Flying Skynyrdのブログ

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映画『だれもが愛しいチャンピオン 』を観る

先週のもう1本のキネ旬シアターは『だれもが愛しいチャンピオン 』でした。

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監督:ハビエル・フェセル

主演:ハビエル・グティエレスアテネア・マタ、フアン・マルガージョ

製作:2018年 スペイン 2019年 日本公開

 

粗野なプロバスケットチームのコーチが知的障がい者のチームを指導することによって、心に変化を生じていく様を描いた作品です。

 

プロ・バスケットボール・チームのサブコーチ、マルコは負けることが大嫌いで、ある日試合中にヘッドコーチの指示をめぐって言い争いになり、相手を殴ってしまいます。さらに飲酒運転で逮捕されてしまいます。

チームからは解雇され、裁判所からは3カ月のボランティア活動を命じられます。その命令というのが知的障がい者のバスケットボールチームのアミーゴスを指導することでした。

 

マルコはやむなくそれを引き受けることにしました。しかし、現実は厳しいものでした。言葉は上手く通じず、バスケットボールの練習とは程遠い毎日です。しかし、マルコはチームの責任者からそれぞれのメンバーの抱える事情を聞き、彼らに対する見方を変え、辛抱強く指導することにしました。するとメンバーもマルコに対する接し方も変わり、チームの状態も上がってきました。そして、知的障がい者のバスケットボール・リーグに出場して初勝利を収めました。意気上がるチームは勝利を重ね、優勝決定戦に出場することになりました。

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一方、マルコは私生活でも問題を抱えていました。仕事はクビになり、妻のソニアとの関係も上手くいっていませんでした。ソニアは子供を欲しがっていましたが、子供を持つことに自信を持てないマルコはソニアに嫌われたと思い込み家を出てしまっていたのです。しかし、障がい者のチームを指導していくうちにその心に変化が生まれ始めました。

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優勝決定戦は大接戦となりましたが、破れて2位となりました。がっかりするマルコでしたがチームは大喜びです。そして会場もお互いの健闘を称えて大騒ぎです。マルコはその姿を見ながらスポーツの本質を見た思いでした。そしてマルコはソニアと子供をつくる決心をしたのでした。

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マルコのコーチとしての活躍を見ていたかつてのチームのコーチがマルコをスペイン代表チームのサブコーチとして迎えると言ってきたのです。マルコは黙ってチームを去ることにしましたが、チームのメンバーは全員が笑顔でマルコを送り出すのでした。

 

当初、コーチとメンバーの会話や意志が全くかみ合わない場面は思わず笑ってしまいました。しかし、試合や練習を通して次第にお互いの意志が通じるようになり、最後には喜びを分かち合えるまでになりました。

 

マルコは妻が子供を欲しがっていることを知りながら、親になる自信が持てずに逃げていました。妻は40過ぎで、これから妊娠したらもしかして障がい者が生まれるかもしれないと妻に言ってきかせます。妻は怒って去ります。それを聞いていたメンバーの一人が「自分も障がい者は嫌いだ。でもコーチみたいなお父さんならいい」と言います。これを聞いたマルコの心は決まりました。

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この映画に登場するチームのメンバーは実際に障がい者の俳優たちです。その演技力たるや大したものです。映画のストーリーはベタなヒューマン・喜劇です。しかし、俳優たちの演技を観ているだけで心癒されます。最近では日本でもパラ・スポーツ人気も定着しつつあり、障がい者に対する社会の理解も一昔前に比べたら雲泥の差があります。

 

しかし、一方で「津久井やまゆり園事件」など差別・虐待も無くなりません。今年は東京パラリンピックも開催されます。1964年の東京オリンピックの時に始まったパラリンピックが再び東京で開催されます。私などはこの時に初めて障がい者スポーツというものを知ったわけですが、今回の大会は56年前とは比較にならない規模です。明らかに昔とは障がい者に対する社会の意識が変わったことを実感できる大会になることを期待しましょう。


映画『だれもが愛しいチャンピオン』予告編

 

それでは今日はこの辺で。