Flying Skynyrdのブログ

映画や音楽、本についての雑文

この人の、この1枚 『小島麻由美/真夜中のパーティ』

もう、20年くらい前のことでしょうか。ディスク・ユニオンでレコード漁りをしていると、聴きなれない日本人の女性ヴォーカルが聞こえてきました。思わず、レコード探しの手を止めてしまいました。

その何とも言えないブルージーな、気だるい歌い方、そのくせ声はかわいい。そして演奏もフルートなどが入って、ギターもジャジーで「なんじゃ、こりゃ!」となって、早速受付に行ってアーティスト名を聞き出しました。するとアーティストは小島麻由美でCDは『真夜中のパーティ』というマキシシングルでした。迷わずその場で購入しました。

 

01.真夜中のパーティ

02.私の恋人

03.プレイガーリー(live)

04.セシルカット・ブルース(live)

 

03,04はNHK-FMの「ライフ・ビート」より。

 

渡辺 等(b,cell)

ASA-CHANG(ds,perc

塚本 功(electric g)

国吉 静治(flute)

寺谷 誠一(ds)

清水 一登(electric p)

ライオン・メリー(organ)

 

01,02が新曲のスタジオ録音で、03,04はライヴ音源です。

 

タイトル曲がいいのはもちろんですが、ライヴのかったるさが何といっても聴きどころです。03はスキャットで歌詞無し。04は彼女の代表曲のようです。2曲ともブルージーで素晴らしい。

 

これに味をしめそれ以前のアルバムも購入してしまいました。

1995年リリースの『セシルのブルース』

 

1998年リリースの『さよならセシル』

 

ジャケットのイラストは全て彼女自身です。

 

彼女の音楽性はジャズやブルース、ラテン、歌謡曲などジャンルにとらわれない独特の世界観です。そしてアンニュイな歌唱法とかわいらしい声のアンバランスさが何よりも魅力的です。

 

余談ですが、「人間椅子」のファンである娘に聞かせたら気に入ったようで、その後のアルバムも買っていたようです。

 

最近の動静はよくわかりませんが、マイ・フェヴァリット・シンガーの一人です。

 


小島麻由美 「真夜中のパーティー」


セシルカットブルース 小島麻由美


小島麻由美 プレイガーリー

 

それでは今日はこの辺で。

 

 

この人の、この1枚 『マジェラン(Magellan)/Impending Ascension』

今日の「懐かしのヘヴィメタ・シリーズ(懐メタ)」はアメリカン・プログレ・メタルバンドのマジェラン(Magellan)です。

イングヴェイ・マルムスティーンなどを世に送り出したマイク・ヴァ―ニーが1989年に設立したプログレッシブ・ロック系のレーベル、「Magna Carta Records」からの最初のバンドがマジェランでした。マイクは自身がギタリストでもあり、ギタリストを発掘しては自身が設立したHR/HM系のレーベルからデビューさせていましたが、今度はキーボードを中心のプログレッシヴ系のレーベルを立ち上げたのでした。プログレッシヴ・ロックはこの頃は既にすっかり下火になっていました。

そこでマイクはプログレヘヴィメタルを組み合わせたバンドを送り出そうと考えたのでした。それ以前にドリーム・シアターが成功したという事実が影響しているのは言うまでもありません。

 

マジェランはトレント・ガードナー(Trent Gardner,vo,key,trombone)ウェイン・ガードナー(Wayne Gardner,g,b,vo)の兄弟によって1985年にサンフランシスコで結成されました。

 

1991年、「Magna Carta Records」からファーストアルバム『Hour Of Restoration』がリリースされます。

オープニングから14分に及ぶ大作「Magna Carta」です。まさにプログレッシヴ・ロックの復活です。長尺ですが転調を繰り返し飽きさせません。単なるプログレ回帰ではなく、ハードロックを取り入れたプログレ・ハードに仕上がっています。

メンバーは兄弟の他は参加ミュージシャンという形をとっています。ベースはハル・ストリングフェロー・インブリー(Hal Stringfellow Imbrie,b)で、ドラムはコンピュータによる打ち込みです。

 

1993年にセカンドアルバム『Impending Ascension』がリリースされます。

 

01.Estadium Nacional

02.Waterfront Weirdos

03.Songsmith

04.Virtual Reality

05.No Time for Words

06.Storms and Mutiny

07.Under the Wire

 

