Flying Skynyrdのブログ

映画や音楽、本についての雑文

聴き比べ『朝日のあたる家(The House of the Rising Sun)』

「朝日のあたる家」と言えば、私などは真っ先にアニマルズ(The Animals)The House of the Rising Sunが頭に浮かびます。ヴォーカルのエリック・バードン(Eric Burdon)の迫力ある声が何とも言えません。その後、ボブ・ディラン(Bob Dylan)を聴くようになって、この曲が彼のファーストアルバムで取り上げられていることを知りました。それでも、やはりこの曲はアニマルズでしょう、と思っていました。

 

日本では浅川マキが自身の訳詞で歌っていることも知りました。これもまた、浅川マキらしくすばらしい曲に仕上がっています。

いつだったか、確かNHKだったと思いますが(記憶が定かではありません)、ちあきなおみの特集を放映していた時がありました。何気なく観ていると、この「朝日のあたる家(朝日楼)」が始まりました。思わず息をのみました。その迫力に圧倒されました。以前から歌唱力には定評がありましたが、この曲での彼女はまるで別人のような声と表現力で観ているものを引き込みました。

すぐにこの曲が収録されているCDを探し、購入しました。それが『VIRTUAL CONCERT 朝日のあたる家』でした。

 

01.百花繚乱

02.かもめの街

03.あなたのための微笑み

04.イマージュ

05.祭りの花を買いに行く

06.ダンチョネ節

07.紅とんぼ

08.酒と泪と男と女

09.東京の花売娘

10.ひとりぼっちの青春

11.スタコイ東京

12.黄昏のビギン

13.朝日のあたる家 (朝日楼)

14.ラ・ボエーム

15.アコーディオン弾き

16.プラットホーム

17.喝采

18.紅い花

19.伝わりますか

 

「VIRTUAL CONCERT」とあるように仮想のコンサート仕立てで、拍手が入りますがスタジオ録音です。

このアルバムは選曲が素晴らしいです。自身のヒット曲「紅とんぼ」喝采もありますが、河島英五酒と泪と男と女、そして水原弘の幻の名曲と言われた「黄昏のビギン」。彼女がこの曲をカバーしたおかげで、この曲が再び息を吹き返しました。

 

そして何といっても「朝日のあたる家(朝日楼)」です。この曲は元々がアメリカのトラディショナルで1933年にクラレンス・アシュレイというフォークシンガーが祖父から教わったものを録音したのが最初でした。その後ウディ・ガスリーやレッド・ベリー、ジョーン・バエズなどが歌っていました。そして1962年にボブ・ディランがデビューアルバムで取り上げ話題になりました。1964年にはアニマルズで大ヒットします。全米1位だけでなく、地元イギリスでも1位に輝き、世界中でヒットし知られるようになりました。もちろん日本でも大ヒットでした。

 

この曲は「The House of the Rising Sun」という娼館に身を落とした女性の懺悔の歌です。ただし、アニマルズは主人公を男性に変えて歌っています。ですから娼館ではなく、少年院と解釈されています。

 

Bob Dylan バージョン

There is a house in New Orleans they call the Rising Sun

And it’s been the ruin of many a poor girl and me, oh God, I’m one

 

My mother was a tailor, she sewed these new blue jeans

My sweetheart was a gambler, Lord, down in New Orleans

 

Now the only thing a gambler needs is a suitcase and trunk

And the only time he’s satisfied is when he’s on a drunk

 

He fills his glasses up to the brim and he’ll pass the cards around

And the only pleasure he gets out of life is rambling from town to town

 

Oh, tell my baby sister not to do what I have done

But shun that house in New Orleans they call the rising sun

 

Well with one foot on the platform and the other foot on the train

I’m going back to New Orleans to wear that ball and chain

 

I’m going back to New Orleans, my race is almost run

I’m going back to end my life down in the rising sun

 

There is a house in New Orleans they call the Rising Sun

And it’s been the ruin of many a poor girl and me, oh God, I’m one

 

日本語訳した浅川マキの詩が好きです。

 

あたしが着いたのは ニューオリンズ

朝日楼という名の 女郎屋だった

 

愛した男が 帰らなかった

あんとき私は 故郷(くに)を出たのさ

 

汽車に乗って また汽車に乗って

まずしいあたしに 変わりはないが

 

ときどき思うのは ふるさとの

あのプラットホームの 薄暗さ

 

誰か言っとくれ 妹に

こんなになったら おしまいだってね

 

あたしが着いたのは ニューオリンズ

朝日楼という名の 女郎屋だった

 

浅川マキは例によって抑え目に歌っていますが、ちあきなおみは熱唱です。どちらも味わい深い歌唱になっています。

 

ちあきなおみという歌手は1972年に「喝采」でレコード大賞を獲っています。それまでも歌謡曲分野でヒット曲を飛ばし、人気もありました。私自身は特別な思い入れはありませんでしたが歌の上手さには感心していました。その後もテレビドラマに出演したり、宍戸錠の弟・郷暎治と結婚したりと、話題を振りまいていましたが、そのうち見かけなくなりました。そして郷暎治が無くなると、一切テレビなどには出演し亡くなりました。実質上の引退でした。郷暎治の葬儀の時には「私も一緒に焼いて」と言ったという話は有名です。

引退後も彼女の評価は高まるばかりです。CD全集なども数多くリリースされ、その売り上げも好調らしいです。

「朝日のあたる家」はそんな彼女の歌唱力が発揮された逸品だと思います。

 


朝日楼(朝日のあたる家) ちあきなおみ UPC‐0003


Maki Asakawa 浅川マキ 「 朝日楼 (歌詞付) 」


「朝日のあたる家 The House of the Rising Sun」アニマルズ、The Animals


House of the Rising Sun

 

それでは今日はこの辺で。