケランジェロアントニー

制作:カルロ・ポンティ

主演:デヴィッド・ヘミングスヴァネッサ・レッドグレイヴジェーン・バーキン

制作:1966年 イギリス、イタリア 日本公開1967年

 

アントニオーニ初めての英語作品です。カラー作品としては『赤い砂漠』に次ぐ2作品目です。カンヌ映画祭のグランプリを受賞しました。

アントニーニは一貫して『不条理な世界』と『愛の不毛』をテーマに映画を撮り続けましたが、この『欲望』も「不条理な世界」に満ち溢れていました。

アントニオーニについては先日に記事で書いていますのでご参考までに。

 

lynyrdburitto.hatenablog.com

 

この映画を観た日は訳が分からず、夜も眠れませんでした。どうしても納得できず後日もう一度観に行きました。そして自分なりの結論を出しました。これ以降この手の考えさせられる映画のとりこになっていったのです。

内容はというと、ある人気カメラマン・トーマスが散歩がてら公園を散歩ていると、一組のアベックを見かけます。二人のキスシーンをカメラに収めますが、気が付いた女がフィルムを返せと言ってきます。トーマスは断ります。すると女は自宅まで取りに来ます。仕方が無いのでヌード写真を撮らせる代わりにと偽のフィルムを渡します。その後そのフィルムを現像してみます。すると、女の目線の先に何かが見えます。そこを拡大(原題のBLOW UP)すると銃口が見えます。さらにそばには男の死体が横たわっています。慌てたトーマスは早速公園に行ってみると、実際に死体がありました。その死体は公園で女とキスをしていた男でした。トーマスは友人に知らせるために尋ねると、ドラッグパーティをやっていました。トーマスも寝込んでしまい、翌朝再び公園に行ってみると、死体は消えていました。

するとモッズ族の若者たちが車に乗って現れ、テニスコートでテニスを始めました。しかしボールはありません。見えないボールを打ち合っているのです。すると次第にトーマスにもボールを打ち合う音が聞こえてくるようになりました。そしてボールも見えるようになりました。若者がボールを拾ってくれと頼むと、トーマスは見えないボールを拾い投げ返すのでした。

いったい何が言いたいのでしょう、と寝ないで考えました。現実と幻想。レンズを通して見た世界は虚構なのか、肉眼で見た世界は果たして真実なのか、などなど無い頭で色々考えさせられました。以前ちょっとだけその辺を書いたことがありました。

lynyrdburitto.hatenablog.com


BLOW UP - Official Trailer (1966)

音楽の方はというと、ロックがいっぱい詰まったと言いながら、ロックはヤードバーズ(The Yardbirds)の1曲だけです。

あとはハービー・ハンコック(Herbie Hancock)の曲とアレンジです。

参加ミュージシャンは

フレディー・ハバード(Freddie Hubbard,trumpet)

ジョー・ニューマン(Joe Newman,trumpet)

フィル・ウッズ(Phil Wodds,alto sax)

ジョー・ヘンダーソン(Joe Henderson,tenor sax)

ジム・ホール(Jim Hall,guitar)

ロン・カーター(Ron Carter,bass)

ジャック・デジョネット(Jack DeJOHNETTE)

です。

好きなミュージシャンばかりです。

 

ヤードバーズ(THe Yardbirds)の方はというと、この時のメンバー

キース・レルフ(Keith Relf,vo)

ジェフ・ベック(Jeff Beck,g)

ジミー・ペイジ(Jimmy Page,g)

クリス・ドレンジャ(Chris Drenja,b)

ジム・マッカーティ(Jim McCarty)

でした。

ジェフ・ベックジミー・ペイジのツインリードは珍しく、映像が残っているのも貴重です。

この「ストロール・オン(Stroll On)」という曲はこの映画のために録音されたもので、当時はこのサントラ盤でしか聴けませんでした。後に編集盤にも収録されるようになりましたが。