プロデュースはデヴィッド・ヒューストン(David Houston)です。

前作と同じく、ベースにはハル・ストリングフェロー・インブリーが参加しています。ドラムは1曲だけジェスロ・タルに在籍していたドン・ペリー(Doane Perry,ds)が産しています。後は打ち込みです。音質は圧倒的に改善されました。楽曲も10分超えが3曲もあり、大作ぶりは前作を上回りました。

この時代にプログレッシヴ・ロックという70年代回帰とも思われる音楽に取り組んだ兄弟でしたが、それ以降のプログレッシヴ・メタルの隆盛を見ると、この兄弟とマイク・ヴァ―ニーの先見性は見事でした。

 

この後も順調にアルバムをリリースしますが、プログレメタル界の中ではドリーム・シアター、クイーンライク、フェイツ・ウォーニングなどに大きく水をあけられました。

 

そして、2014年にウェインが、2016年にはトレントが亡くなり、バンドは事実上消滅しました。

 


Magellan - Estadium Nacional


Magellan - Songsmith


Magellan - Virtual Reality

 

それでは今日はこの辺で。

イヤミスの極致『ケモノの城』

真梨幸子の『殺人鬼フジコ』以来、イヤミスに嵌っていますが、今回の誉田哲也『ケモノの城』の読後感の悪さは極め付けでした。

ケモノの城 (双葉文庫)

ケモノの城 (双葉文庫)

 

 

この小説は2002年に発覚した「北九州監禁殺人事件」をモデルとし、そこにもう一つのミステリアスな物語を加えたものです。

 

この「北九州監禁殺人事件」については、豊田正義のノンフィクション『消された一家―北九州・連続監禁殺人事件』をかつて読んでいたので、その事件部分は大体わかっていました。 

消された一家―北九州・連続監禁殺人事件 (新潮文庫)

消された一家―北九州・連続監禁殺人事件 (新潮文庫)

 

 

主犯の松永太と共犯の緒方純子が犯した連続監禁殺害事件です。小説では当然ながら名前は変えてあります。

マインド・コントロールによって人の心を支配し、たとえ家族であっても互いに憎み合い、殺し合いまでさせる、まさにサイコパス人間が確かに存在するということを確認させられた事件でした。サイコパスとは一見、外面は良く、他人には好印象を与えるが人間の心のカケラも持っていない、冷酷非情な人間です。主犯の松永は死刑判決後も反省などさらさらしていない様子です。共犯の緒方純子はある意味被害者です。虐待によって松永の言いなりになって殺人まで犯してしまいました。松永は手を下さず見ていただけでした。

結局、緒形純子の家族を含め7人の人間を殺害したのです。しかし、この事件はあまりの残虐性のため、報道機関が自主規制を行ったため、一般には詳細が明らかになっていませんでしたが、このノンフィクションによって明らかになりました。

 

小説もほ事実に基づいて書かれていますが、肝心の主犯は行方不明という設定です。実際に生き残った二人の女性、一人は殺害された父親の娘で17歳の少女。もう一人は主犯の男の内縁の妻です。この二人の証言で事件の全容が明らかになっていくのですが、その主犯の男に関しては、小説として別のストーリーが設けられています。

 

弱みを握り、虐待を繰り返し、反抗する意思を削いでいく。その虐待の方法は読み進めるのが辛くなるような描写の連続です。爪ハギ、手・足・太腿・尻・乳首・顔そして性器への通電(電気ショック)、ペンチによる肉挟みなど。また生活面も食事制限、トイレの使用制限。大便を漏らしたらそれを食べて始末させる。緒形純子の妹や母親との性交、それを写真撮影し、逃げられないようにするなど。これらはノンフィクションにも書いてありましたので事実なのでしょう。想像しただけでゾッとします。

 

しかし、被害者たちは抵抗しません。主犯の言いなりです。みんな弱みを握られ、誓約書を書かされ、脅されているのです。そしてお互いを憎み合うようにそれぞれに相手が悪口を言っていると囁かれます。通電もそれぞれにやらせます。殺害も死体の解体も主犯が命令するのではなく、そうせざるを得ないように被害者自身に仕向けて行くのです。まさにマインド・コントロールです。このような被害者の心理は「学習性無力感」とか「情動麻痺」と呼ぶそうです。日常のDVなどもそうなのです。

 

小説はこの主犯を追うのですが、とうとう見つからず、もうひとつのストーリーに飲み込まれてゆきます。なんとも歯がゆい結末です。あとは読者の想像にまかされます。

 

