昨日のキネ旬シアターは『初恋 お父さん、チビがいなくなりました』でした。
監督:小林 聖太郎
原作:西 炯子
主演:倍賞 千恵子、藤 竜也、星 由里子
制作:日本 2019年公開
西 炯子の漫画を映画化したものです。星由里子の遺作となりました。
結婚50年。夫の勝と妻の有喜子夫婦は3人の子育ても終わり、夫婦二人きりと黒猫チビとの生活です。
夫は毎日商店街の将棋道場で過ごします。妻は毎日、韓流ドラマを観てから買い物に出かけ、将棋道場の前で夫を見かければ手を振りますが、夫は知らん顔です。
夫は帰宅すると、靴下を妻に脱がせててもらい、洋服は脱ぎっぱなし。話しかけても聴いているのかいないのかわからぬ有様。
妻の話し相手は黒猫のチビだけです。そのチビがある日いなくなってしまいました。妻は末娘の菜穂子の紹介でペット探偵にチビを探してもらいますがなかなか見つかりません。
夫は「チビは死に場所を探しに出て行ったんだ。もう死んでるよ」と言います。それでも妻はチビが帰ってくると信じています。ある日妻は菜穂子に「お父さんと別れようと思ってる」と言うのです。仲良し夫婦だと思っていた菜穂子は驚きました。また別な日、妻とペット探偵が抱き合っているのを見かけてしまいました。菜穂子は慌てて兄と姉を呼んで相談し、久しぶりに家族がそろって鍋を囲むことにしました。
しかし、肝心なことは何も聞き出せず、兄・姉はそそくさと翌日帰ってしまいました。
夫は最近ある女性とよく会っていました。それは志津子というかつて妻と一緒に駅のミルクスタンドで働いていた女性です。妻には内緒でしたが、妻は夫の持っていた店のマッチを見つけてその店を訪ねると二人は会っていたのです。
回想
妻は夫が昔から志津子のことを好きだったのではないかと思っていました。何故なら、昔、夫が毎日ミルクスタンドに寄ってミルクを買う時には志津子にしか注文しなかったからです。そして志津子も気のあるそぶりをしていたのです。
夫は妻にとって、言葉も交わしていませんが、初めて好きになった人でした。しかしその恋も志津子というライバルがいて諦めかけていました。その頃、叔母から見合い話を持ち掛けられ、写真を見て驚きました。夫だったのです。見合いの席で夫は「最初に見合いをした人と結婚すると決めていました。」と言い、二人は結婚したのです。
妻は毎日チビのために食事を用意していましたが、夫が「こんなものがあるから駄目なんだ」と大声で怒鳴り、捨ててしまいました。ショックを受けた妻は雨降る中、傘も指さずにチビを捜しに出かけました。そしていつの間にか菜穂子のマンションまで来てしまいました。驚いた菜穂子は家にあげ一晩泊めました。菜穂子は「別れてもいいんじゃない。ここにはいつ来てもいいよ」と言ってくれました。
翌日家に帰ると妻は夫に「離婚してください」と告げます。夫は驚き声も出ません。そして悶々と一夜を過ごします。しかし、翌日チビが見つかったという連絡が入りました。でもそれはチビじゃありませんでした。結局離婚話もうやむやになってしまいました。
夫は相変わらず志津子に会っていました。夫は最近ボケてきて、家に帰れず警察のお世話にもなった話をしました。妻には言えませんでしたが、志津子に打ち明けました。志津子は「奥さんには言ったの?」と聞きますが、夫は「言っていない、言ってもしょうがない」と答えます。志津子は「言わなきゃだめ、奥さんは何でも知りたいと思っているはずよ」と諭しました。
その日、夫は「なぜ離婚したいんだ」と聞きました。すると妻は思っていることを話しました。「私とはお見合いだから仕方なく結婚したんですか? 私はずっと好きでした。お父さんは私のこと好きなんですか?」と。
夫は答えます。「あの頃すごく好きな人がいた。でも自分は田舎者だから相手にされないと思っていたから、最初に見合いした人と結婚すると決めていた。そしたらその好きな人がお見合いの席にいたんだ。俺は嫌われるのではないかとどうしていいかわからなかった。お前のことが好き過ぎて」と答えます。妻は驚き感激します。「なんで言ってくれなかったの?」
そしてチビが戻ってきました。メデタシ、メデタシ。
まさに昭和時代の関白亭主と貞淑な妻のよくあるベタな話です。判っていながらホロリとさせられます。優しい奥様で子供達も優しい、いい家族です。
エンディングの曲は笠置シズ子の『あなたとならば』、エンドロールも昭和の画像そのものです。時代は現在でも昭和の臭いがプンプンしていました。
演じる倍賞千恵子さんと藤竜也さんが年を重ねましたがいい味が出ていました。
倍賞千恵子さんは『下町の太陽』から始まって『寅さんシリーズ』の「さくら」でお馴染みです。高倉健さんとの共演も何作かありました。彼女の歌唱力は抜群です。さすがにお年を召されましたが理想的な昭和の妻を演じておりました。
藤竜也さんは『反逆のメロディー』『野良猫ロックシリーズ』など日活ニューアクションで人気俳優となって大島渚監督の『愛のコリーダ』『愛の亡霊』で本番俳優として名を馳せました。亭主関白の頑固おやじ役ははまり役となっています。芦川いずみの旦那様です。最近は渋い役が多いです。
そして星由里子さんの遺作となりました。『若大将シリーズ』『絶唱シリーズ』などでその美貌を披露しました。大好きな女優さんでした。相変わらずお奇麗でした。星由里子さん、さようなら。
遺作と言えば日曜日のNHK大河ドラマ『いだてん』を観ていたら、なんとショーケン(萩原健一)が出ているではないですか。これには驚きました。まさかショーケンの姿をこんなところで観られるとは。これが遺作なのでしょうか。
それでは今日はこの辺で。