Flying Skynyrdのブログ

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映画『パラサイト 半地下の家族』を観る

昨日のキネ旬シアターは『パラサイト 半地下の家族』でした。

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監督:ポン・ジュノ

主演:ソン・ガンホ、イ・ソンギョン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク

製作:2019年 韓国

 

韓国初のカンヌ映画祭パルム・ドール賞受賞作品。アカデミー賞作品賞をはじめ4部門受賞。パルム・ドール賞とアカデミー作品賞を同時受賞したのは65年ぶりだそうです。先日紹介した『レ・ミゼラブル』と争った作品です。

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日本でも昨年から上映されて大評判となりました。私も遅ればせながら観させていただきました。ということで、今更くどくどと書くこともありませんが、備忘録のためザックリとしたあらすじだけ書いておこうと思います。

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キム一家の4人、父親ギテク、母親チュンスク、長男ギウ、長女ギジョンは父親が失業中のため、半地下のWIFIも途切れがちな汚いアパートで内職をしながら、貧しい生活を送っていました。

ギウは浪人中。ギジョンは美大を目指しています。チュンスクは元ハンマー投げのメダリストです。

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ある日、ギウの友人が自分がアルバイトをしている大富豪パク宅の家庭教師を代わりにやってくれないかと話を持ち掛けてきました。友人は留学するのでその間だけ頼むということでした。浪人中なので自身はありませんでしたが高報酬なので引き受けることにしました。

 

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ギジョンに学生証を偽造させ、大学生を装って高台の大邸宅に行ってみると家政婦に案内され、高校生の娘ダヘの授業を始めます。ダヘもギウを気に入り、母親のパク夫人も満足げで採用が決まりました。パク夫人との会話の中で、息子ダソンの絵画の家庭教師を探していることがわかります。ギウは心当たりがあると言って、妹のギジョンを紹介することを思いつきます。

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後日、ギジョンはギウの後輩を装いパク家を訪ねると、パク夫人はすっかり騙され、採用が決まりました。その後もパク家の運転手を辞めさせ、父親のギテクが運転手として潜り込み、また家政婦を追い出す策略をめぐらし、まんまと母親のチュンスクがその後釜に就きました。こうして4人はパク家に潜り込むことに成功しました。

 

ある日、パク一家はダソンの誕生会をするためキャンプに出掛けました。その間、キム一家は4人で羽を伸ばし、大盤振る舞いをしていました。ギウはダヘと恋仲になっていて、将来はこの家に住むなどと夢のような話をしています。

 

外は激しい雷雨になりました。その時、以前の家政婦が訪ねてきました。地下室に忘れ物をしたというのです。この大豪邸には地下室のまた地下室があったのです。この屋敷には前住者によって北朝鮮からのミサイル攻撃に備えるために地下シェルターが作られていたのです。パク一家も知りませんでした。

 

地下室にはなんと家政婦の夫グンセが借金取りから逃れるために隠れていたのです。家政婦はこのことをパク家には黙っていて欲しいと頼みます。それを隠れて聞いていた3人が足を滑らせて出てきて見つかってしまいます。家政婦は彼ら4人が家族であることに気が付き、逆に4人の動画をパク夫人に送ると脅してきました。

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キム一家と家政婦夫妻が揉み合っているところに電話が鳴ります。パク夫人からで、雨のためキャンプが中止になったので今から帰るとのこと。ジャージャー麺を作っておくようにと命令されます。慌てたキム一家は家政婦夫妻を縛り上げ、地下室に再び閉じ込めます。家政婦が上がってこようとしたところ、チュンスクに蹴り落されて、気を失ってしまいます。

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キム一家は慌てて部屋の片づけをして、3人はテーブルの下に隠れます。しばらくするとパク一家が戻ってきました。3人は隙を見て逃げ出します。半地下のアパートに戻ると、大雨で浸水していました。しかたなく避難所で一晩を明かしました。寝床の中でギウは無謀な計画を立てたことを詫びますが、ギテクは「計画があるから予定外のことが起きる。計画しなければ予定外のことなどない。無計画がいいのだ」と言いギウをなだめます。

 

翌日、パク一家はダソンの誕生会を開くことを決め、キム一家の3人も招待されました。パーティーは庭で盛大に行われました。ギウは地下の家政婦夫妻が気がかりで、地下室に向かいます。しかし、逆にグンセに殺されそうになります。何とか逃げようとしましたが、石で殴られ気を失ってしまいます。

 

その後グンセは包丁を手に取って、パーティーになだれ込みます。そしてギジョンを刺します。その後はキム家、パク家、グンセ入り乱れての乱闘騒ぎになり、グンセはチュンスクに、パクはギテクに殺されてしまいます。

 

1か月後、意識を取り戻したギウはチュンスクと共に裁判にかけられましたが、いずれも執行猶予の判決でした。妹のギジョンは死んでいました。ただ、ギテクは未だに行方不明となっていました。

 

ある日、ギウは裏山に登りあの豪邸を見下ろすと、ガラス窓から電球が点滅しているのが見えました。モールス信号です。かつてはグンセも同じようにモールス信号を送っていましたが、誰も気づきませんでした。地下室にはギテクが隠れていたのです。ギテクはいつかギウに通じると思って信号を送り続けていたのです。モールス信号によると、邸宅はあのあと空き家になっていたが、今は外国人が住んでいる。食べ物を盗みながら生き続けている、自分にふさわしい場所だ、ということでした。ギウはいつの日か、豪邸を買い取り、父親を助けるための資金稼ぎの計画を立てることにしたのです。

 

この映画は韓国社会のリアルを描いた作品だと思います。テーマは『匂い』です。キム一家4人がパク家に潜り込んだ際に、パク家の息子のダソンは4人が同じ「匂い」がすると気づきます。また、家政婦夫妻と争った後に、テーブルの下にキム一家の3人が隠れているときにパク氏は運転手のギテクの「匂い」が気になる、と妻に愚痴をこぼします。夫人もギテクの車に乗ったときにやはり「匂い」が気になり窓を開けます。さらに、終盤パク氏がグンセに近寄ったときに、そのグンセの「匂い」に辟易して遠ざかりますが、それを見たギテクは思わずパク氏を刺し殺してしまいます。

 

その「匂い」とは何か。地下の「匂い」です。半地下生活、地下生活を長く続けたせいで染みついた「匂い」です。当人たちは気づきませんが、普通の生活をしている人間にはすぐわかるのでしょう。上流社会と下層民との対比を「匂い」で表していたのです。ギテクは自分自身を全否定されたと思ったのでしょう。そしてパク氏を刺し殺した後、自分が生きる場所は地下しかないと思い、地下室に隠れたのです。

 

もっとも、この映画は社会派ドラマなどとあまり深読みせずに、ただただブラック・コメディとしてエンタテイメント性を楽しめばそれでいいと思います。それだけでも一級品です。

 

ギテクの言う「計画など立てるから、予想外のことが起きて困惑する。初めから計画など立てない、無計画がいいのだ。それなら失敗もなにもない」という言葉には、普段から「計画を立てる」ことに拘っていたギテクの絶望ともとれる呟きに聞こえます。でも、もっともな意見です。下手な希望など持たないほうが楽に生きられますから。

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第72回カンヌ国際映画祭で最高賞!『パラサイト 半地下の家族』予告編

 

 

 それでは今日はこの辺で。