虐待場面や死体の解体場面のグロテスクさと結末の消化不良はなんとも言えない読後感の悪さをもたらしてくれました。これも作者の意図だとするとある意味脱帽です。

 

2012年に発覚した「尼崎事件」も似たような構図でした。この事件の主犯・角田美代子は獄中自殺したため、彼女が語る真相は闇に葬られました。 この事件も衝撃的でした。この事件の詳細は以下の書籍で読めます。

家族喰い――尼崎連続変死事件の真相

家族喰い――尼崎連続変死事件の真相

 

 

モンスター 尼崎連続殺人事件の真実 (講談社+α文庫)

モンスター 尼崎連続殺人事件の真実 (講談社+α文庫)

 

 

もう一つ、1971年から72年にかけて起きた連合赤軍によるリンチ殺人事件も、「革命」を標榜し「総括」の名のもとに集団リンチ・粛清を繰り返したのも似たような精神状態に陥ったものでした。いまでもまざまざと思い出します。この事件に関してはここでは語り尽くせませんので、またの機会にしましょう。

 

この『ケモノの城』の作者、誉田哲也の小説は初めてでした。テレビドラマになったストロベリーナイトの作者でもあるようです。

文章はうまいです。グロテスクな小説が得意なのでしょうか。機会があったらもう1冊ぐらい読んでみましょうか。

 

それでは今日はこの辺で。

映画『夕陽の丘』の謎

とっても古い映画の話で恐縮ですが、日活時代の石原裕次郎の映画の中でも『赤いハンカチ』や『錆びたナイフ』と共に大好きな映画が『夕陽の丘』です。

「映画 夕陽の丘 画像」の画像検索結果

この映画の公開は1964年で、封切当時は観ていません。初めて観たのはおそらく学生時代に池袋の「文芸座」での5本立てオールナイトだったと思います。

 

ストーリーはヤクザ者の裕次郎が兄貴分の情婦・浅丘ルリ子と恋仲になり、それを知って脅した同じヤクザ男を殺してしまいます。ルリ子は函館の妹の住所を教え、そこに行くようにと裕次郎を逃がしました。

裕次郎は函館に行き、ルリ子の妹に会いますが、これが姉そっくりなのです。浅丘ルリ子の二役です。兄貴分も裕次郎を追って函館にやってきます。別の組の殺し屋も絡んで殺し合いになり、結局姉は兄貴分に撃たれて死んでしまいます。

裕次郎に好意を持った妹は「もう、この町を出ようと思う」と裕次郎に告げますが、裕次郎は「どこへ?」と聞くと、妹が自分についてきたいと感じた裕次郎は「俺と一緒では君は不幸になる」、「俺は誰も愛していなかったのかもしれない。愛していたらこの町には来なかったはずだ」と言って、一人海岸を歩いて去って行きます。このラストシーンが何とも言えずカッコいいのです。

 

「謎」と書いたのは、この映画の主題歌のことです。この主題歌「夕陽の丘」は石原裕次郎浅丘ルリ子のデュエットソングです。映画を観るまえからこの歌は知っていて、大好きな曲でしたので映画も楽しみでした。


石原裕次郎&浅丘ルリ子 - 夕陽の丘

 

夕陽の丘

作詞:萩原四郎

作曲:上原げんと

 

夕陽の丘の ふもと行く

バスの車掌の 襟ぼくろ

わかれた人に 生き写し

なごりが辛い たびごころ

 

かえらぬ人の 面影を

遠い他国で 忘れたさ

いくつか越えた 北の町

目頭うるむ たびごころ

 

真菰の葦は 風にゆれ

落葉くるくる 水に舞う

この世の秋の あわれさを

しみじみ胸に バスは行く

 

夕陽の丘を 見上げても

湖の畔りを 訪ねても

かいなき命 あるかぎり

こころの傷は また疼く

 

人の子ゆえに 恋ゆえに

落ちる夕陽が 瞳にいたい

さよなら丘の たそがれよ

また呼ぶ秋は ないものを

 

以上がよく知られて、ヒットしたオリジナルの歌詞です。1番、3番が裕次郎、2番、4番がルリ子、5番がデュエットです。

 

ところが、この歌詞は映画では使われませんでした。

ラストで裕次郎が海岸を夕陽に向かって歩いていくシーンでこの主題歌が流れるのですが、歌詞が違うのです。

 

