先日のキネ旬シアターは『The Son/息子』でした。
原作・監督:フローリアン・ゼレール
脚本:フローリアン・ゼレール、クリストファー・ハンプトン
出演:ヒュー・ジャックマン、ローラ・ダーン、アンソニー・ホプキンス
製作:2023年 イギリス・フランス
フランスの劇作家フローリアン・ゼレールが自作の戯曲『Le Fils 息子』を『ファーザー』に続いて監督・脚本で映画化した、親子間の心の隔たりを描いたヒューマン・ドラマです。ゼレール監督の『ファーザー』に次ぐ「家族3部作」の第2作目です。
敏腕弁護士のピーターは再婚した妻ベスと生まれたばかりの子供と幸せな日々を送っていました。そんな時、前妻のケイトからピーターとの間の息子のことで相談されます。その内容は息子の様子がおかしく、学校へも行っていないというのです。ケイトはニコラスに問いただしますが、逆ギレされると言います。ピーターは翌日ニコラスに会いに行き、何故学校に行かないのかと尋ねますが、本人もわからないと言います。
そして母親を詰り、父親と暮らしたいというのです。ピーターは帰ってベスにニコラスを迎え入れること説得し同居を始めます。ニコラスは近くの高校へ転向し、セラピーも受けさせます。これですべていい方に向かうはずだったのですが・・・。
何の予備知識もなく、映画のポスターだけを見て映画を観ました。ポスターからは幸せな父子の笑顔が溢れ、映画も暖かい父子間を描いた映画なのだろうと勝手に予想していました。ところがまるで違っていました。なんとも重苦しい、悲惨な結末を迎える映画でした。
父親が子供に人生観を押し付けることはよくある話です。子供はそんな親を煙たがって、一時期反抗します。ところが子供が親になって子供を持つと、あんな父親にはならないぞ、と心に誓ったはずなのに自分の父親と同じようなことをしている自分に気がつきハッとします。この映画の父親も、自分ではいい父親のつもりですが、不登校の息子を甘ったれていると叱咤激励してしまいます。自分が通ってきた道なのに、もはや息子が何を考えているのかわかりません。そして叱責することしかできないのです。
親子間の断絶は昔から言われてきましたが、現在ではもっともっと複雑になっているのかもしれません。学校に行けない、人と交われない、そんな子供を親はややもすると不真面目で甘えているとしか見えなくなっています。しかし、社会環境は昔と大きく変わっています。子供のストレスは親が考えるほど簡単なものではないのかもしれません。この映画のニコラスも結局は親は何もわかってくれないと、最後の手段に出てしまうのです。
なんとも後味の悪い映画でした。が、現代の心の病魔の深刻さを改めて認識させられた映画でした。自分や自分の身の回りの者が心の病に罹った時の対処、果たして自分にできるのだろうか?
アンソニー・ホプキンスがピーターの父親役で出演していますが、彼は息子が若い頃に父子関係で悩んでいたことなど大した問題ではないと一蹴し、いい歳をしてもうすこし大人になれと言い放します。親子間の断絶は埋まりません。父子3代、父子の断絶は続くのです。
それでは今日はこの辺で。