先日、NHK・BSのドキュメンタリー番組「仕事の流儀 吉永小百合スペシャル」という番組を観ました。
私は小学校から吉永小百合さんのファンです。小学校の頃に小百合さんが出演していた日活映画を観てたちまちファンになりました。その辺のことは何度か書いたような気がしますので省略します。
その小百合さんが異例の長期密着取材を受けた番組という触れ込みだったので、当然ながらビデオまで撮って観ました。
小百合さんは1945年生まれの74歳。1959年のデビュー作『朝を呼ぶ口笛』以降、これまでに120本以上の映画に出演しています。
父親の事業の失敗でそれまでの豊かな生活から一変して貧乏生活を送りましたが、母親の勧めでラジオ出演などをして生活を支えました。そして女優の道へと進みます。小学校の時に学校で演じた芝居を観ていた小学生が涙を流しているのを見て女優への志望を決めたようです。
今回の取材は現在公開されている映画『最高の人生の見つけ方』の製作現場に10か月間という長期にわたっての取材でした。
山田洋次監督や共演者の天海祐希のインタビューなどを交えての75分の番組でした。
番組の中で小百合さんは「自分は決してプロフェッショナルではない」と言います。番組の主題が「プロフェッショナル」ですから、当然そういう質問になるのでしょうが、本人は「プロがどういう者か、アマチュアとの違いは何かなどよくわからない」と言います。ところが、このドキュメンタリーを見る限り、立派なプロフェッショナルでした。
役に成りきるための努力は半端じゃありません。映画出演が決まった時から、ほぼ映画のことしか考えなくなるそうです。その役にどっぷり嵌まります。そして演じる役の生まれ故郷を訪ね、その空気を味わう。そうしないと役を演じきれないと言います。それはある意味不器用だということでもありますが、その努力は並大抵ではありません。本人は「それは努力ではない。最低限、身につけなければいけないもの」とあくまでも謙虚です。
74歳にして1日2時間の筋肉トレーニング。病気の役柄のため、食事は減らし、ゲッソリとし、病人感を出します。本気で演じるために骨折しそうにもなる。このストイックさは紛れもなくプロフェッショナルです。「演じているのに演じてないように見せる」これが理想と言います。
そんな小百合さんですが、挫折もありました。日活時代に築いた清純派女優の称号ですが、青春映画が下火になるとともに、小百合さんの出番が減ります。かといってそれまでの清純派のイメージを払拭することがなかなかできませんでした。ストレスの為一時は声が出なくなるほどになりました。そして1973年、両親の反対を押し切って結婚し、映画界から一旦去ります。小百合さんが母親に逆らったのはこれが初めてでした。それまでは親に逆らったことなど一度もありませんでした。ようやく自分の足で立とうとしたのでしょう。この時から両親との不仲が騒がれました。
しかし俳優業を諦めきれずに映画界に復帰し、1975年の『青春の門』でこれまでの清純な娘役からいわゆる女性役に生まれ変わりました。
小百合さん本人は1980年の高倉健さんとの『動乱』に出演したことで、今の自分があると言っています。健さんの映画に対する取り組み方に圧倒されたようです。この映画以降、現在までその時の気持ちを大切に、映画に取り組んでいるのです。
小百合さんはテレビのトーク番組などにはあまり出ませんので、素の様子はなかなか秘密めいていますが、このドキュメンタリーを見る限り、まったく普通の女性です。偉ぶったところもなく、あくまで控えめで、謙虚で、いわゆる芸能人などという感じは全くしません。そこがまた魅力なのです。
映画を撮る時はいつも「これが最後かも」と思いながら演じているそうです。ファンとしてはいつまでも頑張ってもらいたいと願います。女優一筋60年。最後のスターですから。
先日亡くなられた八千草薫さんと共通する内面に秘めた強さを改めて感じました。
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それでは今日はこの辺で。