帰らぬ人の 思いは遠く

求めて虚しい 愛の証

かいなき命 あるかぎり

こころの傷は また疼く

 

去り行く人の 悲しみに

沈む夕陽が 瞳にしみる

一人の影は 終わりなく

最果ての旅は 何処へか

 

1番を裕次郎、2番の途中までがルリ子、その後裕次郎です。

 

映画を観ていて、あれっ、と思い、その後色々調べましたが理由はわかりませんでした。でも、この歌詞の方が映画に合っているかなと、あとになって納得しました。

 

この歌詞はレコードにもなっていないと思います。どうしてもその歌詞を知りたくて、後年DVDを買って聞きとったものです。

 

どうでもいいことですが、長年気になっていたので書いてみました。浅丘ルリ子さん、かわいかったな。

 

 

それでは今日はこの辺で。

 

聴き比べ『朝日のあたる家(The House of the Rising Sun)』

「朝日のあたる家」と言えば、私などは真っ先にアニマルズ(The Animals)The House of the Rising Sunが頭に浮かびます。ヴォーカルのエリック・バードン(Eric Burdon)の迫力ある声が何とも言えません。その後、ボブ・ディラン(Bob Dylan)を聴くようになって、この曲が彼のファーストアルバムで取り上げられていることを知りました。それでも、やはりこの曲はアニマルズでしょう、と思っていました。

 

日本では浅川マキが自身の訳詞で歌っていることも知りました。これもまた、浅川マキらしくすばらしい曲に仕上がっています。

いつだったか、確かNHKだったと思いますが(記憶が定かではありません)、ちあきなおみの特集を放映していた時がありました。何気なく観ていると、この「朝日のあたる家(朝日楼)」が始まりました。思わず息をのみました。その迫力に圧倒されました。以前から歌唱力には定評がありましたが、この曲での彼女はまるで別人のような声と表現力で観ているものを引き込みました。

すぐにこの曲が収録されているCDを探し、購入しました。それが『VIRTUAL CONCERT 朝日のあたる家』でした。

 

01.百花繚乱

02.かもめの街

03.あなたのための微笑み

04.イマージュ

05.祭りの花を買いに行く

06.ダンチョネ節

07.紅とんぼ

08.酒と泪と男と女

09.東京の花売娘

10.ひとりぼっちの青春

11.スタコイ東京

12.黄昏のビギン

13.朝日のあたる家 (朝日楼)

14.ラ・ボエーム

15.アコーディオン弾き

16.プラットホーム

17.喝采

18.紅い花

19.伝わりますか

 

「VIRTUAL CONCERT」とあるように仮想のコンサート仕立てで、拍手が入りますがスタジオ録音です。

このアルバムは選曲が素晴らしいです。自身のヒット曲「紅とんぼ」喝采もありますが、河島英五酒と泪と男と女、そして水原弘の幻の名曲と言われた「黄昏のビギン」。彼女がこの曲をカバーしたおかげで、この曲が再び息を吹き返しました。

 

そして何といっても「朝日のあたる家(朝日楼)」です。この曲は元々がアメリカのトラディショナルで1933年にクラレンス・アシュレイというフォークシンガーが祖父から教わったものを録音したのが最初でした。その後ウディ・ガスリーやレッド・ベリー、ジョーン・バエズなどが歌っていました。そして1962年にボブ・ディランがデビューアルバムで取り上げ話題になりました。1964年にはアニマルズで大ヒットします。全米1位だけでなく、地元イギリスでも1位に輝き、世界中でヒットし知られるようになりました。もちろん日本でも大ヒットでした。

 

この曲は「The House of the Rising Sun」という娼館に身を落とした女性の懺悔の歌です。ただし、アニマルズは主人公を男性に変えて歌っています。ですから娼館ではなく、少年院と解釈されています。

 

Bob Dylan バージョン

There is a house in New Orleans they call the Rising Sun

And it’s been the ruin of many a poor girl and me, oh God, I’m one

 

My mother was a tailor, she sewed these new blue jeans

My sweetheart was a gambler, Lord, down in New Orleans

 

Now the only thing a gambler needs is a suitcase and trunk

And the only time he’s satisfied is when he’s on a drunk

 

He fills his glasses up to the brim and he’ll pass the cards around

And the only pleasure he gets out of life is rambling from town to town

 

Oh, tell my baby sister not to do what I have done

But shun that house in New Orleans they call the rising sun

 

