先日のキネ旬シアターは『ワン・モア・ライフ!』でした。
監督:ダニエレ・ルケッティ
出演:ピエルフランチェスコ・ディリベルト、トニー・エドゥアルト、レナート・カルペンティエーリ
製作:2019年 イタリア 2021年 日本公開
事故に遭遇し死亡した男が、92分間だけこの世に戻れるというお話です。
イタリアのシチリー島で技師として働く中年男のパオロ。女好きで家庭を顧みないダメ親父です。彼の楽しみはスクーターで赤信号をギリギリすり抜けるというものでした。この日もパオロは赤信号をすり抜けるはずでしたが、信号無視の車と衝突して即死してしまいます。
死人でごった返す天国の入り口に送られたパオロは、自分の死は早すぎると役人に猛抗議します。役人は計算間違いはないと言いますが、パオロは健康のためにジンジャー入りのスムージーを飲んでいたことがわかり、再計算するとその分だけ地上に戻れることになりました。その時間は92分間でした。
パオロは監視役の役人と共に地上に戻ると、妻や子供たちと最後の時間を過ごそうと話しかけますが、家族には冷たくあしらわれます。それもそのはず、これまでの家族に対する接し方がそうさせているのでした。
パオロはこれまでの人生を振り返ります。妻や子供たちとの思い出もありますが、遊んだ女たちのことが次々と浮かんできます。しかし、天国に戻る時間が迫ってくると、妻や子供たちへの思いが募ってくるのです。そんな時警察から妻に連絡がありました。「ご主人は交通事故で亡くなった」と。
驚いた妻はパオロに確認します。パオロは正直に自分が死んで、もうすぐ天国へ戻らなければならないと。妻は悲嘆に暮れますが、子供たちとの最後の時間を与えます。パオロは娘や息子にお前たちを愛していると伝えます。子供たちは不審に思いますが、父親を受け入れます。
そして、役人から時間を告げられます。パオロは妻と抱き合い離れようとしません。役人は無理やり二人を引き離し、共にスクーターに乗って一度死んだ例の交差点に向かいます。パオロは泣きながら赤信号の交差点に突っ込みます。果たして結末は・・・・。
なんともバカバカしい話です。落語の『死神』や『粗忽長屋』を思い出します。ただ、落語のようなブラック・ユーモアではありません。
パオロが事故に遭って死ぬ直前に思い浮かべたのは家族ではなく、昔の彼女の言葉やタクシーの順番待ちの疑問、冷蔵庫のライトのこと、緊急停車した電車のドアを壊すハンマーのことなど、どうでもいい些細なことばかりでした。えー、と思いますが、人間いざ死ぬときはそんなもんかもしれませんね。
それにしても、このパオロの奥さんは夫が何度浮気しても見捨てずに愛してくれていたのです。もっともこの奥さんも浮気していたのですが。こんな奥さんを裏切ってはいけませんね、その罰が当たったのでしょう。
急死した中年男、92分間だけ生き返る!映画『ワン・モア・ライフ』予告編
それでは今日はこの辺で。