先日のキネ旬シアターは『風が吹くとき 日本語(吹替)版』でした。
原作・脚本:レイモンド・ブリッグズ
監督:ジミー・T・ムラカミ
音楽:ロジャー・ウォーターズ(ピンク・フロイド)
主題歌:デヴィッド・ボウイ「When The Wind Blows」
日本語吹替版
監督:大島渚
声の出演:森繫久彌、加藤治子
この映画の原作はレイモンド・ブリッグスが1982年に発表した漫画で、1986年に映画化されました。
日本では1987年に一部の映画館や公共施設で公開されました。日本語版は大島渚が監修し、主人公の声を森繁久彌と加藤治子が吹き替えをしています。
音楽はロジャー・ウォーターズ、主題歌はデヴィッド・ボウイの曲です。
今年になってリバイバル公開されました。
物語の方は、イギリスの片田舎に住むジムとヒルダという年金暮らしのごく平凡な夫婦の話です。
二人は二度の大戦も潜り抜け、子育ても終わり、田舎に引っ越しのんびりと暮らしていました。ところがある日、東西両陣営による新たな世界戦争が勃発したというニュースがラジオから流れてきました。ジムとヒルダは政府が発行しているパンフレットに従いシェルターを作り始めます。
そして突然、ラジオで核ミサイルが3分後に飛んでくると知らされます。二人は慌ててシェルターに飛び込み、かろうじて被害を避けられましたが、爆風で家は大きな損害を受けます。瓦礫の中で二人はやはり政府の指示通りに狭いシェルターで暮らし始めます。外に出ては風に吹かれ、雨に打たれます。しかし、まだまだ希望は捨てていません。
二人は政府の救出を信じながら日常生活を送りますが、二人とも被爆しており、次第に衰弱してゆきます。食料も水も尽きてどん底の生活になってゆきますが、それでも二人は救出を信じ続け待ち続けます。ジムはヒルダを元気づけようと祈りを捧げますが、上手く言葉を思い出せず、ヒルダはうんざりしながらお祈りを止めてと言いますが、ジムは続けます。しかし、ジムの声は次第に弱くなり、ヒルダも優しくもういいのよ、と言うのです。そしてスクリーンは真っ暗になり二人の死を暗示させるのでした。
ショッキングな映画でした。政府の言う事を100%信じるジム。役に立ちそうもないシェルターもせっせと作り、必ず救出に来てくれると頑なに信じています。
ロシアと連合国による第三次世界大戦の勃発です。ロシアは核ミサイルを発射します。しかし老夫婦は政府が守ってくれると信じてやみません。放射能被害の現実も知らされていません。したがって体の不調の原因もわかりません。国民を見捨てる国家。歴史は繰り返します。なんとも哀れで、腹が立ってなりません。
この映画、絵空事ではありません。というより、より現実感が湧いてきます。映画公開時は冷戦が続いていましたが、現在の世界状況も冷戦時に近い状況になりつつあります。世界中が保守的になり右傾化し、核の使用をちらつかせ世界を恐怖に落とし入れています。
恥ずかしながら、この映画の存在を知りませんでした。35年たった今でも、まるでままもなく世界戦争が起こるかもしれないという恐怖を感じてしまいました。アニメだからこそ描ける原爆の惨状。今になってリバイバル上映の理由もこのあたりにあるのではないでしょうか。
それでは今日はこの辺で。