Well with one foot on the platform and the other foot on the train

I’m going back to New Orleans to wear that ball and chain

 

I’m going back to New Orleans, my race is almost run

I’m going back to end my life down in the rising sun

 

There is a house in New Orleans they call the Rising Sun

And it’s been the ruin of many a poor girl and me, oh God, I’m one

 

日本語訳した浅川マキの詩が好きです。

 

あたしが着いたのは ニューオリンズ

朝日楼という名の 女郎屋だった

 

愛した男が 帰らなかった

あんとき私は 故郷(くに)を出たのさ

 

汽車に乗って また汽車に乗って

まずしいあたしに 変わりはないが

 

ときどき思うのは ふるさとの

あのプラットホームの 薄暗さ

 

誰か言っとくれ 妹に

こんなになったら おしまいだってね

 

あたしが着いたのは ニューオリンズ

朝日楼という名の 女郎屋だった

 

浅川マキは例によって抑え目に歌っていますが、ちあきなおみは熱唱です。どちらも味わい深い歌唱になっています。

 

ちあきなおみという歌手は1972年に「喝采」でレコード大賞を獲っています。それまでも歌謡曲分野でヒット曲を飛ばし、人気もありました。私自身は特別な思い入れはありませんでしたが歌の上手さには感心していました。その後もテレビドラマに出演したり、宍戸錠の弟・郷暎治と結婚したりと、話題を振りまいていましたが、そのうち見かけなくなりました。そして郷暎治が無くなると、一切テレビなどには出演し亡くなりました。実質上の引退でした。郷暎治の葬儀の時には「私も一緒に焼いて」と言ったという話は有名です。

引退後も彼女の評価は高まるばかりです。CD全集なども数多くリリースされ、その売り上げも好調らしいです。

「朝日のあたる家」はそんな彼女の歌唱力が発揮された逸品だと思います。

 


朝日楼(朝日のあたる家) ちあきなおみ UPC‐0003


Maki Asakawa 浅川マキ 「 朝日楼 (歌詞付) 」


「朝日のあたる家 The House of the Rising Sun」アニマルズ、The Animals


House of the Rising Sun

 

それでは今日はこの辺で。

映画『存在のない子供たち』を観る

今日のキネ旬シアターは『存在のない子供たち』でした。

f:id:lynyrdburitto:20190719142612p:plain

 

監督:ナディーン・ラバキー

主演:ゼイン・アル・ラフィーア、ヨルダノス・シフェラウ

制作:2018年 レバノン 2019年 日本公開

 

シリア難民の過酷な現実を、レバノンを代表する女優であり監督であるナディーン・ラバキーがメガホンを撮った作品です。出演もしています。本作品は2018年のカンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞しました。

 

出演者はほとんどが素人で、主演の子役ゼインは役名もゼインで、実際のシリア難民です。現実にも働いて家計を助けています。母親役の彼女はレバノンでは就業を規制されている「第2級市民」として扱われ、実際に彼女の二人の子供は出生届を出していません。その他、実際にエチオピアの難民キャンプからレバノンに逃れた不法滞在者のホームレスなども重要な役で出演しています。

 

自分の年齢も分からない子供が自分の両親を訴えるという、前代未聞の裁判が開かれます。

手錠をかけられた少年・ゼイン。法廷に入ります。検事と共に原告席に座り、被告席には彼の両親が座ります。裁判長から年齢を聞かれると、「よくわからない、そっちに聞いて」と両親を指します。なぜ逮捕されたのかと問われると、「人を刺したから」、どうして両親を訴えたのかと問われると、「ぼくを生んだ罪で」と答えます。

「存在のない子供たち」の画像検索結果

 

時は遡ります。

ベイルートの貧民窟で暮らすゼインは、仕事をしない父親セリームの代わりに幼い7人の妹達と路上販売をしたり、大家のアサードが経営する雑貨店の手伝いをして、朝から晩まで働き、学校へも行かせてもらえません。両親はシリアからの難民でした。ゼインの出生届も出しておらず、したがって年齢も12歳ぐらいとしかわかりません。

「存在のない子供たち」の画像検索結果

ゼインは一つ下の妹・サハルと特に仲が良く、いつも一緒でした。店主のアサードはサハルを気に入っており、ゼインはそれを嫌がってなるべくサハルを近づけないようにしていました。サハルに初潮が来たことを知ったゼインは、それを知られないようにしろとサハルに言って、生理用品を盗んでは彼女に与えます。初潮が来たことが知られると、両親はアサードにサハルを提供すると思ったからでした。そして案の定、父親はサハルを家賃滞納の代わりに強制的にアサードと結婚させてしまいます。怒ったゼインは家を出てしまいます。

