Flying Skynyrdのブログ

映画や音楽、本についての雑文

映画『夏の砂の上』を観る

先日のキネ旬シアターは『夏の砂の上』でした。

原作:松田正隆

監督・脚本:玉田真也

出演:オダギリジョー 、高石あかり、 松たか子森山直太朗 

製作:2025年  日本

 

幼い息子を亡くし喪失感から逃れられなかった男の再生の物語です。劇作家・松田正隆の原作で読売文学賞を受賞した作品で、平田オリザによって舞台化され何度も上演されているようです。

 

雨の降らない夏の長崎市。小浦治は幼い息子を亡くしてから、喪失感を拭えぬまま妻の恵子とも別居しています。

そんな暮らしをしている彼に妹の阿佐子が17歳の娘・優子を連れてやって来ます。阿佐子から男の所へ行くから娘を預かってくれと頼まれ、治は反対しますがやむを得ず預かることになり、突然の同居生活が始まるのですが・・・。


治は5歳の息子を水難事故で亡くし、妻は治の同僚と浮気しており別居中。会社は造船所からの撤退で失業中ですが就職活動もせずにぶらぶらする毎日です。そんな時に妹が娘を連れてやって来て預かってくれと言って男のもとへ。


その姪っ子は学校へも行かずスーパーでバイト、挙げ句に男が出来て家に連れ込む始末。やってられません。そんな姪が治の事情を知り母性本能なのか、それとも治に自分と似たものを感じ取ったのか、優しく包み込むように振る舞うようになるのです。


雨の降らない長崎の町。焼けつくような地面の上でセミの死体も。そんな長崎に突然のどしゃ降り。優子は大喜びで表に飛び出し、桶一杯に雨水を溜め、飲み始めます。治にも飲めとすすめ、二人はおおはしゃぎ。


やがて妹の阿佐子が優子を迎えに来て同居生活は終わります。別れの場面では優子が治に麦わら帽子を渡します。治はそれをかぶり再び坂道を歩き始めます。カラカラに乾いていた治と優子の心にもほんの少しだけ潤いが出来たかのようでした。

 

ドラマティックな展開もなく、淡々とリアルな日常が描かれていきますが、いつの間にか映画の中に引き込まれていき、最後にはほんのり温かい気持ちになりました。主演のオダギリジョーはこのような役はピッタリはまりますね。坂と階段だらけの長崎の町が夏の暑さを物語ります。


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それでは今日はこの辺で。