今朝の新聞で田中邦衛さんの逝去を知りました。88歳でした。誠に残念です。
私は東宝の『若大将シリーズ』から彼の演ずる「青大将」の役に惚れ込んでしまいました。その後も『若者たち』や『網走番外地シリーズ』『仁義なき戦いシリーズ』など数えきれないくらいの映画に出演し、名演を披露しました。
テレビではやはり『北の国から』でしょうか。2013年からは休業状態が続いていました。3月24日、老衰のため亡くなりました。また一人個性派俳優が言ってしまいました。
心よりご冥福をお祈りします。合掌。
さて、先日のキネ旬シアターは『私は確信する』でした。
監督:アントワーヌ・ランボー
出演:マリナ・フォイス、オリヴィエ・グルメ
製作:2019年 フランス 2021年 日本公開
この映画はフランスで実際に起きた未解決事件『ヴィギエ事件』を取り扱った法廷サスペンス映画です。
2000年2月、大学教授ジャック・ヴィギエの妻スザンヌが3人の子供を残し忽然と失踪しました。殺人容疑は夫のジャックに向けられ、逮捕されますが、遺体も発見されず、動機も証拠もなく、不起訴となりました。
2009年、再びジャックは殺人罪で起訴されます。しかし、一審は無罪。検察はすぐに控訴します。そして第二審の始まりです。事件発生から10年が経とうとしていました。
シングル・マザーのノラはジャックの無罪を信じ、著名な敏腕弁護士のデュポン=モレッティに弁護を依頼します。ノラはジャックの娘が自分の息子の家庭教師をしてくれていた関係からジャックの無罪を信じ力になろうと思っていたのです。
デュポンは最初は断りますが、ノラの記録した資料に目を通すとその内容を見て弁護を引き受けました。そして事件関係者の電話の通話記録のテープの文字起こしをノラに依頼するのです。その量は250時間にも及ぶ膨大なものでした。
早速作業に取り掛かると、その作業は困難を極めましたが、新たな事実が明らかになってゆくのです。ノラとデュポンの共同戦線は果たして成功するのでしょか・・・。
今回もネタバレはやめときます。
この事件は当時「ヒッチコック狂の完全犯罪」とフランス国内では大騒ぎになった事件だそうです。死体も発見されず、死んでいるのか生きているのかもわからず、まして証拠も動機もないまま犯人にされて裁判にかけられるなんて日本ではちょっと考えられないことです。
なぜ「ヒッチコック狂」かというと、このジャック教授はヒッチコック映画のファンで、完全犯罪の講義をしたこともあることから、マスコミがヒッチコックを真似た完全犯罪だと騒ぎ立て、世間も大騒ぎになったということらしいです。
日本でもそうですが、ちょっとスキャンダラスな事件はマスコミが大騒ぎしてあらぬ方向に世論を導きます。これが本当に怖いことなのです。特に現在はSNSによってあっという間に世論が出来上がってしまうという恐怖に晒されています。
「推定無罪」あるいは「疑わしきは罰せず」の原則は貫かれたのでしょうか。デュポン・モレッティ弁護士の最後の10分間に及ぶ最終弁論は聞きごたえ十分です。
真実とは何か、正義とは何かを問いかける迫力十分な映画でした。
このデュポン=モレッティ弁護士はその後フランスの法務大臣に就任しました。
ちなみに日本の元法務大臣は公職選挙法違反で裁判中です。なんとも情けない話です。
それでは今日はこの辺で。