Flying Skynyrdのブログ

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映画『聖なる犯罪者』を観る

先日のキネ旬シアターは『聖なる犯罪者』でした。

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監督:ヤン・コマサ

主演:バルトシュ・ビィエレニア

製作:2019年 ポーランド・フランス 2021年 日本公開

 

久しぶりのポーランド映画です。数々の映画賞を受賞しました。アカデミー賞国際長編映画賞にもノミネートされましたが、惜しくも受賞は逃しました。この年受賞したのが韓国の『パラサイト  半地下の家族』でした。

 

少年院を仮出所した青年が過去を偽り聖職者に扮するという映画です。実話だそうです。18禁です。

 

殺人の罪で少年院に入所していたダニエルは、熱心なキリスト教信者となり仮出所を迎えます。仮出所後の就職は田舎町の製材所です。ダニエルは尊敬する神父トマシュに神学校に行きたいと願い出ますが、犯罪者は神父になれないと言われ、あきらめざるを得ませんでした。

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出所するといきなり酒・タバコ・ドラッグ・女と遊び放題の1日を過ごし、バスで製材所へ向かいます。製材所へ着くなり、ダニエルは嫌気がさし、町をブラつきます。そして偶然通りかかった教会に入ります。そこでマルタという女性と知り合い、自分は司祭で名前はトマシュだと嘘をつきます。盗んできた司祭服を見せられた彼女は、それを信じ神父にダニエルを紹介しました。神父は体を壊しており、しばらく代わりを務めて欲しいと頼むのでした。

ダニエルは住民の告解に応え、見よう見まねでミサを行ったりしながら、次第に住民の信頼を得るようになりました。

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ある日、ダニエルは教会の近くに6人の写真を飾った献花台が置かれていることについて、マルタに尋ねると、交通事故で7人が亡くなったことを聞かされました。亡くなったのが7人で、中にはマルタの兄もいました。写真は6人しかないことを聞くと、車に乗っていたのは若者6人で、相手方の車の運転手、スワヴェクは飲酒運転だったというのです。

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亡くなった6人の遺族はもちろん、町の人の悲しみも深い者がありました。かたやスワヴェクは葬儀も行われず、埋葬もされていませんでした。そして妻のエヴァ村八分状態でした。

 

ダニエルはエヴァの話を聞きたいと、マルタと共に家を訪れますが、けんもほろろに追い返されます。マルタはダニエルに事故の真相を話します。飲酒していたのは6人の方だったのだと。警察でもそれは証明されていると。そして事故の前の6人の様子を撮影した動画を見せるのでした。そこには酔っ払った6人の姿がありました。

 

ダニエルはスワヴェクの葬儀を執り行うと決心し、住民に告げます。遺族は反対しますが、ダニエルとマルタは遺族がエヴァに送った数々の罵詈雑言で埋め尽くされた手紙を見せます。「これが善人がすることなのか」と。マルタは母親に家を追い出され、協会にやって来ました。そして、ダニエルと結ばれます。

 

葬儀は執り行われました。遺族の中からも参加するものが現れました。しかし、そこに本物のトマシュ神父が現れました。そして、ダニエルに詰め寄り、すぐに街から出ていけ、と詰め寄ります。ダニエルはミサだけやらせてほしいと頼みますが、トマシュ神父は受け付けません。ダニエルは祭壇の前で裸になり、刺青を見せ、教会を出ていきました。

 

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そして再び少年院へ逆戻りです。そこにはダニエルが殺した男の兄、ボーヌスが待ち構えていました。彼のダニエルに対する憎しみは半端ではありませんでした。監視の目が途切れたすきを狙って、ダニエルに襲い掛かりました。ダニエルはボコボコに殴られますが、一瞬のスキを狙って逆転、反対に頭突きでボコボコにしてしまいます。周りのみんなに止められ、外に出されてしまいます。ダニエルは血だらけになった顔で、目だけを異常に見開き、どこまでも駆けて行くのです。

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一方、町の教会では今までの神父がいつものようにミサを行っており、エヴァもその中に入れるようになっていました。

 

ダニエルの最後の疾走場面は何を意味しているのでしょうか。また、ラストに近いシーンでマルタが最後に誰かの車に乗って去る場面が 映し出されますが、これも不可解でした。

 

この映画では「善」と「悪」、「善人」と「悪人」とはなんだ、ということを改めて考えさせられました。

ダニエルは人を殺し、禁じられている酒、タバコ、ドラッグをやり、過去を偽って司祭に成り済ましています。これだけ見ればまさに「悪人」です。しかし、彼は敬虔なキリスト教徒で、説教も説得力があり、住民にとっては信頼できる「善良なる司祭」なのです。

一方、自動車事故の被害者たちは自分達を「善人」と称し、事故を起こした男の妻を「悪人」扱いして、ひどい仕打ちをしています。妻に罪は無いのにも関わらず。そして、町の権力者である警察や町長、神父も遺族に忖たくし、事故の真相を告げません。真実が伏せられたまま、人は物事を判断します。その危うさはいつでも、どこでも起こりうるのです。

何を考えているのかわからないダニエル。社会も人間も一筋縄ではいきません。

 

 ダニエルを演じる俳優バルトシュ・ビィエレニアの目力には圧倒されます。この映画の凄さはすべてこの目力と彼の顔によるものだといっても言い過ぎではないでしょう。最後の決闘シーンも凄い迫力でした。あっという間の2時間でした。

 

アンジェイ・ワイダロマン・ポランスキーに続く、ポーランドに有望な監督が登場しました。ヤン・コマサ、覚えておきます。

 

実は、この映画について、この記事を書こうか書くまいか迷いましたが、結局書いてしまいました。何故迷ったのかと言えば、宗教の問題を含め、今一つ自分なりに消化しきれない部分があったからでした。まあ、そのうち納得する時があるかもしれません。ということで、書いては見たのですが、案の定支離滅裂になりました。ご容赦願います。

 


信仰深き犯罪者が起こした聖なる罪 映画『聖なる犯罪者』予告編

 

それでは今日はこの辺で。