またまたまた古~い映画で恐縮です。しかしながらこれを書かない訳にはいきません、ってちょっと大袈裟ですね。
日活のムード・アクションの中でも、いや裕次郎の映画の中でも最高傑作ではないかと勝手に思っている映画、それが『赤いハンカチ』です。裕次郎のカッコよさが頂点に達しました。
監督:舛田 利雄
制作:1964年 日活
上映当時は観ていません。初めて観たのは、これもおそらく先日紹介した『夕陽の丘』と同じく池袋の文芸座のオールナイトだったと思います。大学生時代です。ですから初上映からはずいぶん経っていました。『二人の世界』や『夜霧よ今夜も有難う』はリアルタイムで観ていましたので裕次郎に目覚めるのがちょっと遅かったのです。
ストーリーは裕次郎演ずる三上刑事と二谷英明演じる石塚刑事は横浜で麻薬ルートを追っていました。その際に逮捕した平塚という男を取り調べますがなかなか自白しません。三上は平岡を留置していることを娘の玲子(浅丘ルリ子)に知らせにいきます。そこでお互いに一目惚れします。
平岡を護送中に逃げようとした平岡を三上が誤って射殺してしまいます。過失とはいえ世間の風当たりは強く二人の刑事は退職しました。
それから4年、三上は北国の工事現場で飯場暮らしです。そこに横浜からかつての同僚土屋が訪ねてきます。そして4年前の事件には裏があると囁きます。石塚は退職後、スーパーマーケットを開きその経営者として羽振りをきかせていたのです。さらに玲子と結婚していたのです。土屋はその開業資金の出所を疑っていたのです。
三上は疑問を解くために横浜に戻ります。そこで石塚と玲子の姿を見てショックを受けた三上は泥酔し喧嘩して病院に運ばれました。玲子が病院に見舞いに来ます。玲子は今でも三上を忘れられませんでした。玲子は父の死に石塚が関与しているのではないかと疑っていました。石塚は玲子の三上に対する気持ちに気付き、三上を追い払うようヤクザに依頼しました。ヤクザに襲われた三上は逆にヤクザに大けがをさせ、指名手配になってしまいます。
石塚邸に潜入した三上は石塚が電話で三上を殺すよう命じているのを聞いてしまいます。4年前に平岡が殺されたのは石塚の陰謀だったのです。石塚は麻薬組織と繋がっていたのです。そしてそれがバレるのを恐れて平岡を殺したのです。三上は石塚を殴ります。使用人たちが騒ぎ出したので、三上は逃げ出しホテルに戻ります。ホテルには玲子が待っていました。二人は抱き合います。しかし、ホテルには警察が詰めていました。三上はおとなしく手錠を受けます。一緒に玲子がいたことに石塚はショックを受けます。
県警に呼び出された石塚は三上と対面し、三上は石塚の拳銃を奪い、平岡殺しの推理を石塚に聞かせます。そしてそれを認めた石塚に対し、「俺がこの手で裁く」と言って三上は銃口を向けます。その時、それを見ていた土屋は「待て、証拠はある」と言います。土屋は二人の会話を録音していたのです。しかしその瞬間銃声が聞こえます。石塚が撃たれました。撃ったのは玲子だったのです。撃たれた石塚は撃ったのが玲子だと気付くと、近づいていき「ここを撃つんだ」と心臓を指し、玲子から銃を奪い、自ら腹に2発撃ちこみ倒れます。そして土屋に「撃ったのは玲子じゃない、最初から自殺だ」と呟きます。土屋は頷きます。そして「玲子!」と叫んで息絶えます。土屋は録音テープを燃やします。
石塚の墓参りを玲子と一緒にした三上は静かに去って行きます。
ラストシーンはまさに『第三の男』さながらです。男と女が逆ですが。
『太陽の季節』で彗星の如く現れた石原裕次郎。その後も日活で主演映画を次々とヒットさせ、一方で歌の方でもヒット曲を連発しました。そんな裕次郎のヒット曲をタイトルにしたアクション映画がこれまた次々と出来ました。それらが後にいわゆる日活ムード・アクションと呼ばれるようになりました。
そんな中でもこの『赤いハンカチ』は歌の良さもさることながら、ストーリーも役者も良かった。何といっても浅丘ルリ子さんです。映画の中で結婚する前の純情なお嬢さんのような姿から、結婚後の有閑マダム然とした女性への変身ぶりが見事でした。二谷英明の非情な、そして劣等感にまみれた役が嵌っていました。高卒刑事が大卒刑事に抱く劣等感が犯罪のもとになっていたのです。
飯場でポロンポロンとギターを弾きながら「赤いハンカチ」を歌うシーンがいいです。ちなみに映画には赤いハンカチなるハンカチは一度も登場しません。
歌も映画も裕次郎の最高傑作の一つだと思っています。懐かしすぎますが。
追記
この映画でも裕次郎とルリ子はまたしても結ばれません。いつも悲しい。
『赤いハンカチ』
作詞:萩原四朗、作曲:上原賢六
1 アカシアの 花の下で
あの娘(こ)がそっと 瞼を拭いた
赤いハンカチよ
怨みに濡れた 目がしらに
それでも涙は こぼれて落ちた
2 北国の 春も逝(ゆ)く日
俺たちだけが しょんぼり見てた
遠い浮雲よ
死ぬ気になれば ふたりとも
霞の彼方に 行かれたものを
3 アカシアの 花も散って
あの娘はどこか おもかげ匂う
赤いハンカチよ
背広の胸に この俺の
こころに遺(のこ)るよ 切ない影が
もちろん歌も素晴らしい!
それでは今日はこの辺で。