先日のキネ旬シアターは『対峙』でした。
監督・脚本:フラン・クランツ
出演:リード・バーニー、アン・ダウド、ジェイソン・アイザックス、マーサ・プリンプト
製作:2021年 アメリカ合衆国 2023年 日本公開
高校で起きた生徒による銃乱射事件の被害者家族と加害者家族の対話を描いたドラマです。
アメリカ合衆国ののどかな町の高校で銃乱射事件が発生し、十数名の生徒が命を落としました。加害者だった生徒も自殺しました。
6年後、被害者夫妻のジェイとゲイルは息子の死を未だに受け入れられず、セラピストの勧めで加害者の両親リチャードとリンダに面会することになりました。ただし、「リチャードとリンダの責任を追及しない」という約束の元でした。教会の奥の部屋で4人だけの対話が始まりました。
ぎこちなく始まった会話ですが、ゲイルの「息子さんについて憶えていることを全て話してください」という言葉が発せられ、会場は緊迫感が漂ってきました。そして次第に険悪な雰囲気になっていくのですが・・・。
重苦しく、緊迫感に包まれた会話劇です。予備知識なしでこの映画を観ると、何が始まるのかわからないと思います。4人の会話から殺人事件の加害者家族と被害者家族の集まりだということがわかってくるという展開です。
はじめ、4人はテーブルに向い合せる形で座ります。しかし、次第に席を立つ者が出てきて、4人は離れた場所で会話をすることになります。そして終盤、4人はテーブル無しで膝を付き合わせる形で座ります。この設定で4人の心の変化がわかります。加害者夫婦、被害者夫婦とも夫婦間でもその感情や思惑に微妙なずれがあります。
なんとも重々しいテーマですが、どちらの立場の家族も子供を思う気持ちに変わりは無さそうです。しかし、子供を思う気持ちが強くても、子供を理解することとは別。最後に加害者の母親が「子供が怖かった。勇気を出して子供に向き合えばよかった」と言った言葉が胸に沁みました。
監督・脚本のフラン・クランツはこの作品がデビュー作だそうです。デビュー作でこの重たいテーマを取り上げたとは拍手です。元々は俳優で、今回の脚本は批評家からも絶賛されたそうです。
ちなみに原題は『MASS』、日本語で言うと『ミサ』だそうです。「カトリック教会で最も重要な典礼儀式」だそうですが、無学な私には映画における原題の意味がよくわかりませんでした。
それでは今日はこの辺で。