 

しかし、家を出たのはいいけれど、仕事も見つからず困ってしまいます。するとラヒルという遊園地で清掃員をしているエチオピアからの難民で不法就労をしている女性と知り合います。ラヒルには男の赤ん坊ヨナスがいます。ゼインはバラック小屋に一緒に住まわせてもらう代わりに彼女にヨナスの面倒を見ることを頼まれます。

f:id:lynyrdburitto:20190720093810p:plain

ヒルはなんとか移民登録をしてもらおうと、新たな職を探したりと努力しますが上手くいきません。そして偽造証明書に期限が切れてしまい、警察に拘束されてしまいます。ゼインはヨナスの世話をしながらラヒルを捜します。そんな中、ゼインは密航を手配する男アスプロと知り合います。このアスプロはラヒルにヨナスを養子に出せば偽造証明書を作ってやると持ち掛けていましたが、彼女は断っていました。

 

ゼインはバラック小屋も追い出され、困り果ててアスプロを頼ります。そしてヨナスは金持ちの養子になれば幸せになれるという言葉を信じ、ヨナスを預けます。さらに自分も以前に知り合った少女が彼の手配でスウェーデンに移住すると言っていたのを聞いて、自分もスェーデンに移住したいと頼みます。アスプロは身分証明書がないと無理だと言います。

f:id:lynyrdburitto:20190720094327p:plain

止む無くゼインは家に戻ることにしました。そして父親に証明書を書いてくれと頼みますが、父親は誕生日など憶えていないと拒否します。さらにサハルが妊娠した上に出血多量で病院に運ばれたが死んだということを知らされました。ゼインは怒り狂い、包丁を持ち出しアサードのもとへ走りました。

 

ゼインはアサードを刺し、逮捕。留置場でゼインを見かけたラヒルはヨナスが行方知らずになったことを知り絶望しました。

そして母親が面会にやってきます。普段着の母親にむかい「喪が明けていないのにどうして普段着?」と聞きます。「新しい命を授かった。生まれたらサハルと名付ける」と答えます。ゼインは「二度と来るな!」と吐き捨て、差し入れの菓子を投げつけます。そして留置場のテレビで電話相談の番組を見て、その番組に電話をして「両親を訴えたい」と伝えます。これが生放送だったため世間の知るところとなり、大騒ぎになりました。

 

法廷の場面に戻ります。

裁判長に両親を訴えた理由を聞かれたゼインは「ぼくを生んだから。生まれてきた子供を育てられないなら、最初から生まなければいい」と答えます。

両親は難民の実情を涙ながら「子供をつくれば救われると言われた。でもそれは間違いだった。生活は苦しくなるばかりだ。あんたらにこの気持ちはわからない」と訴えます。裁判長はゼインに「何か言いたいことは?」と問います。するとゼインは両親に向かって「子供を作るな!、育てられないなら子供なんて生むな!」と言います。

f:id:lynyrdburitto:20190720094222p:plain

それから、アスプロが逮捕され、ラヒルの赤ん坊ヨナスは無事ラヒルの元に戻りました。

 

ゼインは懲役5年の刑を告げられます。そして写真撮影に臨みます。するとカメラマンは「これは身分証明書用の写真だから笑って」と言われ、ゼインはじめて笑顔を見せるのでした。

 

 衝撃的な映画でした。難民たちの過酷な生活ぶりをドキュメンタリー・タッチで描いていきます。このゼインという12歳ぐらいの少年。すぐ下の妹を心から可愛がり、自分の耐えがたい生活にも文句も言わず働きます。しかしその妹も売り飛ばされ、やけになって家を出ます。しかし待っているのはやはり食うや食わずの生活。どこまでいっても貧乏です。

 

しかし知り合ったラヒルの子供ヨナスを初めは戸惑いながらも面倒を見ます。ラヒルがいなくなってからは一人で面倒を見ます。自分の母親がやっていた薬物の売買をしたりして何とか食いつなぎます。自分の両親からは全く愛情を注がれませんでしたが、この赤ん坊に対しての責任感はどこから来るのでしょう。

 

