監督:日向史有
製作:2021年 日本
二人の若いクルド人を5年にわたって取材したドキュメンタリー映画です。
19歳のラマザンと18歳のオザンは小学生のころから難民申請をするクルド人。彼らはトルコでの迫害を逃れ日本にやってきた難民です。
入管の収容をいったん解除される仮放免許可証を持つものの身分は不法滞在者です。いつ収容されるかという不安はつきものです。しかも住民票もなく移動することも働くこともできません。さらに教育の機会も与えられません。
オザンは解体工事の不法就労をしており、ラマザンは専門学校へ入学したいのですが、なかなか入学が認められません。
そんな中事件は起きます。東京入管に長期収容されていたラマザンの叔父メメットが体調不良を訴えましたが、入管は家族らが呼んだ救急車を2度にわたって拒否します。彼が病院に搬送されたのはそれから30時間後のことでした。
仮放免の者は定期的に入管に近況報告をしなければなりません。入管職員は彼らに対し「帰ればいいんだよ、他の国に行ってよ」と吐き捨てます。
東京周辺には約1500人のクルド人が滞在しているそうです。ところが難民認定されたクルド人は一人もいません。そして入管には多くのクルド人が明確な理由もなく収容されています。日本の難民認定率は先進国に中でも極端に低いレベルです。昨年度は僅かに0.5%でした。
今年の3月には名古屋入管でスリランカ人の女性が亡くなるという悲惨な事件が起きました。遺族たちの真相解明の要求にも入管は真正面から応じていません。極めつけは真っ黒に黒塗りされ文書を15万円で買わされる始末です。
片や2019年には労働力不足のために入管法の改正を行ったりと外国人に対する扱いが極めて都合よく、とても冷たいのが現状です。江戸時代から続く鎖国政策と尊王攘夷思想が今でも脈々と日本人の血に流れているのでしょうか。
ちなみに今年、入管法改正案が閣議決定されましたが、成立は見送りになりました。
監督の日向史有は東部紛争下のウクライナで徴兵制度に葛藤する若者たちを追った『銃は取るべきか』(2016・NHK BS1)や、在日シリア人難民の家族を1年間記録した『となりのシリア人』(2016・日本テレビ)などテレビ・ドキュメンタリーを手掛けています。
それでは今日はこの辺で。