出演シーンはトーマスが女を探すために入ったマーキークラブでヤードバーズが演奏しているという設定です。ジェフ・ベックがアンプの不調に怒ってギターを叩き壊すというシーンが有名です。その壊したギターのネックをファンたちが取り合うのですが、たまたま拾ったトーマスが、クラブを出てからすぐに捨ててしまうシーンは虚無感を表したシーンでした。当初はザ・フーに出演を依頼していたようですが、断られたようです。

1960年代のスィンギング・ロンドンの風俗を観られたのも貴重でした。

写真を拡大、現像していくシーンは緊迫感があって思わず息を止めてしまいました。

 

次の作品は砂丘(Zabriskie Point)』です。

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Side A

1.Heart Beat, Pig Meat - Pink Floyd

2.Brother Mary - Kaleidoscope

3.Excerpt From "Dark Star" - Grateful Dead

4.Crumbling Land - Pink Floyd

5.Tennessee Waltz - Patti Page

6.Sugar Babe - The Youngbloods

 

Side B

1.Love Scene - Jerry Garcia

2.I Wish I Was A Single Girl Again - Roscoe Holcomb

3.Mickey's Tune - Kaleidoscope

4.Dance Of Death - John Fahey

5.Come In Number 51, Your Time Is Up - Pink Floyd

 

 

映画は

監督:ミケランジェロ・アントニオーニ

主演:マーク・フレチェット、ダリア・ハルプリン

制作:1970年 アメリ

 

アントニオーニにとって3年ぶりのメガホン、初のアメリカ映画です。この映画はリアルタイムで観ました。

しかし、前作の『欲望』の印象が強烈すぎて、この作品の印象はリアルタイムで観たはずなのに極めて薄いです。よく憶えていないくらいです。

最後の爆発シーンが鮮明に残っています。

学生運動の最中、学校を抜け出しセスナ機を盗んで砂丘へと向かう青年。そこで女性と知り合い愛し合います。砂丘では何組ものカップルが愛し合っています。

別れた後、青年は空港に戻り、警官に発砲されて死にます。女性の方は査収の中の邸宅に向かいます。そこを離れると、いきなり建物が爆発します。その爆発がピンク・フロイドの演奏をバックに延々といつまでも続きます。

  


Zabriskie point (1970) - trailer

 

音楽の方は、ピンク・フロイド(Pink Floyd)グレイトフル・デッド(Grateful Dead)カレイドスコープ(Kaleidoscope)ヤングブラッズ(The Youngbloods)、そしてジョン・ファヒー(John Fahey)です。

何といっても注目されたのはピンク・フロイドの起用でしょう。ピンク・フロイドはこの映画のためにわざわざ曲作りから始めました。他にもたくさんの曲を作ったようですが採用されませんでした。ニック・メイスンは映画を観た後、「アントニオーニの音楽の使い方はイモ。最悪だ」とコメントを残したそうです。ピンク・フロイドの採用されなかった曲は後に2016年のボックスセットに収録されました。

映画ではローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)の「You Got the Silver」も流されましたが、サントラ盤には収録されませんでした。

サイケデリック・バンドのデヴィッド・リンドレイ(David Lndley)在籍のカレイドスコープの曲が2曲、ジェシ・コリン・ヤング率いるヤングブラッズの曲が1曲入っていてこれが嬉しいですね。

グレイトフル・デッドからは「ダークスター」の一部、それにジェリー・ガルシアのギターソロです。

そして珍しいのはジョン・ファフィ―です。ファフィ―のアコースティックギターは最高です。

パティ・ペイジテネシー・ワルツ」も収録されています。

 

こうしてサントラ盤を聴き返してみると、映画の場面が浮かんだりしてきます。やはり映画を観ていないで、こうしたサントラ盤を聴いても散漫な感じを受けるだけかもしれません。映画を観てのサントラ盤、なのかもしれません。

 

 

それでは今日はこの辺で。