難民生活の過酷さをいやというほど見せつけられました。ベイルートの貧民街の風景も壮絶です。そうした中では親子の情も消え失せることがあるのでしょう。

それにしても、このゼインという僅か12歳の少年の賢さと、強さと、逞しさにはただただ驚くばかりです。2時間の間、ゼインにはほとんど笑顔もありませんでしたが、ラストシーンの笑顔だけが救いでした。そしてヨナス、僅か1歳ほどでしょうが、その演技力(地のまま?)に心温まりました。

 

シリアを含む中東・アフリカ情勢は収まる気配がありません。このような難民が何百万人もいるという現実を世界中が知るべきですが、世界はどんどん保守化に向かって進んでいます。解決策は果たしてあるのでしょうか。

 


映画『存在のない子供たち』予告編

 

それでは今日はこの辺で。

この人の、この1枚 『プレイング・マンティス(Praying Mantis)/A Cry for the New World』

今日の「懐かしのヘヴィメタ・シリーズ(懐メタ)」はNWOBHMを代表するバンド、プレイング・マンティス(Praying Mantis)です。

イギリスでは珍しく叙情派バンドで、本国よりもむしろ日本で人気が高かったと思います。

結成は1974年のロンドンでティノ・トロイ(Tino Troy,g,vo)クリス・トロイ(Chris Troy,b,vo)の兄弟が中心メンバーでした。

1980年にアイアン・メイデンボブ・アンジェロ(g)ミック・ラムサム(ds)が参加してマイナーレーベルからミニLPPraying Mantisをリリースします。

さらに、ボブとミックに代えてティーヴ・キャロル(Steve Caroll,g)デイヴ・ポッツ(Dave Potts,ds)を加えて初めてのフルレングス・アルバム『Time Tells No Lies』アリスタからリリースします。1981年でした。

このアルバムのそれまでのヘヴィメタと違って、メロディアスでドラマティックなところが評判となり人気が高まりました。

しかし、マネジメント面が上手くいかず、アリスタとの契約も解消され、JETレコードと契約しますがシングル1枚をリリースしただけで、再び契約を解除されます。そしてほぼ活動休止状態になりました。

 

1990年、日本でのNWOBHM10周年記念コンサートで復活したのです。トロイ兄弟に加えて元アイアン・メイデンデニス・ストラットン(Dennis Stratton,g,vo)ブルース・ビスランド(Bruce Bisland,ds)というメンバーで、ニューアルバム『Predator In Disguise』を1991年にリリースします。

 このアルバムでプレイング・マンティスは見事に復活しました。

 

そして1993年に傑作アルバム『A Cry for the New World』が誕生します。

 

01. Rise Up Again

02.A Cry for the New World

03.A Moment in Life

04.Letting Go

05.One Chance

06.Dangerous

07.Fight to Be Free

08.Open Your Heart

09.Dream on

10.Journeyman

11.The Final Eclipse

 

プロデュースはゲイリー・フラウンダース(Gary Flounders)ティノ・トロイです。

新たにコリン・ピール(Collin Peel,vo)が加わりました。

このアルバムはまさに日本人ぴったり。哀愁メロディ、そしてドラマティック。言うことありません。これぞプレイング・マンティスの3作目にして最高傑作でしょう。ブリティッシュ・ハードというよりは北欧メタルです。コリン・ピールのヴォーカルもちょっと寂しげで、曲にぴったり合っています。

 

コリン・ピールはこの後脱退します。代わりは元マイケル・シェンカー・グループのゲイリー・バーデン(Gary Barden,vo)です。

そして1995年に4作目『To The Power Of Ten』をリリースします。

ヴォーカルの変更はやはり痛手でした。

 

ゲイリー・バーデンは早くも脱退、代わりに元ONSLAUGHTのトニー・オホーラ(Tony O'Hora,vo)が加入します。

そして、5枚目のスタジオアルバム『Forever In Time』をリリースします。

このヴォーカル交代が成功でした。『A Cry for the New World』と並ぶほどの傑作が生まれました。

 

次のアルバム『Nowhere To Hide』リリース後、トニー・オホーラはバンドを去ります。

 

この後は、メンバーチェンジが続き、結局初期メンバーはトロイ兄弟だけになりました。現在も活動を続けています。

 


Praying Mantis - Rise Up Again


Praying Mantis-A Cry For The New World


Praying Mantis - Letting Go (Studio Version)


Praying Mantis - Journeyman

 

それでは今日はこの辺で。