Flying Skynyrdのブログ

映画や音楽、本についての雑文

映画『たちあがる女』を観る

昨日のキネ旬シアターは『たちあがる女』でした。

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監督:ベネディクト・エルリングソン

主演:ハルドラ・ゲイルハルズデッティル、ヨハン・シグルズアルソン

制作:2018年 アイスランド、フランス、ウクライナ

 

合唱団の講師と環境活動家という二つの顔を持つ女性の戦いのドラマです。原題は「Woman At  War」、つまり「戦う女」です。

 

アイスランドの田舎町に住むハットラはアマチュア合唱団の指揮者をしています。彼女にはもう一つの顔がありました。環境活動家として地元のアルミニウム工場に対し孤軍奮闘の戦いを挑んでいるのです。

 

そんな彼女にある日、知らせが届きます。長年の念願だった養子を迎え入れる申請が通ったのです。とうとう母親になれるのです。その前にハットラはアルミニウム工場との戦いに決着を付けようと目論見ます。さて、その決着は・・・。

 

ネタバレです。

冒頭からハットラが送電線を切断するシーンから始まります。場所はアイスランドの大草原です。こんなだだっ広い平原にたった一人で破壊活動に取り組んでいます。環境活動家というよりはテロリストです。 このテロ行為は成功し、工場は操業ストップに追い込まれます。ヘリコプターの追跡に会いますが、近所の農業主ズヴェインビヨルンに助けられます。彼と話すうち、自分たちはいとこ同志かも知れないということになり、その後も何かと手助けをしてもらうことになります。

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ハットラのもとに1通の手紙が届き、間もなく電話があり、養子の話が決まったというのです。それはハットラが4年も前に申請したものでした。彼女自身も忘れていました。ハットラはちょっと戸惑いましたが、すぐに決心しました。養子の相手はウクライナに住む4歳の女の子ニーカでした。ニーカは両親を紛争で亡くし、亡くなっていた祖母のそばに何日も寄り添っていたということです。

 

ハットラには双子の姉アウサがいます。ハットラはある決意をし、もしもの時はニーカをアウサに託すつもりでした。ハットラは再び送電線の破壊行為を実行する決心を固めたのでした。そして犯行予告のビラを撒きました。政府は警戒態勢を敷きます。その警戒の中、ハットラは大草原に向かいます。そして鉄塔の爆破に成功します。しかし、自分も手に傷を負います。政府の追跡が始まります。ドローン、ヘリコプター、警察犬など大掛かりな捜索活動が始まります。ハットラは大草原の中を逃げ回り、ある時は川の中や氷河の中に潜み、何とか逃げ延び、再びズヴェインビヨルンに助けられます。

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ハットラはウクライナに向かうため空港に入ります。ところが空港ではDNA検査を行っていました。ハットラが傷を負って出血した際に血液を採取されていたのです。順番が回ってきそうになった時に、臨時ニュースが入り、犯人が捕まったというのです。その犯人というのは姉のアウサでした。おそらくDNAが一致したのでしょう。ハットラはすぐに空港を出てタクシーで街に引き返しますが、途中で気分が悪くなり車を降ります。すると姉の逮捕は誤認逮捕だったことが分かり、再び追われる身になり、とうとう逮捕されました。

 

ハットラは刑務所にいます。そこにアウサが面会に来ます。監視カメラで監視中に停電が起きます。これはアウサと打ち合わせたズヴェインビヨルンの仕業です。この間に姉妹は入れ替わります。アウサはスピリチュアルの信奉者で、インドへ行って修行することになっていましたが、修行する場はインドでも刑務所でも変わらないと言い、ハットラにニーカに会いに行くようにと、やってきたのでした。そして上手いこと入れ替わり、ハットラは刑務所から出られました。

 

そして大雨の中、ウクライナの孤児院に行き、ニーカに会いました。かわいい女の子でした。ニーカを連れてバスに乗り空港に向かいますが、途中で大雨のため道路の水かさが増し、バスから降ろされ、乗客は歩いていかざるをえません。ハットラもニーカを抱いて水の中を歩き始めました。

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このラストシーンは地球温暖化に対する激しいメッセイージだと思います。

 

途中のテレビに映し出される報道番組でも、大雨、洪水、海面の上昇などシーンが流されていました。

 

それにしても、このハットラという女性の強さと言ったら、筆舌に尽くしがたいです。たった一人で政府に対し宣戦布告するという、大胆不敵な行動。とてもじゃありませんが真似できません。スクリーンに映し出されるアイスランドの平原はどこまでも続き、そして限りなく美しい。その美しい自然を破壊することは許せない、ということなのでしょう。

 

この映画を観ていて、ふと思い出したのが1970年代に起きた連続企業爆破事件の「東アジア反日武装戦線」の面々です。大道寺将司、あや子、片岡利明、佐々木則夫の「狼」グループ。斉藤和、浴田由紀子の「大地の牙」、そして黒川芳正、宇賀神寿一、桐島聡の「さそり」グループ。

彼らの思想はあくまでも「反日」であり、資本主義を担う企業が標的でした。超法規的措置で釈放された大道寺あや子と佐々木則夫は現在も逃走中です。大道寺将司は死刑判決で現在は獄中で執筆活動をしており、句集も何冊か出版しています。斉藤和は逮捕後、車の中で用意していた青酸カリを飲んで自殺しました。これで事件の詳細が不明になりました。片岡利明は獄中結婚し、現在は益永利明として死刑執行を待っています。黒川芳正は無期懲役で収監中。浴田由紀子と宇賀神寿一は釈放、桐島聡は逃走中です。

 

話が逸れました。この映画でもう一つ特徴的なのが音楽です。音楽がBGMとして流れるのではなく、演奏者が登場するのです。3人の楽器を演奏する男と、ウクライナ?の民族衣装をまとった3人の女性コーラスが何度も何度も登場するのです。但し、ハットラには彼らが見えていません。彼らはハットラを見守っているのです。これは特徴的な音楽の使い方でした。

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アクションあり、逃走劇あり、社会的メッセージありで楽しめる映画でした。

 


映画『たちあがる女』予告編

 

それでは今日はこの辺で。