Flying Skynyrdのブログ

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映画『gifted/ギフテッド』を観る

今日のキネ旬シアターは『gifted/ギフテッド』でした。

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監督:マーク・ウェブ

主演:クリス・エヴァンス、マッケナ・グレイス

制作:アメリカ 2017年公開

 

giftedとは「先天的に、平均よりも、顕著に高度な知的能力を持っている人のこと、外部に対する世間的な成功を収めることではなく、内在的な学習の素質、生まれつきの学習能力を持つことを指す。(wiki)」だそうです。アメリカ教育省は、「ギフテッドとは、同世代の子供と比較して、並外れた成果を出せる程、突出した才能を持つ子供のことである。」と定義しています(wiki)。

 

ストーリーの方はというと、幼い時に母を亡くしたメアリーは母方の叔父のフランクと片目の猫、フレッドと暮らす7歳の女の子です。近所には黒人の中年女性がいて、メアリーの親友です。 今年から小学校ですが、メアリーは行きたがりません。それでもフランクは無理やり学校に行かせます。とにかく普通の女の子になって欲しいのです。

学校初日、案の定メアリーは簡単な算数の問題に退屈でしょうがありません。担任の女教師ボニーが見かねて難しい暗算の問題を出しますが、次々に答えてしまいます。

驚いたボニーはたまたまネットでメアリーの名前を検索すると母親の名前が出て来ます。それは数学のミレニアム問題の一つ『ナビエ–ストークス方程式』の解明の寸前までいった有能な天才数学者でありながら、自殺してしまったこと、そして現在娘のメアリーは弟のフランクが育てていることが載っていたのです。

ある日学校の行事で動物園に行ったときに、同級生の男の子が上級生にいじめられているのをみたメアリーはその上級生を本で殴って大けがをさせてしまいます。校長はフランクを呼んで、ギフテッド専門の学校に行かせたほうがメアリーの将来のためだと転校を勧めます。しかしフランクは断ります。今のままこの学校に通わせてほしいと頼みます。納得がいかない校長は改めてメアリーの家族を調べさせます。

ボニーはフランクの気持ちが知りたくて行きつけのバーにフランクを訪ねます。フランクは姉が自殺したいきさつを語ります。そして姉がメアリーを普通の女の子として育てて欲しいと託されたことを打ち明けます。

暫くして、フランクの母親、メアリーの祖母イヴリンが訪ねてきます。姉の自殺以来一度も会っていませんでした。校長が居場所を知らせたのです。孫が我が娘と同様、数学の天才だと聞かされやって来たのです。そして親権を自分に譲れと言ってきました。メアリーに専門の教育をし大数学者として育てるのだと言います。

勿論フランクは反対します。メアリーにも絶対離さないと約束します。それでも母親は諦めず、親権を求めて裁判を起こします。フランクの弁護士は最終的にはフランクの収入の低さが問題となり、裁判には負けるだろう、その前にメアリーを近くの里子に出し、イヴリンの希望する学校にも通わせるというという和解案を提示してはと打診し、フランクもやむなく了解します。猫のフレッドも連れて行くことも了承されました。

そして遂に別れの日がやってきます。メアリーは置いていかないでと泣きわめきます。フランクは心を鬼にして立ち去ります。その後月1度、許された面会に出向きますが、メアリーは会いたくないと会ってくれません。

 そんなある日、ボニーは図書館でフレッドの引き取り手を探すポスターを目にします。すぐにフランクに連絡すると、フランクはすぐにイヴリンの仕業だと気づきます。イヴリンは猫アレルギーだったのです。フランクはある書類を持って里親の家に駆け付けます。

そこには案の定イヴリンが家庭教師を雇ってメアリに―数学の勉強をさせていました。そしてメアリーに家に帰ろうと言います。しかしメアリーは怒って逃げてしまいます。フランクは書類をイヴリンに渡し、メアリーを追いかけます。そしてメアリーに嘘をついたことを謝ります。メアリーは泣きながら、抱きつき許してくれました。

イヴリンに渡した書類は姉が『ナビエ–ストークス方程式』の解明を完成させていたことを示す論文でした。イヴリンは「そんなことがあるはずがない、完成していたら世に発表せずに自殺するはずがない」と言います。フランクは姉に「死んでから発表して欲しいと頼まれた」と答えます。イヴリンは「死んでから6年も経っている、おかしい」と、あくまでも認めません。フランクは「母親が死んでからという意味だ」と答えます。イヴリンは愕然とします。

娘のずば抜けた才能教育のためにすべてを投げうってやってきたのに、娘はそれが苦痛でならなかったのです。そして死を選び、せめて娘は普通の生活を送らせほしいと弟に頼んだのです。弟のフランクも自身は大学の哲学の分野で准教授まで行ったのですが、メアリーを育てるために、母親の元を離れ、すべてを捨てて、ボートのエンジン修理屋で生計をたてていたのです。

フランクはイヴリンに姉の論文を発表させる代わりに、メアリーの養育権を渡すよう頼みます。

メアリーは数学のレベルの高い学校に通い始め、再び元のようにフランクとともに子供らしい生活を送り始めました。

 

このように特別な才能をもった子供の教育、ギフテッド教育については日本と欧米ではまだまだ大きな違いがあると言います。日本ではまだ「特別な」というものに抵抗感があるようで、特別支援教育というと障害者というイメージが先に立ってしまったり、「普通じゃない」ということに違和感を感じてしまう村社会のような風土が国全体に残っているのではないかと思います。

欧米では特別な才能はその名の通り神から与えられた(gifted)ものだという認識なのでしょう。ですからその才能を伸ばすための教育に対する奨学金も与えられます。日本でもスポーツに対する才能に対し、その教育を国が後押しするというような制度が出来たようです。大学に対する予算、科学や技術に対する国の予算を削っているようでは日本の将来は暗いとしか言いようがありません。

 

映画の中のメアリーことマッケナ・グレイスは本当にかわいいし、演技も抜群です。別れのシーンと再会のシーンでは例によって涙が止まりませんでした。ストーリーも見え見えななのですが、泣かされます。年のせいですね。メアリーを観ているだけで癒されました。前歯が無いのが何とも子供らしくてかわいいです。

 

ちなみにミレニアム問題とはアメリカで100万ドルの懸賞金がかけられた7つの問題のことです。その7つとは

・ナビエ–ストークス方程式

・ヤン–ミルズ方程式の存在と質量ギャップ問題

リーマン予想

・P≠NP予想

・ホッジ予想

ポアンカレ予想

・バーチ・スウィンナートン=ダイアー予想

です。

このうち、ポアンカレ予想は解決済みです。

 

また数学系の難問解決の本ではサイモン・シンの書いた『フェルマーの最終定理』は恐ろしくわくわくする本でした。数学者たちの執念を思い知らされたものでした。最近ではABC予想の証明が認められたと発表されましたのは記憶に新しいです。

 

  


映画『gifted/ギフテッド』予告編

 

それでは今日はこの辺で。